無戸籍の子供たち
中国では戸籍がない子供たちを「黑户宝宝」と呼ぶ。
2010年11月、無戸籍の子供問題の解決のために人口調査が行われた。その結果、戸籍がない子供たちは少なくとも1300万人に達することがわかった。
この数は中国の全人口の1%にも及ぶ人数である。専門家によると、さらに20年前には5000万人から1億人もの無戸籍の子供たちが存在していたと言われている。
中国では、国家の安全と統制を維持するために「実名制度」が推進されてきた。14億人もの人民を共産主義政府が統治する以上、これは避けられない措置であった。
そのため、戸籍がないということは社会的に存在しない状態と同じなのである。
学校に通えず、仕事に就けず、病気になっても病院に行けず、家を買うことはもちろん、家を借りることやホテルに泊まることさえできない。
結婚もできず、携帯電話の契約もできない。電車や長距離バスに乗ることもできず、パスポートを発行してもらうこともできないため、海外旅行にも行けない。
彼らには生活の保証も保険もなく、社会的な福祉を享受することもできないのである。
つまり、無戸籍の子供たちは人権を持たず、存在しない「存在」となっているのだ。
一人っ子政策が残した負の遺産
中国は少子化問題を解決するべく、30年以上にも及んだ一人っ子政策に終止符を打った。しかし一人っ子政策は無戸籍の子供たちという負の遺産を残したのである。
一人っ子政策の時代に、政府の目を盗んで生まれた子供たちの多くが無戸籍の子供たちなのである。
登録しようにもできなかった現状があった。二人目の子供を産むと、仕事を失ったり罰金を課されたりするなどの罰則があったため、彼らはこっそりと育てられた。
そして、無戸籍の子供たちは自身も子供を産み、2代目の無戸籍の子供たちをもうけることになる。これらの子供たちも親と同じく戸籍を持たず、一生を戸籍のない苦しい生活を強いられる運命となる。さらに、無戸籍の子供たちは人身売買の温床となることもあり、売買される運命に置かれることもある。
この国策が引き起こした負の遺産は、国が解決し処理すべき問題であろう。
戸籍取消?
通常、戸籍が取り消されるのは本人が死亡した場合である。しかし、中国ではいくつかの場合に戸籍が取消される。
死亡以外の場合では、人が行方不明になった場合である。行方不明になった後に見つかった場合は、再度戸籍を申請することができる。
また、兵役につく人も戸籍が取り消される。これは法律上の理由があり、その人物の安全を確保することが目的として記載されている。
戸籍が存在し、兵士の家族や親族が調査された場合、個人の身に危険が及ぶ可能性があるとされ、一般人としての戸籍は一時的に取り消され、政府が管理することとなる。
兵士の個人情報も国家機密として厳重に扱われるのだ。
法倫功の信者
「法倫功(法輪功)」という宗教を聞いたことがあるだろうか。
中国では邪教として禁止されており、その信者たちは迫害を受けている。この宗教は自殺を唆すことでも知られている。
多くの人が印象に残っているかもしれないが、2001年1月23日、実際に北京の天安門広場で、7人の信者が自らに火をつけ自殺する事件が起きた。その他にも自分の中にある「法倫」を探すために腹を切ったり、魔除けと称して自らの幼い子供を手にかけたりと、様々な事件を繰り返している。
そしてこの法倫功の信者たちの多くも戸籍を取り消され、「黑户宝宝」となってしまうという。
また、法輪功を信奉する人々は、広告や街頭での広報活動を行うことがある。しかし、中国政府はこれらの活動を「社会不安定要素」として取り締まり、逮捕・拘束の対象としている。
彼らは社会的なシステムの外に置かれ、基本的な権利や福利を受けることができない。仕事も得られず、教育や医療の機会にも恵まれないのだ。
最後に
中国の無戸籍問題は社会的な課題であり、多くの人々が直面している現実である。戸籍のない子供たちは基本的な権利や福利を受けることができず、適切な解決策と支援が求められている。
無戸籍の子供たちも含め、すべての人々が平等な機会を持ち、人間らしい生活を送ることができる社会が築かれるべきであろう。
このように中国の戸籍問題について調べると、戸籍というものの存在について改めて考えさせられる。
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