アモウ・ハジ氏は、70年近くも入浴を拒否し、その生活ぶりから「世界一汚い男」と呼ばれた。
1928年にイラン南部のディガ村に生まれ、1954年を最後に死ぬ直前の2022年まで、70年近くもシャワーを浴びることなく生活を送ったという。
しかし2022年、実に約70年ぶりにシャワーを浴び、なんとその数カ月後に亡くなってしまったのである。(※享年94)
ハジ氏の死は、村の人々に大きな衝撃を与えたという。
ハジ氏は、ゴミから食べ物を集め、動物の糞をパイプで吸うという、奇妙なライフスタイルで知られていた。
本名はわかっておらず、イランの言葉で「ハジおじさん」と呼ばれていた。
その見た目から「世界一汚い男」と呼ばれたが、近隣の村人との関係は良好だったようだ。
なぜ風呂に入らなかったのか?
ハジ氏は若いとき、体を洗うことで何度も体調をくずしたそうだ。
それがトラウマになり、病気になることへの恐れから水を避けて入浴をしなかったという。
また、風呂で滑って死ぬ可能性があることも恐れていたようだ。
その結果、70年近くもシャワーを浴びずに生活し、ハジ氏の体は厚さ数センチの土と灰の層で覆われるほどに汚れていた。
まるで岩のようである。
ハジ氏は愛煙家
ハジ氏が最も大切にしていた所有物は、動物のフンをタバコのように吸うためのスチール・パイプだ。
この金属製の錆びたパイプに乾燥させた動物のフンを詰めて吸うと、タバコよりも濃厚な味わいがあるそうだ。
村人たちはハジ氏にタバコをあげたりしていたが、ハジ氏は1本ずつでは物足りないらしく、5本まとめて吸ったという。
ハジ氏の食生活
ハジ氏は健康的な食事を好まず、食事の多くはゴミの中から集めたり、腐敗した動物の肉を食べていたという。
特に、「腐りかけのヤマアラシ」の肉がうまいそうだ。
ハジ氏は清潔な水にも触れず、雨水を溜めた錆びた缶から、5リットルの水を毎日飲んでいた。
ハジ氏の身だしなみ
ハジ氏は、自分の容姿にまったく無関心というわけでもなかったようだ。
その証拠に、鏡(ひろった?車のバックミラー)を持っていた。
長くなったヒゲを定期的に整えたりしていたが、その方法は独特で、木に火をつけ、鏡を見ながら火で燃やしながら整えるのだ。
しかし服装には気を使っておらず、一年中ほとんど同じ服を着ていた。
冬だけ、頭を寒さや雨から守るために、軍隊風ヘルメットをかぶっていた。
ハジ氏の住居
ハジ氏は、ほとんどの時間を野外で過ごしていた。
冬になると、村の人々がハジ氏のために建てた簡素な小屋で寝ていたようだ。
しかし、ハジ氏は屋内にいることはあまり好きではないらしく、できるだけ野外で過ごしていたようだ。
彼にとっては、地面が自分の家なのだろう。
村人との関係
ハジ氏の奇妙なライフスタイルは、村の人々にも知れ渡っていた。
村の人々は彼に同情し、助けようとした。
しかしハジ氏は、タバコや寝るための小屋以外の支援を断っていたという。
あえて村人たちと離れた場所で孤立して暮らすことを選んだので、誰かに迷惑をかけることもなかったのだ。
ハジ氏のライフスタイル
しかしハジ氏は、自分のことを汚いとは思っていなかったようだ。
このライフスタイルこそが、自分にとって最適だと信じていたのだ。
ハジ氏は、若い頃に失恋した経験があるという。
その失恋体験も、彼のライフスタイルに大きな影響を与えたと考えられている。
失恋の痛みから逃れるために孤立し、自分の世界に閉じこもってしまったのかもしれない。
洗濯も入浴も拒否し、社会から孤立した生活を選んだハジ氏だったが、村人たちからの支援を受けながら最期を迎えることができた。
ハジ氏の入浴と死
2022年中頃、村人たちはハジ氏を説得して入浴させた。
するとその後、体調を崩し、数ヶ月後の同年10月に94歳で死去してしまったのだという。
彼の死は、村の人々に大きな衝撃を与えた。
半世紀以上入浴しない生活が、彼の健康の秘密だったかもしれないのだ。
ハジ氏は「世界で最も汚い男」と呼ばれる一方で、驚くほど健康だった。
寄生虫に感染しながら発症せず、免疫力が非常に高かったと推測されている。
一般的には、清潔で衛生的な生活を心がけるべきだが、過度の清潔志向も逆に免疫力を下げる可能性があることを示唆しているのかもしれない。
さいごに
ハジ氏の奇妙な生き方は短編ドキュメンタリー映画の題材にもなり、多くの人々の関心を集めた。
2022年に94歳で亡くなったハジ氏の生涯は、人間の生き方や可能性の限界について考えさせられる事例になっている。
ハジ氏の生き方は理解されにくいものではあったが、彼の生き方を尊重する人も少なくなかったという。
参考 : The Story Of Amou Haji, The ‘Dirtiest Man In The World’
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