宗教

【神社の創建チャレンジ】 登記申請に初挑戦!地目変更(山林→境内地)ってどうやるの?

私事で恐縮ながら、個人で神社を所有しております。厳密には、筆者名義の土地に神社を創建しました。

よくある家の片隅にお稲荷様を祀ったようなパターンではなく、神社専用の土地として購入したものです。

さて、そんな神社の境内は、登記上の地目が山林(さんりん)となっています。つまり山の中に建っている扱いです(実際には高地だけど住宅街の中)。

山の中(地目は山林)に創建された神社。果たして地目を「境内地」に変更登記できるのか?筆者撮影

別にこのままでも神事や参拝に支障はないのですが、ここが神社の土地であることを法的にも裏付けたいと思いつきました。

そこで今回は、地目を山林から境内地(けいだいち)へと変更する登記申請に挑戦してみたのです。

果たして、我らが神社の境内は、山林から境内地に地目変更できるのでしょうか?

地目とは何?

地目とは簡単に言うと「土地の性質」を法律(不動産登記法、不動産登記規則)で決めたものです。

不動産登記法 第2条1項
(定義)第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
(中略)
十八 地目 土地の用途による分類であって、第三十四条第二項の法務省令で定めるものをいう。
(後略)

不動産登記規則 第99条
(地目)
第九十九条 地目は、土地の主な用途により、田、畑、宅地、学校用地、鉄道用地、塩田、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野、墓地、境内地、運河用地、水道用地、用悪水路、ため池、堤、井溝、保安林、公衆用道路、公園及び雑種地に区分して定めるものとする。

地目は全部で23種類。その中に「境内地」を見つけたのでした。

更に不動産登記事務取扱手続準則の第68条に、こんな条文を発見します。

境内地(地目)とは何?

不動産登記事務取扱手続準則 第68条
第68条 次の各号に掲げる地目は,当該各号に定める土地について定めるものとする。
この場合には,土地の現況及び利用目的に重点を置き,部分的にわずかな差異の存するときでも,土地全体としての状況を観察して定めるものとする。
(中略)
十三 境内地 境内に属する土地であって,宗教法人法(昭和26年法律第126号)第3条第2号及び第3号に掲げる土地(宗教法人の所有に属しないものを含む。

……これらを総合すると、つまり「土地が宗教法人の所有でなくても、実態として神社の土地として使われていれば山林から境内地への地目変更登記が可能」と判断できるでしょう(解釈は微妙ですが、とりあえずやってみて、当局の出方を見ようと思います)。

さっそく法務局へ。筆者撮影

そうと決まれば、さっそく法務局へ走ったのでした(実際には走ってません)。

法務局で地目変更の登記申請

法務局と言っても、どこでも受け付けてくれる訳ではありません。

地目変更登記を申請する土地を管轄する法務局を調べて、そちらへ行きましょう。

今回は神奈川県鎌倉市なので、管轄は横浜地方法務局湘南支所(最寄り駅はJR辻堂駅)となります。

地目変更の流れ

地目変更登記申請書。左は筆者が記入、右は記入例。

地目変更の流れは、ざっと以下の通りでした。

  1. 申請書類の提出
  2. 約3週間後に登記の確認
  3. 登記証明書類の受け取り

スムーズに行けば、1ヶ月しないで手続きが完了するのですね。

地目変更の費用

地目変更そのものは、手数料などはかかりません。

ただし、現実的にかかる費用もあるのでまとめておきましょう。

  1. 登記事項証明書の取得費用
  2. 法務局までの交通費

登記事項証明書は地目変更する土地の正確な地番や面積、不動産番号などを申請書に記入するために必要です。

元から持っているなら、それを使いましょう(最新情報であるか要確認)。

登記事項証明書は1通300円、交通費は場所によりますが往復で数百円でした。

なので、今回の地目変更にかかる費用は0円+諸経費1,000円弱といったところです。

地目変更の必要書類など

法務局でもらった引替書類。筆者撮影

地目変更に必要な書類は登記申請書1枚だけです。

ただし、農地(田、畑、牧場)から宅地に地目変更する場合については農地法の規制を受けるため、農業委員会等の許可が必要となります。

なので、許可が出ている証明書類を添付する必要があるので、農地から宅地に地目変更する際は覚えておきましょう。

今回は山林から境内地なので、登記申請書だけで大丈夫でした。

あと、登記申請書にはハンコを押す場所があります。

認印でもいいのですが、登記証明書など引取りの際に同じハンコが必要になるので、必ず持参しましょう。

法務局から連絡があり……

さぁ、これで手続き完了。後は3週間後をお楽しみに……と待っていたら、法務局から連絡がありました。

曰く「土地は個人の私有地でもよいが、ウワモノ(社殿や鳥居など)が宗教法人の所有物でなければ、地目変更の登記は認めない」とのこと。

加えて「宗教法人法第3条の解釈については、神奈川県の文書課宗教法人グループに問い合わせなさい」とのことでした。

神奈川県の回答は

横浜三塔「キングの塔」を擁する神奈川県庁。筆者撮影

という訳で、さっそく神奈川県庁へ。

この文書課宗教法人グループは、キングの塔を要する旧庁舎1階にあります。

(1度旧庁舎から新庁舎へ向かい、引き返したのはここだけの話)

問い合せた結果、やはりおなじ回答でした。

要するに神社の土地について、地目を境内地に変更登記するためには、宗教法人格が必要ということです。

一応ながら、宗教法人法第3条の条文も載せておきます。

宗教法人法第3条(境内建物及び境内地の定義)
第三条 この法律において「境内建物」とは、第一号に掲げるような宗教法人の前条に規定する目的のために必要な当該宗教法人に固有の建物及び工作物をいい、「境内地」とは、第二号から第七号までに掲げるような宗教法人の同条に規定する目的のために必要な当該宗教法人に固有の土地をいう。
一 本殿、拝殿、本堂、会堂、僧堂、僧院、信者修行所、社務所、庫裏、教職舎、宗務庁、教務院、教団事務所その他宗教法人の前条に規定する目的のために供される建物及び工作物(附属の建物及び工作物を含む。)
二 前号に掲げる建物又は工作物が存する一画の土地(立木竹その他建物及び工作物以外の定着物を含む。以下この条において同じ。)
三 参道として用いられる土地
四 宗教上の儀式行事を行うために用いられる土地(神せん田、仏供田、修道耕牧地等を含む。)
五 庭園、山林その他尊厳又は風致を保持するために用いられる土地
六 歴史、古記等によつて密接な縁故がある土地
七 前各号に掲げる建物、工作物又は土地の災害を防止するために用いられる土地

今回のまとめ・俺たちの地目変更はこれからだ!

地目変更は義務ではないし、境内地になったところで税制上の優遇もないが、気分的には実現したい(イメージ)

【土地を神社の境内地として地目変更するには】

  • 土地は個人の私有地でもOK!
  • ただし建物等が宗教法人の所有≒土地が宗教行為に使われていることを証明できる状態でないと、登記申請が認められない
  • 地目変更申請には、手数料がかからない
  • 地目変更申請には、申請時と書類受取時にハンコ(認め印OK)が必要

……ということでした。個人や任意団体で建てた社殿や鳥居では、宗教行為として認められないということです。

大事なのは信仰心ではないのか!とは思うものの、それを認めるといかがわしい人たちが悪用しかねないのでしょう。

※ちなみに、固定資産税や都市計画税の金額は、地目によって変わらないそうです。要はこちらの自己満足もとい気分的なものですね。

ちなみに、今まで宗教法人の申請窓口は文化庁だと思っていました。

神奈川県文書課宗教法人グループ。宗教法人化を目指す時は、ご教示お願いいたします。筆者撮影

しかし、単一の都道府県内で活動する宗教法人については、都道府県が窓口なのだそうです(宗教法人法第5条)。

宗教法人法
(所轄庁)
第五条 宗教法人の所轄庁は、その主たる事務所の所在地を管轄する都道府県知事とする。
2 次に掲げる宗教法人にあつては、その所轄庁は、前項の規定にかかわらず、文部科学大臣とする。
一 他の都道府県内に境内建物を備える宗教法人
二 前号に掲げる宗教法人以外の宗教法人であつて同号に掲げる宗教法人を包括するもの
三 前二号に掲げるもののほか、他の都道府県内にある宗教法人を包括する宗教法人

今後、我らの神社が宗教法人化するかは検討中。山林から境内地への地目変更についても、宗教法人化の後に考えましょう。

 

角田晶生(つのだ あきお)

角田晶生(つのだ あきお)

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フリーライター。日本の歴史文化をメインに、時代の行間に血を通わせる文章を心がけております。(ほか政治経済・安全保障・人材育成など)※お仕事相談は tsunodaakio☆gmail.com ☆→@

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