昨今、東アジアの地政学リスクがかつてないほど高まっている。
その中心に位置するのが、ハイテク産業の「ビタミン」とも称されるレアアース(希土類)を巡る攻防だ。
中国が再び、日本に対してこの戦略物資を武器として突きつける可能性が現実味を帯びている。
かつて2010年、尖閣諸島を巡る日中対立の中で、中国から日本へのレアアースの出荷が停滞し、日本の製造業に大きな衝撃を与えた。
今回起きているのも、形式上の「禁輸」ではないにせよ、許可審査の厳格化や企業側の取引回避を通じて供給が細るという、より洗練された経済的圧力の再来である。
ハイテク産業の急所と供給網の脆弱性

画像 : レアアース元素の1つジスプロシウムのチップ Materialscientist CC BY-SA 3.0
レアアースは、電気自動車(EV)のモーター、風力発電機、さらにはミサイルの誘導システムに至るまで、現代社会を支える最先端技術に欠かせない。
中国は採掘量だけでなく、レアアースを工業製品に使える形にする分離・精製工程で特に大きなシェアを占めている。
この圧倒的なシェアが「構造的な武器」となっている。
日本政府や企業は、2010年の尖閣諸島沖での衝突事件を受けた輸出停滞以降、調達先の多角化を図ってきた。
しかし、依然として分離・精製工程における中国依存度は高く、ひとたび蛇口を締められれば、日本の製造業が受けるダメージは計り知れない。
特に、脱炭素社会への移行を急ぐ現在の経済構造において、レアアースの供給停止は国家戦略そのものを根底から揺るがす事態を招く。
資源独占への執着と党の統制

画像 : 世界のレアアース生産量分布 public domain
中国による経済的威圧は、単なる資源の出し惜しみにとどまらない。
そこには、国家全体の資源を共産党の統制下に置き、外交上のレバレッジとして最大限に活用するという明確な意思が働いている。
中国は近年、「輸出管理法」や「データ安全法」を相次いで施行し、自国の利益を害すると判断した外国企業や国家に対し、法的に制裁を加える準備を整えている。
これは市場原理に基づいた自由貿易への挑戦であり、経済合理性よりも政治的な優位性を優先させる「地経学」の論理である。
中国政府による厳格な統制は、民間企業をも国家の戦略ツールとして組み込んでおり、日本の経済界が期待する「政経分離」の幻想はもはや通用しない段階に来ている。
経済安保の強化と多国間連携の模索
こうした劇的な攻撃の増加に対し、日本はどう立ち向かうべきか。
鍵となるのは、特定の国に依存しない「サプライチェーンの強靭化」だ。

画像 : アジアを中心とした貿易フロー(2019年) サプライチェーンの全体像 出典: 経済産業省HP PDL1.0
オーストラリアや米国、そしてベトナムといった友好国との連携を深め、採掘から精錬までを一貫して行う枠組みを早急に構築しなければならない。
また、代替素材の開発やリサイクル技術の向上も急務である。
中国が「資源」を武器にするならば、日本は「技術」でその無効化を図るべきだろう。
経済的威圧が日常化する「グレーゾーン」の時代において、我々は自由な経済活動を守るための不退転の覚悟を問われている。
参考 :
『レアメタル資源確保の現状と課題』参議院調査資料
『レアーアース対策』経済産業省 他
文 / エックスレバン 校正 / 草の実堂編集部























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