ミリタリー

スカッドミサイルとPAC3について調べてみた

スカッドミサイルとPAC3

いまや世界から孤立する一方の北朝鮮

その数少ない手札のひとつが弾道ミサイルである。弾道ミサイルとは大気圏内外を放物線を描くように飛翔し、着弾するミサイルの総称だが、今回はその中でも有名な中距離弾道ミサイル「スカッド」と、それに対応すべくアメリカが開発した「PAC3」について調べてみた。
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スカッドミサイル

スカッドは、旧ソ連により開発されたR-11弾道ミサイルと、その改良型に付けられたNATOのコードネームである。

Scudとは、英語で”ちぎれ雲”、”風に流される雲”という意味で、1957年にはR-11がソ連陸軍に配備された。

スカッドの特徴として、改良型が多いという点がある。

それぞれ、スカッドA・B・C・Dと呼ばれるこれらのミサイルは、主にTEL(Transporter Erector Launcher:輸送起立発射機)と呼ばれる大型の車両で移動できるために旧東側諸国や中東などで導入された。

移動できるということは、平時は偵察衛星から隠しておき、いざ有事の時には素早く展開して発射できるということだ。

最近の北朝鮮によるミサイル発射実験は、現地時間の朝に行われることが多い。その理由として発射時間がアメリカのゴールデンタイムにあたること。もうひとつは、深夜に発射準備をするため、アメリカの偵察衛星に探知されにくいのが理由だともいわれる。

冷戦時代にはソ連が軍事援助として各国に多数を輸出。その後は、それぞれの国で改良されることになる。構造が比較的単純なので、北朝鮮の技術水準でもそれは可能だった。

そうして生み出されたのが「ノドン」である。

ノドン

ノドンは1970年代に開発されたソ連のスカッドCの射程延伸型といわれる。

基礎的な技術はソ連の模倣であっても、それを改良して射程を延ばすには相当数のテストが必要だ。

よって、製造数は300基を超えるともいわれるが定かではない。ただし、発射するための移動車両は50基以下と推測される。

北朝鮮は80年代からソ連設計のスカッドB(射程約300km)を国産し、さらにその射程を500kmに伸ばしたスカッドCへと発展させた。現在の射程は約1500kmから2000kmあり、設計上は通常弾頭の他に化学弾頭、生物弾頭、小型核弾頭を搭載できる。


※ブルガリア製スカッド

ここで「ミサイル」と「ロケット」の違いを調べたが、実に単純なものであった。

それは「先端部に爆発物などを搭載しているのはミサイル」で「先端部に人工衛星や宇宙探査機などを搭載しているのがロケット」ということだ。つまり、軍事的利用か科学的利用かの違いだけである。

そのため北朝鮮はミサイル発射実験を「ロケット打ち上げ」と称して行うこともある。

もっとも、スカッドより大型で固定発射台を使用する「テポドン」などの弾道ミサイルの場合である。

このように、ノドンは基本設計が古いながらも、改良によってその性能を大きく向上させた。

PAC3

北朝鮮のミサイルと共にメディアで取り上げられる「PAC3」。
PAC」は”Patriot Advanced Capability“(高性能パトリオットミサイル)の略で、その第三形態がPAC3(以下パトリオット)である。

アメリカ陸軍が配備する広域防空用の地対空ミサイルシステムだ。

ミサイル」ではなく「ミサイルシステム」と書いたのは、この兵器がミサイル単体で運用されるのではなく、レーダーや管制装置など付帯するミサイル発射システムを含めてパトリオットだからである。


※自衛隊のパトリオット用レーダー

トレーラーにより移動ができ、射撃管制車両やレーダー車両など、一台の発射機につき10台以上の車両が必要となる。

それというのも、弾道ミサイルを迎撃するパトリオットは、非常に高度な技術が必要とされるからだ。空中を高速で移動する弾道ミサイルは標的としてあまりに小さい。

一説には、ミサイルを迎撃するには「ピストルの弾をピストルの弾で撃ち落とすより速いスピードと精度が求められる」ともいわれる。

ピストルの弾をピストルの弾で撃ち落すことがイメージできるだろうか?パトリオットには、それを上回る性能が要求されているのだ。

そのため、パトリオットは初期型より、PAC1、PAC2、QRPと改良され、現在ではPAC3が最新形態となっている。

湾岸戦争

スカッドミサイルパトリオットミサイルの名前が世界中に知れ渡ったのは、1991年の湾岸戦争であった。

アメリカを中心とした多国籍軍の攻撃に対し、イラクはイスラエルやサウジアラビアなどの近隣の親米国家に向けてスカッドを発射。

それをアメリカ軍のパトリオット(PAC2)が迎撃した。

現在、航空自衛隊では、

「パトリオットは、現存する地対空誘導弾のなかでは最も優れたシステムといわれており、それは先の湾岸戦争でも証明された。超低高度から高高度にいたる複数目標に対し、同時に対処可能であり、高い撃墜能力を有している」

としており、湾岸戦争時でも米軍は「サウジアラビアで70%、イスラエルで40%の成功率」と発表している。


※自衛隊のパトリオット発射機

しかし、実際には成功率はかなり低かったというのが通説となっている。

事実、1992年の米議会会計検査院調査では「実際は9%以下」と公式に認めた。

これが正式な数字であったとしても、驚くほどではない。

まず、当時はパトリオットを制御するためのソフトウェアが完全ではなかったこと、射程距離が20kmしかないこと、PAC2の迎撃方法が、パトリオットミサイルが爆発後に飛散する破片によって目標を破壊する方法であったために、命中しても撃墜にまで至らなかったことなどが挙げられる。

なお、PAC3では目標に対してミサイルを直接当てる方式に改良された。

実戦

スカッド、パトリオット共に20年以上前の湾岸戦争時より性能は飛躍的に向上している。

北朝鮮版スカッドであるノドンは詳細が不明だが、PAC3については「自衛隊のテストでPAC3は2回のうち2回とも成功した」とされている。

しかし「やってみないと分からない」と言う防衛省幹部もおり、それはまさにその通りだ。

もし、北朝鮮とアメリカの武力衝突が現実化した場合、残念ながら米軍が設定する標的としてノドンの優先順位は低く、PAC3の配備も米軍や自衛隊基地、大都市圏への配備が中心となる。

しかし、湾岸戦争時と同様、ノドン発射よりも前に、特殊部隊が海上や高高度からのパラシュート降下により北朝鮮領内に潜入。ノドンの発射機を見つけ出し、航空機による空爆が行われるはずだ。


※PAC3のミサイルへの直撃

PAC3もソフトウェアの改良やネットワーク技術の進歩により、主に電子メカニズムの性能が向上されている。

また、ノドン1基に対して同時に複数のパトリオットで迎撃することもできるため、悲観的な意見ばかりではない。

最後に

ここまで調べてみても、やはり「やってみないとわからない」という結論になった。しかし、何の対抗手段もないより何倍もマシである。

米軍も自衛隊も有事に備えて常にシステムの改良と訓練を行っているが、どちらも使用されないのが一番良いということだけは明確だ。

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