海外

兵馬俑で「エアジョーダン」が出土した!?

兵馬俑

画像 : 兵馬俑 public domain

1974年3月、中国西安の農民が井戸を掘っていると地下の石板が砕けて倒壊してしまった。底に大きな空間があったのである。
そこで、幾つもの陶器の破片を発見した。それを組み合わせてみると、人型をした人形だったのだ。

後の兵馬俑(へいばよう)である。
それから、大々的な発掘調査が現在に至るまで続けられている。

毎年、兵馬俑関連の展覧会は多くの観客を呼び、海外への出張も行われている。
その度に新しい発見があり、世界中の歴史ファンは長年にわたって注目し続けている。

兵馬俑は始皇帝陵の一部であるが、始皇帝の墓には様々な理由から未だに発掘調査の手が及んでいない。今後の科学技術の進歩を待って、近い将来に発掘調査が進むことを個人的にも期待している。

そんな兵馬俑坑からなんと「エアジョーダン」が発掘されたという。

そう、あのスポーツブランドNIKEの名品「エアジョーダン」だ。一体どういうことなのか?

CLOT x Air Jordan 13 Retro Low NRG ‘Terracotta’

2018年のことである。NIKEと香港のストリートブランド「Clot」がコラボして、兵馬俑をモチーフにしたエアジョーダン13を発売したのだ。

画像 : Air Jordan13 X Clot

全体的に高級感漂う柔らかいスエードが使われており、ボディは兵馬俑の鎧をイメージに作られている。
小さな正方形の鉄の板を一つ一つ繋いで、鎧にしているように、靴のボディにも同じ装飾があしらわれており、プリントではなく一つ一つが実際に紐で繋がれている。

革にはエンボス加工がされており、凸凹した表面がより一層高級感を増している。
発掘された兵馬俑は長い間土の中で眠っていて、どれも塵と誇りに覆われていた。そのため、くすんだ色を基調として質感もリアルに作り上げられている。

一際目立つのは、足の甲と踵の部分にデザインされているエアジョーダンとClotのロゴである。靴底もデザインが凝っていて、耐久性にも特化しているという。

注目したいのは、その宣伝広告だ。
兵馬俑の発掘現場が再現されており、兵馬俑がまるでエアジョーダン13を履いていたかのような演出がなされている。

調査員が刷毛を持って慎重に掘り起こしている様子が再現されている。靴の半分がまだ土の中に埋まっており、その傍には番号のパネルが立ててある。

シャレの効いた宣伝広告である。

画像 : 宣伝広告

キャッチコピーは「兵馬俑のバスケシューズが出土した!」となっている。

Clotのデザイナー陳冠希は、こう言っている。

「兵馬俑は中国だけの重要な歴史ではない。世界の宝である。その世界の宝がエアジョーダンの歴史に名を刻むことは、大いに意味があることである」

売れ行きはいかに!?

画像 : エアジョーダン13 テラコッタコラボ

CLOT x Air Jordan 13 Retro Low NRG ‘Terracotta’ は、2018年12月8日と9日の、午後1時から2時までの時間限定で発売された。

発売数はそれぞれ250足の二回で、限定500足である。

どちらの時間帯も、あっという間に完売したという。

好評につき!?

西洋と東洋の架け橋にというコンセプトを持ったこのコラボスニーカーは、その後、好評につき第二弾を発売している。(AIR JORDAN 35 “WARRIOR JADE” と、Air Jordan 13 Retro Low NRG ‘Terracotta’

少し現代感が増したデザインで、兵馬俑の鎧をモチーフとした模様は、後ろにさりげなくデザインされているにとどまった。

そして特別なのは、踵の部分に中国結びと中国のラッキーチャームがついていることだ。

画像 : CLOT × NIKE AIR JORDAN 35 “WARRIOR JADE”

中国人が愛してやまない翡翠と、中国で吉兆の色として知られる赤がアクセントになっている。

さらに、マイケルジョーダンの背番号23の「2」と「3」を密かに忍ばせているという。

最後に

興味深いことに、兵馬俑は現代のファッション業界にまで進出している。

今後の兵馬俑の新発見に大いに期待したい。

 

アバター

草の実堂編集部

投稿者の記事一覧

草の実学習塾、滝田吉一先生の弟子。
編集、校正、ライティングでは古代中国史専門。『史記』『戦国策』『正史三国志』『漢書』『資治通鑑』など古代中国の史料をもとに史実に沿った記事を執筆。

✅ 草の実堂の記事がデジタルボイスで聴けるようになりました!(随時更新中)

Youtube で聴く
Spotify で聴く
Amazon music で聴く
Audible で聴く

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事

  1. 私が移住したマレーシアの「ジョホール州」について語る 〜【免税地…
  2. アメリカの金融業界を支配した 「モルガン家」の歴史
  3. 2020年7月に亡くなった『glee』出演のナヤ・リヴェラはどん…
  4. 『台湾の原住民』タオ族の文化と伝統 ~独特すぎる食文化とは?
  5. 「共謀罪」について分かりやすく解説
  6. 日本人が間違いやすいネイティブ英語②【食べ物・野菜編】
  7. イギリス最大の高級百貨店ハロッズについて調べてみた 「ザ ハロッ…
  8. 「人食いバクテリア」過去最多の感染者 ~致死率30%以上

カテゴリー

新着記事

おすすめ記事

【教皇vs皇帝】 皇帝が教皇に屈辱的な謝罪をした「カノッサの屈辱」

前回の記事「【カール大帝と西ヨーロッパの成立】 権威と権力の違いとは?」では、フランク王国による西ヨ…

戒律か、母の命か…『前賢故実』に名を残した“名もなき英雄”僧某(ナニガシ)のエピソード

よく「歴史に名を刻む」などと言いますが、いくら名ばかり刻んだところで中身がともなわなければ空しいもの…

【後北条家は滅んではいなかった】 北条氏直 〜秀吉に許された北条最後の当主

秀吉に許された 北条氏直北条氏直(ほうじょううじなお)は、関八州を支配下に置いた戦国大名…

【2023年の夏は過去最高に暑い?】 令和の夏は昔と比べてどれほど暑くなったのか検証

2023年7月現在、恐ろしいほどの猛暑日が続いていますね。6月から既に暑かったですが7月はさ…

奈良時代の『仏教宗派』は現代とは違っていた~ 「南都六宗」とは

日本に仏教が伝来した当初は、渡来人(帰化人)が信仰する異国の宗教として受け入れられた。…

アーカイブ

PAGE TOP