近年、台湾海峡を巡る緊張が高まっている。特に、2027年が台湾有事の潜在的リスクの年として注目されている。
この年が注目される背景には、中国の習近平国家主席の政治的動機と国際情勢の複雑な絡みが存在する。
本稿では、習近平氏の第3期が終わる2027年が、なぜ台湾有事の危険なタイミングとされるのか、その背景とリスクを考察する。
2027年と習近平の政治的レガシー

画像 : 習近平氏 public domain
習近平国家主席は、2012年に第1期の指導者としての地位を確立し、2022年に異例の3期目の続投を果たした。
中共の指導者としては異例の長期政権を築く中、習氏は自らの歴史的レガシーを強く意識しているとされる。
2027年は、習氏の第3期が終了する年であり、この時期に「国家統一」という大義を達成することで、自身の政治的功績を不動のものにしようとする動機が指摘されている。
台湾の「統一」は、中国共産党にとって建国以来の悲願である。
習氏は、毛沢東や鄧小平といった歴史的指導者に比肩する存在として自らを位置づけたいとの思惑があるとされ、台湾の併合はそれを象徴する偉業となる可能性がある。
2027年は、習氏が権力を握る最終段階として、歴史に名を刻むための決定的なタイミングとみなされている。このため、軍事行動を含む強硬な手段が選択されるリスクが高まると専門家は警告する。
2027年が危険視されるもう一つの理由は、中国の軍事力の増強と国際環境の不安定さである。
中国人民解放軍は近年、急速な近代化を遂げており、海軍力やミサイル戦力は米国に匹敵するレベルに近づいている。
特に、台湾海峡での上陸作戦能力や、空母を中心とした遠洋戦力の強化が顕著である。
2027年頃には、中国は台湾侵攻に必要な軍事インフラをほぼ完成させるとの分析もある。
一方、国際情勢は不安定さを増している。
米中対立の激化、ウクライナ戦争や中東情勢の混迷により、米国の軍事資源が分散する可能性がある。米国は台湾防衛にコミットしているが、同盟国との協調や資源配分の問題から、即応能力が低下するシナリオが懸念される。
中国がこの「隙」を突く可能性は否定できない。
経済的、国内的要因

画像 : 中国共産党全国代表大会の本部 public domain
中国国内の経済状況も、2027年のリスクを高める要因である。
近年、中国経済は不動産バブルの崩壊や若年層の失業率上昇など、構造的問題に直面している。こうした国内の不満をそらすため、習氏は愛国主義を煽る手段として台湾問題を利用する可能性がある。
ナショナリズムの高揚は、政権の求心力を維持する強力なツールとなり得る。
また、2027年は中共の重要会議である第21回党大会の開催年でもある。
この会議で次期指導体制が議論されるが、習氏が実質的な影響力を維持するためには、圧倒的な成果を示す必要があるだろう。
台湾問題での「勝利」は、党内での求心力を高め、長期支配の正当性を強化する材料となる。
国際社会への影響とリスク
台湾有事が現実となれば、その影響は計り知れない。
台湾は世界の半導体産業の中心地であり、TSMCなどの企業がグローバルサプライチェーンに不可欠な役割を果たしている。軍事衝突が起きれば、半導体供給網が寸断され、世界経済は深刻な打撃を受ける。
また、米中間の直接衝突のリスクも高く、第三次世界大戦の引き金となる可能性すら指摘されている。
日本にとっても、台湾有事は安全保障上の重大な脅威である。地理的に台湾に近く、在日米軍基地が攻撃対象となる可能性が高い。
さらに、中国の海洋進出が加速すれば、東シナ海での日本のシーレーンも脅かされる。
日米同盟の枠組みの中で、日本が巻き込まれるリスクは極めて高いと言わざるを得ない。
抑止と外交の重要性

画像 : 台湾 台北市 イメージ
こうした危機を回避するには、国際社会の結束が不可欠である。
米国を中心とする同盟国は、軍事的な抑止力を強化しつつ、外交的な圧力を通じて中国の冒険主義を抑制する必要がある。
経済制裁や技術輸出規制の強化も、効果的な手段となり得る。
一方、中国国内の安定を促すための対話も重要である。
習政権が国内問題を理由に軍事行動に踏み切る動機を軽減するため、国際社会は経済協力や人的交流を通じて中国との関係を維持すべきである。
2027年が台湾有事の危険なタイミングとされるのは、習近平氏が政治的レガシーを求めていること、中国の軍事力の増強、国際情勢の不安定さ、そして国内経済の課題が複雑に絡み合っているためだ。
このシナリオは単なる憶測ではなく、現実的なリスクとして国際社会が直視すべき問題といえる。
台湾海峡の平和を維持するには、抑止力の強化と同時に、粘り強い外交努力も欠かせない。
2027年が歴史の転換点とならないよう、国際社会は今こそ行動を起こす時に来ている。
文 / エックスレバン 校正 / 草の実堂編集部
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