私は、受刑生活合計15年、刑務所回数6回目のまだまだ刑務所的には新参者です。
これで新参というと驚かれるかもしれませんが、刑務所には本当に様々な人がいて、実際に入った人にしかわからないことがたくさんあります。
今回は私の体験の中から刑務所について知っていることを色々とご紹介したいと思います。
食い逃げ常習犯の人
すごい人になると、「刑務所回数32回!ほとんど娑婆に居たことはない!娑婆での生活する術がない」と言う人がいました。
その人は1回が1年の短期懲役としても32年、罪名はほとんどが食い逃げ(詐欺罪)です。
食い逃げは詐欺罪にも拘わらず、以外にも短期刑なのです。刑務所で稼いだ作業報賞金を使い果たし終わると、少し高級な店に行っておいしい料理と酒をたらふく頂き、年に一度の大盤振る舞い、散々飲み食いの挙句、「最後に警察を呼んでくれ!」と居直る確信犯です。短期の刑なので報奨金も数千円しか持っていません。
2〜3日で使い果たし娑婆に居る期間は長くて3〜4日それを30回以上繰り返す、そこまでいけば本物ですね。
刑務所での受刑者のランク
刑務所の中では受刑者は、なかなか自分の罪名を言いたがりません。
罪名的に大きい顔ができるのは覚せ○剤事犯の受刑者ですね、組織とのつながりもあり、そのネットワークは全国的だからでしょう。
どこの刑務所へ行っても必ず知った顔に出会います。
その次に大きい顔をしているのが、強盗、詐欺です。そしてベテラン再犯者になると懲役年数でそれらの事件の大きさがバレますので短期の受刑者はなかなか言いません。
強盗で3〜4年の刑で来る人の中にはコンビニで万引きをして、店員と少しでも体が触れたり声を出せば、それで強盗と認定されますから同じ強盗でも色々ランクがあります。大物強盗だと、6〜10年の刑期を持って入ります。
詐欺も3〜4年で来ている人は、どうせ特殊詐欺の現金の受け子だろうとしか思われません。詐欺も大物になると8年以上、私が務めた刑務所は再犯の短期なので最高10年までの刑期の人だけなので大物と言われる人は少なかったです。
次は、泥棒ですね。泥棒も色々いますが、4年以上の人達は本物が多いです。いわゆる常習窃盗が罪名につく人達です。スリと呼ばれる人たちは、最近めったに見かけなくなりました、20年程前にはたまに見かけたのですが、スリは親方の下での修業が長いので中々今の若い人では就いていけないのだと思います。
彼らは一人仕事が多いためか、職人気質を思わせる因業な人達が多いですね、自分の技と勘だけで生きてきたので、なかなか皆となじまない人も多いようです。
又、彼らには覚せ○剤事犯のようなネットワークもありません。彼ら独自の技と活動区域はめったに人には言いません。
人が居ない留守に入る「空き巣」と、人が家に居ないと入れない「のび」と言われている人がいます、「のび」と言われるような人になると一流の泥棒です。
「のび」さん言わく、「人が居るから金があるんだ!最低でも財布は必ずあるから」との見解を頂きました。
一番ランクの低い「ピンク系」
刑務所の中で一番下に見られている罪名は、彼らも絶対に明かさない婦女子を相手にした犯罪です、いわゆる性犯罪です。
刑務所的には「ピンク系」と呼ばれています、彼らは性犯罪更生プログラムを実施している刑務所に収容されます。全国に何か所あるのか知りませんが、私が知っている限りでは、北海道、東北、関東で1か所〜2か所あるのは知っています。
そのなかでも完璧に入所時に「ピンク系」と「その他の受刑者」を分けて、「ピンク系」だけを他の受刑者と顔を合わせることなく出所させる刑務所と、入所して一旦は各工場に配役させて、そこから性犯罪の更生プログラムを約3か月受け又、元工場に戻って来るという刑務所があります。
私が務めた刑務所は後者の施設で、ある時期が来ると突然工場から消え、3か月すると戻って来る人がいました。
最初から「私はピンク系」です、と言っておけば何の問題にはなりません。
本人にしてみれば言いずらく、他の罪名を騙っていたので、虐められたりぶん殴られたり最後には、工場に居られなくなり、作業拒否で朝部屋から出て来ませんでした。
刑務所の虐めはひどいものです、少しのウソがばれてもひどい目にあいます。
特に共同室(雑居房)で虐めにあうと、工場も一緒、部屋も一緒、一年365日一緒なので気の休まる事なく、いずれ作業拒否で出て行くことになります。
ご飯に下剤を入れられたり、夕飯のおかずを取られたり、人糞を食べさせたり、上げればきりがないほどの虐めにあいます。
作業拒否
先ほどから「作業拒否」という言葉が出てきますが、刑務所内ではこれは立派な違反行為です。
刑務所の中にも刑務所の様な所があります。
社会で罪を犯した人と同じように、罪を犯した時点から隔離され取り調べを受けます。
取り調べは処遇部門の警備隊が調書を取ります。警備隊は、刑務所内での警察のような役割を担っています。
調書が取り終わると1〜2週間で裁判(懲罰審査会)があり、次の日の9時頃判決(言い渡し)がありその日の午後から懲罰に入ります。
作業拒否の場合おおよそ7日〜15日で、特別な部屋からは私物などは全て持ち出され、食事以外は一日中ひたすら座ります、通路側を向きモモに両手を置き、何しろ座って何もしないことが罰なのです。
懲罰中は手紙の発受信、物品購入、テレビ視聴、入浴の規制等があります。
懲罰終了次の日、今まで居た工場以外の工場に配役となり一から出直しとなります。
猛者になると、「この工場つまらない!」と言っては工場を転々と回っている人もいます。
工場三原則
刑務所は理不尽な所です、社会で通る理屈も通りません。
工場三原則と言うのが有ります、わき見、口談、離席と厳しい規則があり、「少しでもわき見をする」「少しでも隣の人と話をする」「少しでも席を離れる」と懲罰の対象です。
警備隊長の毎日の工場巡視の際は工場担当職員でさえピリピリし、威怖堂々と練り歩く姿に恐れ戦いています。
なぜかというと、その少しの間の練り歩きで三限則を見逃すことなく上げる(逮捕)からです。
そして、工場担当職員もあとからこっ酷く、どなられ怒られるそうです。
懲罰に行ってしまうと仮釈放が遠のいてしまいます、皆1日でも早く刑務所を出たいがためにそれを我慢するのです。
まだ書けることは多くありますので、また次の機会にご紹介できたらと思います。
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