ミリタリー

F-35(ステルス戦闘機)について調べてみた

F-35(ステルス戦闘機)
※F-35

航空自衛隊の次期主力戦闘機(F-X)にアメリカの航空機メーカーであるロッキード・マーティンF-35 ライトニングⅡ」が決定したことに落胆を覚えた人もいるはずだ。
現在、世界最強の戦闘機はアメリカのロッキード・マーティンボーイングが共同開発したF-22 ラプターである。

当初、航空自衛隊はF-22の導入を熱望したが、アメリカ側は軍事技術の流失を恐れて禁輸措置を取ってしまった。
では、F-35のどこが落胆の原因になってしまったのだろうか?

開発まで

アメリカ空軍は早くからF-15に替わる主力戦闘機を欲していた。1975年に配備が始まったこの機体は当時、世界最強の能力を誇った。しかし、技術の進歩によりさらに性能の良い戦闘機が開発できるようになると、切り替えるべきという話になる。

さらに機体そのものの寿命にも問題があった。単純計算であれば50年以上の寿命を持つが、そこまでして維持するより新型機を開発したほうが早い。さらにステルス戦闘機の有効性も認められた時期だったため、F-22の開発に着手することとなる。

その間「つなぎ役」としてF-16戦闘機が開発されたり、「延命措置」としてF-15E攻撃機などが開発されたが、どれもF-22の出現を待つまでの苦肉の策だった。


※F-22

そうして、1997年には待望のF-22が完成するが、コストの高騰や世界同時恐慌などの影響により、アメリカ空軍は当初の予定より大幅に生産数を削減することになる。

その空いた穴を埋めるために開発されたのがF-35だった。総合的な性能ではF-22に劣るが、他に選択肢はなかったのだ。

ステルス

F-22、F-35共に注目されるのが「ステルス」である。

ステルスという単語は「スティール(盗む)」という言葉から派生したものだ。転じて、「敵にそっと忍び寄り、奇襲できる能力」という意味になる。ステルスの技術的な価値は大きく二つあり「レーダー」と「赤外線探知装置」の目を欺くことだ。


※F-22の形状

レーダーは、レーダー波をアンテナから放射し、目標がこのエリアに入ると一部は吸収されるが、残りのわずかなレーダー波が反射して返ってくる。これにより、相手の位置を探るシステムのことである。

赤外線探知装置は、機体のエンジンやエンジン排気の熱などから赤外線を感知して、相手の位置を知ることができる。
長年、戦闘機にとってこの二つが大きな問題となっていたが、ステルス技術の進歩によりその問題はほぼ解消された。

レーダーに対してはレーダー波を乱反射させ、レーダーに戻るレーダー波の量を減らすように機体の形状を工夫すればいい。また、RAM(電波吸収材)を機体表面に塗装するのも有効だ。

赤外線の問題はエンジンを出来るだけ露出させないような配置にしたり、排気熱も機体の外へ放出するまでの経路を長くして少しでも冷却させる。こう書いてしまうと簡単だが、実際はもっと複雑で困難な道のりだった。

F35の性能 特徴

まるでF-22の代替機のような書き方をしてしまったが、F-35にはF-22にはない素晴らしい特徴がある。

それが、単独でのマルチロール化だ。マルチロールとは本来、戦闘機と攻撃機の両方の性能を併せ持つという意味である。戦闘機は対戦闘機用の航空機で、攻撃機は地上にある目標に対して攻撃を行う機体と思えばいい。

しかし、F-35に関してはそれだけではない。

ひとつの基本設計を元に、通常離陸型、短距離・垂直着陸型、艦載機型と3タイプの開発・製造が行える。つまり、空軍・海兵隊・海軍の3軍が運用できるようになった。
通常離陸型は、その名の通り陸上の滑走路を利用する。

短距離・垂直着陸型は、短距離での発進、ヘリコプターのように垂直に着陸が出来るため、海兵隊のような小型空母でも運用が可能となった。


※F-35の垂直着陸

艦載機型は、通常型より短い空母からの離陸が可能で、着艦のための装置も付与される。

このため、大量生産が見込めることでコストダウンにつながると言われていた。もっとも、機体のコントロールに不可欠な最終型ソフトウエアの開発遅れや共同開発国の買い控えによる価格高騰などにより、現在ではコストダウンどころか当初よりコストは上がってしまった。

それでもF-35が画期的な機体である事に違いはない。

日本での役割

航空自衛隊が次期主力戦闘機にF-35を選定したことは先に書いたが、その他にもオーストラリアカナダ、デンマーク、イスラエル、イタリアなどが導入を決めている。そのため、日本にも名古屋近郊にF-35専用の最終組立・検査施設が設置された。日本以外ではイタリアにも同施設がある。

勿論、ステルスやブラックボックス等の高度な軍事技術が導入されている箇所についてはロッキード・マーティンしか触れることが出来ないが、通常のメンテナンスは国内でできることになる。さらにエンジンが単発(1基)のため、F-22よりはメンテナンスも容易である。


※F-35の内部構造

このF-35が自衛隊に配備されれば戦闘力の向上は勿論だが、日本独自のメリットがあった。それが、優れた「監視・偵察」能力の獲得だ。実戦を想定しながらも、そうさせないことを目的とした自衛隊において、この能力の意味は非常に大きい。

さらに日本に敵対しようという国に対しての抑止力にもなるだろう。

最後に

F-22が現時点で最強の戦闘機であるのは間違いない。しかし、F-35もF-22にほぼ近いステルス性能を有している。これは通常の戦闘機に対しては圧倒的なアドバンテージとなるのだ。

緊迫した世界情勢の中、F-35の配備は各国で望まれている。

関連記事:
F-35 vs F-15EX「日本は騙されたのか?」

gunny

gunny

投稿者の記事一覧

gunny(ガニー)です。こちらでは主に歴史、軍事などについて調べています。その他、アニメ・ホビー・サブカルなど趣味だけなら幅広く活動中です。フリーでライティングを行っていますのでよろしくお願いします。
Twitter→@gunny_2017

✅ 草の実堂の記事がデジタルボイスで聴けるようになりました!(随時更新中)

Audible で聴く
Youtube で聴く
Spotify で聴く
Amazon music で聴く

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事

  1. 【ロシアを擁護するトランプ】中国は台湾に侵攻する意欲を増強させる…
  2. インドカレー店がなぜ多いのか調べてみた【法務省も関与していた!?…
  3. 中国人のビックリする習慣 【寝そべる、列に割り込む、道を渡る時は…
  4. 天安門事件とはどのような事件だったのか? ③ 「武力弾圧開始、戦…
  5. 『トランプ相互関税ショック』台湾が報復関税を仕掛けないワケとは
  6. 端午の節句にちまきを食べるのはなぜ? 「春秋時代の詩人 屈原の死…
  7. 【MA-1ブーム再燃!】フライトジャケットの魅力
  8. 世界の巨大兵器について調べてみた 【パリ砲、カール自走臼砲】

カテゴリー

新着記事

おすすめ記事

アイヒマンテストとは 〜【人間の残酷さを証明した心理実験】

アイヒマンテストとは「アイヒマンテスト」は1963年にアメリカのイェール大学の心理学者で…

『古代中国』 戦国時代の「古代墓」「剣や戦車」が大量に発見される

2024年3月15日、中国社会科学院考古学研究所は、湖北省襄陽市で戦国時代の墓が174基発掘…

相撲の起源と歴史 「最古の記録は紀元前だった」

日本古来の伝統的な武芸として、何より日本の国技として絶大な人気を誇る相撲。その起こりは神話時…

岩倉具視について調べてみた【下級の出自ながら維新を牽引した公家】

下級公家の出自だった 岩倉具視岩倉具視(いわくらともみ)は、かつては500円札の肖像にも使わ…

野心的だった青年が「神の声」を聞いて人生が一変 【聖フランチェスコ】

フランチェスコ、もしくはフランシスコという名は、どこかで耳にしたことがある方も多いかもしれま…

アーカイブ

PAGE TOP