海外

『歴史上最も大きな生物』 シロナガスクジラが来たぞ! ~屏東県国立海洋博物館

シロナガスクジラ

シロナガスクジラ

画像 : シロナガスクジラ イメージ

皆さんもご存知の通り、「シロナガスクジラ」は生物の歴史の中で最も大きな動物である。

大きな個体では、全長30メートルを超え、体重は180トンほどにまで成長するという。
観光バスを2台並べることができるほどの大きさで、心臓だけでも軽自動車ほどのサイズだ。
食道は、バスケットボールを通せるほど太い。

彼らは1日に1トンから4トンのオキアミを食べる。つまり1日に一頭の像ほどの量のオキアミを食べるのだ。

巨大なシロナガスクジラを近くで観察することは、なかなか容易ではない。
そんなシロナガスクジラの全身の標本が、台湾は屏東県墾丁にある「国立海洋博物館」にて展示される運びとなった。

まずはその経緯について説明しよう。

座礁した若いシロナガスクジラ

シロナガスクジラ

画像 : シロナガスクジラ 全身像 public domain

その巨大な体から、標本を入手することは非常に難しいとされている。
シロナガスクジラの完全に揃った標本は、世界でも25ほどしか存在していない。

今回展示が始まったシロナガスクジラの標本は、台湾においての第一号であり非常に多くの人の注目を浴びている。

この個体は、2020年1月25日に台湾の東側、台東に座礁した若い個体で、台湾において初めて座礁が発見された。
この個体はまだ若く未成年であったことから、骨が完全に成長しておらず、解体作業は困難であった。

個体の全長は20メートルを超えていたが、発見時にはすでに死亡しており、顎の部分には太いナイロン製の縄が絡まっていた。

このことから、死亡原因はこの縄が顎に絡まったことにより、食事が正常に取れなくなったことだとわかった。

もちろんこの縄は、私たち人間が廃棄したものである。

解体から標本へ

とはいえ、このように完全な形でシロナガスクジラが座礁するというケースはごく稀である。
この貴重な個体の死を無駄にすることのないよう、標本にすることになったのだ。

この個体は死亡後、すでにかなりの時間が経っていると見られ、体の主な筋肉はほぼ存在していなかった。
内臓の大部分もすでに微生物によって分解されているような状態だった。

まずはこの巨大な個体を運ぶことから始まった。用意した車は15メートルの長さしかなかったため、解体することになり、慎重にその作業は始まった。

この解体と標本作りには、東京国立自然科学博物館の山田格教授が携わった。

そして2年以上の月日を経た後、ついに屏東県墾丁にある「国立海洋博物館」にて展示される運びとなったのだ。

シロナガスクジラ

画像 : 展示の様子(筆者撮影)

シロナガスクジラが来たぞ!

2023年12月15日についに一般公開が始まった。
屏東県にある国立海洋博物館、世界海域館の天井から吊り下げる形の展示となった。

筆者は春節の期間の最終日に訪れた。さほど観覧者は多くなかったので、ゆっくりと台湾初のシロナガスクジラの標本を鑑賞することができた。

下から腹部の内部まで見ることができたが、その大きさにはかなり驚いた。
そして、完全に揃った骨髄のひとつひとつの造形の美しさに魅了された。それは63ものパーツに分かれているという。

ちなみに吊るされている頭部はレプリカである。
これは頭部の重さから、安全性を考慮した結果だという。そして本物の頭部は、下の展示ケースにて展示されていた。

間近で頭部を観察することができるのも醍醐味の一つである。

頭部の前には、個体を死に追いやったビニール製の太い縄も展示されていた。

シロナガスクジラ

画像 : 頭部とビニール縄の展示

この標本を通して、海洋保護の大切さを肌で感じることができる。

このような海洋生物を守り、保護することの大切さを後代にも伝えていく必要がある。

それは我々人類の未来を守ることにもつながるだろう。

台湾に旅行に行った際には、是非足を運んでみてほしい。

参考 :
台湾 国立海洋博物館
https://www.nmmba.gov.tw/Default.aspx

 

アバター

草の実堂編集部

投稿者の記事一覧

草の実学習塾、滝田吉一先生の弟子。
編集、校正、ライティングでは古代中国史専門。『史記』『戦国策』『正史三国志』『漢書』『資治通鑑』など古代中国の史料をもとに史実に沿った記事を執筆。

✅ 草の実堂の記事がデジタルボイスで聴けるようになりました!(随時更新中)

Audible で聴く
Youtube で聴く
Spotify で聴く
Amazon music で聴く

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事

  1. トランプ大統領こそが世界最大の地政学リスク? 〜高関税 中国34…
  2. 非日常が味わえる 「マレーシアのランカウイ島」
  3. 【IQ180の天才少女】母に高速道路に捨てられ、父からは売春強要…
  4. 頼清徳 台湾独立派の新総統「頼清徳」のスローガンと興味深い選挙活動
  5. 【マカオの象徴】 聖ポール天主堂跡の歴史的価値と魅力 「4つの構…
  6. 中国の人身売買について調べてみた 「誘拐されて眼球を売られる」
  7. 中国人の「どこでもトイレ」文化 【股の部分が空いている子供用ズボ…
  8. 【900円で買った胸像が4億6000万円に】 倉庫のドアストッ…

カテゴリー

新着記事

おすすめ記事

猫を愛した日本の偉人たち 「宇多天皇、一条天皇、島津義弘、伊達政宗~他」

猫というものは実にかわいい生き物だ。猫が好きな人間であれば、猫の前では身分など関係なく骨抜き…

織田家最古参の重臣・佐久間信盛があっけなく追放された理由 【どうする家康】

「どうする家康」で “いや~な感じ” が評判の立川談春さん演じる佐久間信盛(さくまのぶもり)。…

【ブギウギ】 敏腕マネージャー山下達夫のモデル・山内義富とは 「大金を横領して解雇」

「福来スズ子とその楽団」のマネージャー五木の後任として登場した山下達夫。山下のモデルは、戦後、笠…

【正気か狂気か】 コロセウムで剣闘士となったローマ皇帝 コンモドゥス

ローマのコロセウムは、暴君ネロの黄金宮跡に建設され、その壮大な構造の一部は現在でも目にすることができ…

ジュラ紀最強の肉食恐竜 アロサウルス

ジュラ紀の最後に現れた支配者超巨大恐竜の時代であるジュラ紀は、草食恐竜とともに肉食恐竜も…

アーカイブ

PAGE TOP