スマホで音楽を楽しめるようになり、最初は有線式のイヤホンやヘッドホンだったものが、Bluetoothの搭載でワイヤレスに進化した。そして、現在のトレンドは完全ワイヤレスイヤホンである。左右のイヤホンが独立しており、プレーヤーとはBluetoothでつながっているだけ。コードもなく、一回の充電で最大3時間以上は使える。
iPhoneも「AirPods」が発売になり、いよいよライト層もより環境にこだわるようになってきた。だが、有線タイプのイヤホンやヘッドホンが市場から消えることはないだろう。なぜなら、Bluetoothにも一長一短あるからだ。
Bluetoothとオーディオ。今では切っても切れないこの関係を調べてみた。
1万円を切る完全ワイヤレスイヤホン!
モバイルケースやアクセサリーを専門に扱うロア・インターナショナルが2017年8月に発売した新製品が、「Air Twins(エアーツインズ)」である。モバイルバッテリー付きの完全ワイヤレスイヤホンで、販売価格は9,800円(税込み)というから驚きだ。イヤホン本体は専用ケースに収納できるのだが、このケースにはマグネットで簡単に着脱ができる上、ケースそのものがバッテリーとなっている。つまり、ケースに収納することでイヤホンの充電ができるわけだ。
しかも、このケース自体が容量2800mAhという大容量バッテリーにもなっていて、USBケーブルなどを使うことでスマホの充電もできてしまう。
なんというコストパフォーマンスの高さだろう。
当然だが発売直後から人気となり、売り切れや品薄状態が続いている。私自身は未入手で、別にこの商品を宣伝するつもりもないのだが、完全ワイヤレスイヤホンもこの価格帯にまで進出してきたのが驚きだった。
完全ワイヤレスイヤホンはAppleが火をつけた
完全ワイヤレスイヤホンに注目が集まり始めたのは、2016年の秋に「iPhone 7」シリーズからヘッドホン出力端子を廃止する代わりに、Apple初の完全ワイヤレスイヤホン「AirPods」が発表された頃である。実際にその後はBluetooth方式のイヤホンが市場に続々登場し、高性能化、低価格化が進んでいる。もちろん、中上級モデルも発売されているので、音質を求める人にもオススメだ。
ワイヤレスイヤホンでは、過去に「イヤホン・ヘッドホンの構造と価格の違い」のなかで「TaoTronics TT-BH07」という低価格モデルを紹介した。
しかし、これは左右のイヤホン本体がケーブルでつながっており、完全ワイヤレスではない。そこで、今回はコードのない「完全独立型ワイヤレスイヤホン」のことだけを調べてみた。
Bluetoothのおさらい
ケーブルが絡まったり、引っ掛ける心配がない。軽量でどんなファッションでも装着ができるのが完全ワイヤレスイヤホンのメリットだ。しかも、「Air Twins」のように低価格、高性能な製品が現れたことで、さらにその人気は加速することは間違いない。
だが、メリットがあれば当然デメリットもある。そこで、まずはBluetooth方式イヤホンのことを理解してもらおう。
そもそもBluetoothは、数m~数十mほどの範囲で、電波を使って機器同士の簡単な情報を送受信するシステムの規格のことだ。2.4GHz帯の電波を使い、PCとマウス、キーボードを無線接続したり、スマホやタブレットなどで比較的低速度のデジタル情報をやりとりするために使われている。低速度のデジタル情報ということは、オーディオ機器として使用する場合にはわずかな音の遅延が発生したり、高音質(大容量)のデータが転送できないということでもある。
そこで、完全ワイヤレスイヤホンに当てはめて考えてみよう。
Bluetoothにはデメリットもある
Bluetoothは2.4GHz帯の電波を使用すると書いたが、それ以外の周波数帯は使えないということだ。
そのため、スマホなどで一度に複数のBluetooth搭載機器は使えない。完全ワイヤレスイヤホンは左右のイヤホンが独立しているため、同時に両方にデータが送信されていると思われがちなのだが、実際には片側のイヤホンに送られてから、もう片方に転送されるようになっている。
そのため、左右でわずかな音のズレが生じる。さらに音質の劣化もある。連続再生時間も短い。やはり、高音質とBluetoothとは相性が悪いようだ。
しかし、この話はあくまで理論上のこと。
実際に聴いても、音のズレや音質の劣化は気にならないし、再生時間も充電機能付きケースがあれば問題ない。そもそも、実用レベルで問題があるなら製品化されるはずがない。敢えてここでデメリットを並べたのは、完全ワイヤレスイヤホンには、それを補って余りあるメリットがあると強調したかったからである。
デメリット以上のメリットがある!
完全ワイヤレスイヤホンは低価格化が進んでいると書いたが、正確には価格帯そのものがワイドレンジ化している。従来の有線式イヤホンのように低価格でそこそこのスペックのモデルもあれば、高価だが高音質向けのモデルも登場している。BA(バランスド・アーマチュア)型イヤホンのようにコストは高いが、中高音域の再現力が高いモデルなどがまさにそうだ。BA型イヤホンに内蔵されるBAドライバーというのは、技術特許が多く自社開発が難しいのだが、その反面、供給するメーカーが絞られるので品質にバラつきが出ることはない。
これは、現行の「ワイヤレスイヤホン」が市場を伸ばしてきたときと同じ現象である。
これからの市場拡大が見込めれば各社が新製品をどんどん投入してくるわけだ。なかには聞きなれないメーカーが中国の工場で生産させたものもある。しかし、オーディオ製品については中国製だからと偏見を持たないほうがいいだろう。国内生産では販売できない価格で日本人が満足できる製品を数多く世界に送り出している。
ハイレゾなどにこだわらず、普通に良い音で手軽に音楽を楽しみたい。そういう人は今からでも遅くはない。完全ワイヤレスイヤホンをオススメする。
最後に
今回は、執筆時期と発売時期が近かったために「Air Twins(エアーツインズ)」を紹介したが、手頃な完全ワイヤレス型イヤホンも12,000円くらいからいくつか発売されている。高音質で楽しむなら有線のイヤホンやヘッドホンでゆっくりと。移動の際に手軽に楽しみたいなら完全ワイヤレスイヤホンを。この価格帯からなら手を出しやすいだろう。
ぜひ、あなたのオーディオ・ライフをより豊かにしてもらいたい。
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