NHK大河ドラマ「どうする家康」、皆さんも楽しんでいますか?
徳川家康(演:松本潤)の元には多くの変ちくr……もとい勇猛果敢な家臣が集まり、その中には若くから仕えた本多忠勝(演:山田祐貴)と榊原康政(演:杉野遥亮)の姿もありました。
共に後世「徳川四天王」「徳川三英傑」に数えられ、同い年ということもあって互いに武功を競い合ったと言います。
果たしてどちらが強かったのか……直接戦わせる訳にはいかないので、今回は戦場で獲った首級の数で比較してみましょう。
時は天正9年(1581年)3月22日、遠江国の高天神城(静岡県掛川市)を攻略した時のことでした。
榊原康政41、本多忠勝22で、今回は小平太の勝ち
三月廿五日 亥剋遠江国高天神籠城之者過半及餓死残党こほれ落柵木を引破罷出候を爰可しこ尓て相戦 家康公為御人数 討捕頸之注文
百参十八 鈴木喜三郎 鈴木越中守 拾五 水野国松 十八 本田作左衛門 七ツ 内藤三左衛門 六ツ 菅沼次郎右衛門 五ツ 三宅宗右衛門 貮拾一 本田彦次郎 七ツ 戸田三朗左衛門 五ツ 本田庄左衛門 四拾貮 酒井左衛門尉 拾六 石川長門守 百七十七 大須賀五郎左衛門 四拾 石川伯耆守 拾 松平上野介 貮拾貮 本田平八郎 六ツ 上村庄右衛門 六拾四 大久保七郎右衛門 四拾一 榊原小平太 拾九 鳥井彦右衛門 拾参 松平督 一ツ 松平玄蕃允 一ツ 久野三郎左衛門 一ツ 牧野菅八郎 一ツ 岩瀬清介 二ツ 近藤平右衛門 頸数六百八十八
※『信長公記』巻之十四(天正九年辛巳)(三)高天神干殺歴々討死之事
これは討ち取った敵の首注文(くびちゅうもん)。要するに「誰がどれだけ敵の首級を上げたか」のリストです。
読んでみると、数字の後に名前が書いてあり「獲った首級の数-獲った者の名前」となっています。
順番がバラバラなのと、旧字体も混じった漢数字だと読みにくいので、以下に並べ直してみましょう。
【高天神城の戦い・首獲りランキング/第1~5位】
1位:大須賀康高(おおすが やすたか。五郎左衛門)……177
2位:鈴木喜三郎(すずき きさぶろう)&鈴木越中守(えっちゅうのかみ)……2人で138
3位:大久保忠世(演:小手伸也。七郎右衛門)……64
4位:酒井忠次(演:大森南朋。左衛門尉)……42
5位:榊原康政(演:杉野遥亮。小平太)……41
二位は二人で138。内訳は分からないので当分して一人あたり69。どのみち二位ということでいいのではないでしょうか。
それにしても、大須賀康高の一人で177という数は尋常じゃないですね。彼はこの高天神城を攻略するためにずっと貼りつきだったので、執念が人一倍だったのかも知れません。
また、土地勘にも優れて巧みに敵を追い込み、倒したら家臣に首獲りを任せて次!という具合に効率的な戦い方をしたとも考えられます。
鈴木喜三郎と越中守は親族(親子?兄弟?)でしょうか。絶妙な連携プレーで、これまた次々と首級を上げていきました。
そして大河ドラマでもお馴染みのメンバーが続きます。色男に海老すくい……そして小平太が五位にランクインしています。
【高天神城の戦い・首獲りランキング/第6~10位】
6位:石川数正(演:松重豊。伯耆守)……40
7位:本多忠勝(演:山田裕貴。平八郎)……22
8位:本多康重(ほんだ やすしげ。彦次郎)……21
9位:鳥居元忠(演:音尾琢真。彦右衛門)……19
10位:本多重次(ほんだ しげつぐ。作左衛門)……18
参謀的なイメージの強い石川数正も大活躍。ちょっと意外な気もしますね。そして平八郎が7位にランクイン。
小平太「お、此度はわしの勝ちじゃな!」
平八郎「吐(ぬ)かせ、雑魚の首級ばかり稼いでも仕方あるまい。量より質じゃ」
とかなんとか。そして彦右衛門こと鳥居元忠も9位につけていますね。
【高天神城の戦い・首獲りランキング/第11~位】
11位:石川康通(いしかわ やすみち。長門守)……16
12位:水野国松(みずの くにまつ。後の水野勝成)……15
13位:松平督(まつだいらのかみ?詳細不明)……13
14位:松平康忠(まつだいら やすただ。上野介)……10
15位:内藤信成(ないとう のぶなり。三左衛門)、戸田忠次(とだ ただつぐ。三郎左衛門)……各7
16位:菅沼忠久(すがぬま ただひさ。次郎右衛門)、上村庄右衛門(うえむら しょうゑもん)……各6
17位:三宅宗右衛門(みやけ そうゑもん)、本多信俊(ほんだ のぶとし。庄左衛門)……各5
18位:近藤秀用(こんどう ひでもち。平右衛門)……2
19位:松平清宗(まつだいら きよむね。玄蕃允)、久野三郎左衛門(くの さぶろうざゑもん)、牧野菅八郎(まきの かんぱちろう)、岩瀬清介(いわせ きよすけ)……各1
以上となりました。皆さんのお気に入り武将は見つかりましたか?
高天神城の戦い、大河ドラマでも是非しっかりと描いて欲しいですね!
終わりに
ところで高天神城と言えば、歴戦の老勇者・岡部元信(演:田中美央)が壮絶な討ち死にを遂げた場所としても知られています。
完全包囲によって武田勝頼(演:眞栄田郷敦)から見捨てられ、かと言って降伏も許されず城内は飢餓地獄に。かくなる上は撃って出ようと一斉に突撃。これを徳川勢が迎え撃ちました。
岡部元信と太刀を合わせたのは大久保忠教(ただたか。忠世の弟、彦左衛門)。しかし彦左衛門は、相手が名乗らなかったためそれが大将の岡部元信とは思わず、家臣の本多主水(ほんだ もんど)に任せてしまいます。
かくして大手柄を逃してしまい、大いに悔しがったのでした。
果たしてNHK大河ドラマ「どうする家康」では、岡部元信がどのような最期を魅せるのか、武士の意地を見届けたいと思います。
※参考文献:
- 『我自刊我書零本 信長公記 巻下』国立公文書館デジタルアーカイブ
- 本郷和人『徳川家康という人』河出新書、2022年10月
- 丸島和洋『武田勝頼 試される戦国大名の「器量」』平凡社、2020年3月
- 歴史群像編集部 編『戦国驍将・知将・奇将伝 乱世を駆けた62人の生き様・死に様』学研プラス、2007年1月
この記事へのコメントはありません。