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【世界で最も奇妙な食事をした男】ミシェル・ロティート ~ガラスや飛行機まで食べる異食症

ミシェル・ロティート

画像:貴金属を食べるミシェル・ロティート public domain

人類の歴史には、常識を超えた能力を持つ人物が数多く存在する。驚異的な記憶力や超人的な体力や運動能力、さらには芸術的な才能を持つ人々がその例である。

しかし、今回紹介するミシェル・ロティート(Michel Lotito)は、それらとは一線を画す、特異な才能を持っていた。

彼は金属やガラス、プラスチックといった、通常は人間が口にしない物質を食べることで知られ、母国フランスでは「Monsieur Mangetout(ミスター・マンジェトゥー)」という異名で世間を賑わせた。

今回は、彼の驚くべき異常な食習慣、その背後にある医学的理由について探っていこう。

幼少期と異食症の発症

画像:異食性患者の胃の内容物 public domain

1950年6月、フランス南東部のイゼール県グルノーブルに生まれたミシェル・ロティートは、幼少期から他の子供たちとは違う性質を持っていた。

彼が異食症(Pica)と呼ばれる症候群を発症したのは、9歳のときであった。

この症候群は、通常の食べ物ではなく、紙、土、金属などの栄養価のない非食物を摂取したくなる症候群であり、小児と妊婦に多く見られることで知られている。ちなみに、語源の「Pica」とは鳥類のカササギから由来している。

そして、ロティートの場合は、特に金属やガラスといった硬くて消化不良を起こしそうな物に対しての食の興味が異常に強かった。

家族や友人たちは、彼の異常な食習慣に最初は驚き心配していたが、ロティートはこれらの物質を食べ続けても、体に害を及ぼすことなく生きていけるという驚異的な能力を見せつけたのである。

通常ならば体に重大な損傷を引き起こすような金属片やガラスを食べても、彼にとってはその行為は日常的なものに過ぎなかったのだ。

パフォーマーとしてのキャリア

ロティートが持つこの特異な能力は次第に注目を集め、彼は1966年からパフォーマーとしてのキャリアをスタートさせる。

当初は地元の人々の前で、その驚異的な食事ショーを披露していたが、やがて彼の名はフランス全土に知れ渡り、さらには国際的にも名を馳せることとなった。

彼のパフォーマンスの内容は至ってシンプルであった。「観客の前で金属やガラスを食べる」というものである。

しかしロティートは次第に、自転車、ショッピングカート、テレビ、さらにはベッドや冷蔵庫といった日用品をも口に運びだしたのである。観客はその光景に驚愕しつつも、その度胸と消化力に驚かされることとなった。

画像:ロティートが二年をかけて完食したセスナ150 public domain

彼のパフォーマンスの中で最も注目を集めたのは、1978年から1980年にかけて行われた、「セスナ150」という小型飛行機を食べたパフォーマンスである。

このセスナ150は、金属製の機体を含む実際の飛行機であり、ロティートは2年という時間をかけて、なんとその機体をすべて完食してしまったのである。

この偉業により、彼はただのパフォーマーではなく、1997年にギネス世界記録保持者として認定され、世界中を驚かせた。

またこの時、真鍮製の銘板が授与されたが、それすらも完食したという。

特異体質の秘密

ミシェル・ロティートの異常な食習慣は、ただの奇抜なパフォーマンスだけに留まらず、その体には医学的にも興味深い特徴が存在していた。

通常、金属やガラスのような物質を食べることは極めて危険な行為であり、内部損傷や中毒などのリスクが伴う。
しかし、ロティートはこれらの物質を長年にわたって摂取したが、健康を害することなく普通に生活していた。

その理由として、ロティートの胃や腸の粘膜が通常の人間よりも厚く、非常に強靭であったことが挙げられる。この特性により、鋭利なガラス片や金属片を体内に運んでも、損傷を引き起こす危険性が低かったと考えられている。

また、消化液も通常の人間よりかなり強力であり、金属などを効率的に分解する能力を持っていたのではないかとされている。

さらに、彼の食事方法は工夫されていた。
通常の食事のように大きな塊を一口で食べるのではなく、金属やガラスは微細に砕いて少しずつ摂取していたのだ。

また、異物を口にするときは大量の水を飲むようにしていた。これは、金属やガラスが体内で移動しやすくなるためだったという。

これらの食事方法を実践することにより、体にかかる負担を最小限に抑え、健康を維持していたのである。

異物を食べる際にはある程度コツが必要であることを、きちんと理解していたのだ。

ロティートの食生活と日常

画像:異物に噛みつくロティート public domain

ミシェル・ロティートは異物を食べることで注目されていたが、常に異物だけを食べて生活していたわけではなかった。

普通の食事も摂取しており、特にチョコレートやバターなどの柔らかく甘い食べ物が好物だったという。

ただし、生前の取材では「金属が胃にあるときはバナナとゆで卵だけは苦手で食べられないんだ。やわらかすぎて胸焼けする。」と語っている。

また、前述したように異物を食べる際には水を多く摂っていたが、同時に鉱油をワインのように飲みながら、一日にだいたい1kgほどを流し込んでいた。

9歳から47歳にかけてロティートは「金属を合計9トン近くを食べきった」という推計がある。

ロティートが食べた物

ロティートが9歳から47歳にかけて食べた物を、確認できる範囲で羅列すると以下である。

革、ゴム製品なども細かくしてから食べているので、食べた異物の正確な数の記録は不明である。

エッフェル塔の欠片1つ。オートバイ1台?。 カミソリの刃大量。 ガラスコップ大量。 コンピュータ1台。 シャンデリア6基。 ショッピング・カート15台。 スキー板(一人分)1台。 セスナ-150型 1機。 ネジやボルト大量。 ブラウン管テレビ7台。 ベッド2台。 棺桶(木製、持ち手付き)1棺。 金属類(合計)9t。 鉱油大量。 自転車18台以上。 真鍮製の銘板1枚。 鉄の鎖0.5km電球大量。

なお、これらを食べたことについて、ロティートは以下のようにコメントしている。

「野菜のサラダと共にネジや電球を食べることは、あなたたちがローストビーフを食べるようなものです。」

自転車の部品ではチェーンが一番美味しかったとのことである。

その後のロティート

画像:晩年のロティート public domain

こうしてすっかり有名人になったロティートは、その後もその奇妙な習慣を続けたが、「何かを食べて病気にかかったことはない」と語っており、その頑健さは相変わらずであった。

来日経験もあり、そのときは自転車を1台全て完食している。

そんなロティートであったが、晩年の10年間は公の場から身を引き、異食もすっかりやめてしまったという。

そして、2007年6月25日、彼は消化器の疾病や大きな持病を特に抱えることもなく、57歳でこの世を去った。
異物摂取が直接的な死因ではなく、自然死だったという。彼の遺体は、生まれ故郷であるグルノーブルに埋葬された。

ロティートの死後も、異食性についての研究は続けられているが、未だ完全な解明はなされていない。

参考:
The man who ate metal: Monsieur Mangetout’s strange diet : Guinness World Records
How to Eat an Airplane (Bad Idea Book Club) : Peter Pearson(著)HarperCollins

 

figaro

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