あなたはこういう人を知っていますか? 例えば、見たものを全て記憶する瞬間記憶能力。
2009年に日本テレビ系列で放送された菅野美穂主演のドラマ「キイナ~不可能犯罪捜査官~」では菅野演じるキイナが、事件解決のために大量の分厚い本を読み漁り、その全てのページを記憶していた。
映画「レインマン」でも並外れた暗記力と計算力を持った主人公が印象的だ。
もし実際にそんな人物がいれば誰もが驚くことだろうが、所詮はドラマの中のフィクションの存在…ではない。
瞬間記憶のような類稀な、奇人とも偉人とも、奇才とも天才ともとれる能力をもつ人物は実際に存在するのだ。
サヴァン症候群とは
見た景色を一瞬で記憶して描く、スティーブンウィルシャー 出典サヴァン症候群とは、一見知的や発達に問題がありどちらかというと頼りなく抜けている印象がある人物が、どこか特定のごく一部において非常に優れた能力を発揮する者の症状を指している。
サヴァン症候群の能力は非常に様々で、また原因も特定されていない。
例えば、前述の通り「1回読めばそれら全てを暗記する」ことや「見たものをそのままイラストとして描ける」「一度聞いた音楽を最後まで間違わずにひける」などがある。
サヴァン症候群患者としてわかっていることは「自閉症患者の10人に1人の割合」「7人いれば6人は男性の割合」「サヴァン症候群の半数は自閉症患者」であることがわかっている。
さらに、「脳に損傷を受け後天的にサヴァン症候群の症状がでた」ケースもあり、脳の組織が変形や再構築されたことが起因となりサヴァンを発症したのではという見立てがある。
また、知的や発達障碍がなく通常の知的水準で社会性をもちながらサヴァン症候群であるケースも存在している。
サヴァン症候群の一例
地図を瞬時に記憶する能力
サヴァン症候群と診断された少年は5歳の頃、まだ読み書きも完璧にはできず話す言葉はむしろ遅れている方だった。
彼は「ママ、ご飯」「ワンワン いる」などの言葉ははっきり文脈として話せないこともある一方、世界地図の記憶は完璧だった。ある日、何気なく母親が渡した一枚の母国の地図を、彼は瞬時に記憶した。そして指をさし「A(州の名前)」「B(川の名前)」などすらすら読み上げた。母親は、興味があるものは記憶が早いのかと思っただけだったが、本人に他のもっと大きな地図を渡してもすらすらと読み上げ、見ているとそれは読んでいるのではなく位置を記憶しており、穴埋め形式にしても一つも間違えることなく完璧に正解できた。
しかし似たようなもので列車の路線図などを渡しても全く覚えることはできなかった。彼はあくまで、地図とそこに書かれている地形や文字を記憶するのだ。
カレンダーの日付を8000年以上言い当てられる能力
○月○日が何曜日かと聞かれて、すぐに答えることができる人はどのくらい存在するだろうか。
あるサヴァン症候群の少女は、8000年間分のカレンダーで一問も間違えることなく全ての日付・曜日を言い当てることができた。さらに少女は6桁の立方根の問題を数秒以内で解くことができた。
物体の寸法が見ただけでわかる能力
ある少女は見ただけで物体の寸法を正確に把握した。例えば、あの建物は○mm歪んでいる、あの時計の幅は○○cm、と見ただけで数値が頭の中に浮かんでくる。さらに時計がなくても今何時何分であるかが正確にわかり、それは例え目を閉じていても、暗闇の部屋の中にいても問題ない。まるで頭の中でカチカチと正確な時計が回り、まるで目の中に一寸のズレもない正確なものさしがあるかのように、わかるのである。
嗅覚や聴覚、味覚が鋭い能力
ある双子は嗅覚が強い。アニメ鬼滅の刃では非常に嗅覚のするどい少年が主人公であるが、匂いだけで誰がいるのかがわかり、匂いだけで誰が履いたスリッパかを嗅ぎ分けた。同時に、聴覚や味覚が異常にするどいサヴァンも存在する。
機械の構造がわかる能力
少年の知的能力は平均以下であり、発達にも問題があった。言語も社会的コミュニケーション能力もティーンエイジャーとは思えないほどに低く、まるで7,8歳の子どものようであるのに、彼は機械のこととなると天才だった。もちろん勉強などしたこともないが、彼は見ただけで時計や、テレビや、ラジオなど複雑な構造をする機械を直すことができた。知的能力においてのテストは10歳の子どもより下であったのに、機械に関するテストは大学生でも解けないレベルの問題で上位1%にはいる成績をおさめた。
サヴァン症候群と呼ばれる人達
歴史上、サヴァン症候群ではないかと噂される人物は多く存在する。
例えば、いまだに謎が多く残るモナリザを書いた画家「レオナルド・ダヴィンチ」。数学者として多大な功績を残した「アイザック・ニュートン」。相対性理論を提唱しながら数字や記号が苦手という「アルバート・アインシュタイン」。問題児でありながら偉大な発明を残し続けた発明家「トーマス・エジソン」
…などがそうではないかと噂されている。
最後に
サヴァン症候群は実在する。
ある一種の事において特異な才能を持つ人物は時に変人と疎まれ、時に脅威を覚える。また知的や発達に問題があれば正攻法で関わろうとする人も少ない。「真面目に話している自分がバカみたいだ」と思うのだ。
しかし、知的障碍者や発達障碍者は決して他者をバカにしているわけでもなく、また他者からバカにされていい存在でもない。対等に扱うべき人間であり、サヴァンの才能は認めて生かすべき能力である。
その能力に最も気づきやすいのは、彼ら・彼女らの最も近くにいる家族が多い。もしわが子にそのような能力があれば、ぜひその能力を伸ばして欲しいと思う。
世紀の天才は、いつだってそうして産まれて来たのだ。
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