後を経たない詐欺
世界各地で後を経たない詐欺被害。
多くの詐欺手口が公になり、注意喚起がなされているにもかかわらず、次々に新しい手口が考え出されている。警察ともイタチごっこのようだ。
詐欺グループは上手く人の心理をついてくる。お金や地位をもっと得たいという欲望や、同情心や正義感、義務感などを巧みに利用するのだ。
高齢者だけでなく、若者までもがその餌食となっている。
これは世界中で起きており、私たちの誰もが被害者になりかねないのである。
ではお隣の国、中国ではどんな詐欺手口が横行しているのだろうか? いくつか取り上げてみよう。
電話を使った詐欺
ここでは中国で実際にあった「電話による詐欺」の例をいくつか紹介しよう。
「私は〇〇から依頼を受けた殺し屋だ。数日前からお前の後をつけている。殺されたくなければ、金を振り込め。」
電話を受けた男も反社会の人間だったのだろうか?
「あなた宛の荷物の中から、違法薬物が発見されました。捜査に協力していただきます。」
そして国家の口座と称して、銀行口座を提示され、罰金を振り込むように要求されたという。
「さて私は誰でしょう??当たったら賞金を差し上げます!」
一体誰なのか??話を受けた人は考え始める。親族?友人?
相手は、誰にでも当てはまるような質問をしてくる。
電話を受けた人は、知り合いや親族の名前を上げ始める。相手はそれを記録して少しずつ情報を盗んでいく。
そして、必要な情報を盗んだ時点で「賞金を獲得した」と告げて電話を切る。もちろん賞金など獲得していない。
「こちらは〇〇配達です。あなた宛の荷物を配達したいのですが、具体的な住所がわかりません。どちらにお届けしたらいいかわからないので、住所を教えていただけないでしょうか?」
住所を伝えると配達員が荷物を持ってくる。そして受け取ると料金を支払うように要求されるのである。
中には偽タバコや偽酒が入っており、身に覚えのない荷物である。
そこで「返品したい」と伝えると、配達員がどこかしらに連絡して、電話がかかってくるのである。
「荷物を一度手にしたということは、違法品の受け取りに関与したということなので、料金を支払う必要がある。あなたはすでに犯罪に加担したのだ。料金を払う以外に方法はない。さもなくば通報する。」
配達業者とグルだったのだ。
「おめでとうございます!のど自慢大会の観覧客に当選いたしました。直接大会に参加していただくことも可能です。大賞に選ばれますと、賞金がもらえますよ!」
その後、話を聞いてみると権利を確実なものとするために「保証金」を要求してきたという。
裏口入学詐欺
中国では「有関係」、つまりコネクションが非常に大切だ。逆に言えばコネクションとお金があれば、大体のことが解決できるのである。
多くの親は子供を理想の学校に進学させるために、コネクションと多額のお金を使う。
Gさんは子供を有名校へ進学させるため、ある女性に連絡を取った。彼女は中国のSNS「ウェイシン」で有名校と関係があるという虚偽の情報を流していた。そのあまりにも詳しい内容から、Gさんはこの女性が有名校の重役であると確信し、コンタクトを取ることにしたのである。
そしてGさんは女性と契約し、その女性は口頭で「入学は確約した」とGさんに伝えてきた。
しかし、その後の過程で様々な名目の費用を要求してきたのである。Gさんは藁にもすがる思いでお金を払い続けたという。
結局Gさんは、人民元で25万元(日本円で約50万円)ほどのお金を騙し取られた。
その後、いざ入学の段階になるとGさんの子供の名前はなく、やっとそこで騙されていたことに気がついたという。
運転免許詐欺
ある日のこと、一人の若者が警察に駆け込んできた。
「すみません、私の運転免許証が合法なものか調べていただけませんか?」
そして運転免許証を差し出してきたのである。
警察が公安交通管理の資料を調べたところ、驚くことに若者の記録は全くなく、試験を受けた形跡もなかったという。
つまり若者の運転免許証は「偽物、非合法」であったのだ。
若者は慌てて、両親と連絡を取り確認することにした。
すると両親が以前、息子が運転免許試験に合格するか心配し、ある人物と連絡を取っていたことが判明した。
その人物は自動車学校の職員を名乗っており「勉強や試験をしなくても運転免許が取れる」と言ったという。そして、実際に免許を簡単に取った実例や、写真を見せて信じ込ませたのである。
両親が費用を支払うと、すぐに偽造された運転免許証が送られてきた。費用は2万6千人民元(日本円で約52万円)。その他、秘密を守るという誓約書やよくわからない保証金も請求されたという。
警察は「代理試験や代理受講といったものは全て詐欺なので、注意するように」と警告している。
筆者は3年ほど中国に住んでいたが、中国では何でもお金で買える。
お葬式で泣いてくれる人、恋人や家族の身分証、卒業証書や運転免許証、パスポートなど何でもありだ。
インターネットでファンを買っている芸能人もいる。お金で買収して自分を応援させるのだ。
このように、中国では自分を守るハードルも高いのである。
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