ここしばらく謎だったのが、外国人が経営するインドカレー店が増えてきたことだ。
最初は都内の駅から離れた場所にこっそりオープンしていたが、徐々に郊外でも増え始め、今では地方の駅の近くにも堂々と店を構えている。
しかも、近い立地に複数オープンするケースも増え、完全に需要を上回っている。当然のことながら、早々に店をたたむことも多かったので不思議だった。それでもなぜ、インドカレー店のオープンラッシュは止まらないのだろうか?
インドカレー
「インドにカレーという料理はない」というのは有名な話だが、そもそも旧支配国のイギリスが、一部のインド料理をカレーという名前でイギリス料理に取り入れたことにより、世界中に普及したのも事実である。
そのため、今ではインド人自身も他国の人間に分かりやすく説明するために「カレー」という言葉を使うことが多い。インド人にとっても「カレー(カリー)」は外来語だった。
また、宗教的な理由もあり、日本のように肉入りのカレーというのもあまりない。あっても地域によって肉の種類は限られてしまう。
ヒンドゥー教や仏教は不殺生の教えがあるので菜食主義の者が多い。食べるとしても豚肉か鶏肉に限られる。逆にイスラム教徒は豚を食べられないので、鶏肉、羊肉(マトン)、魚介類などが主になる。
需要の関係なのか、比較的値段が安いのが山羊肉で、鶏肉は比較的値段が高い。そのため、豆料理のほうが充実しているといえる。豆のカレーが多いのもそのためだ。
また、それらのインド料理は周辺国にも影響を与えている。ネパール、チベット、スリランカ、バングラディシュ、パキスタンなどでも「カレー的」な料理は広まっており、カレー=インドという構図は存在しない。南アジアにおいてインド料理は庶民の味となっているのだ。
なぜインドカレー?
それにしても、日本では本場のインドカレーに馴染みがなかった。
今でこそ食べたことがあるという人も多いだろうが、すでに日本のカレー業界は「CoCo壱番屋」のように「日本のカレー」がシェアを独占していたのだ。そこになぜインドカレーで勝負をしようとしたのだろうか?
これは調べてみると簡単な理由だった。
何よりも出店コストの安さがあった。
ラーメン店などは新規出店で2000万~3000万円程度かかることもざらだが、インドカレー店は1000万円程度、居抜き物件(前の借主が設備をそのままに退去した物件)で安く上げれば数百万円程度でも出店できるという。
また、立地的も必ず1階である必要はない。インドカレー店ならば賃料の安い雑居ビルの2階以上や路地裏などでも十分に成立する。また、特殊な調理器具が少なく済むのも大きい。やろうと思えば家庭用の機材でも事足りるため、改装費用も抑えることができるわけだ。
さらにナンに使う小麦粉など、食材の原価率も低く、家庭料理のために専門のコックを雇う必要もない。料理そのものも、味が濃くて脂っこいので料理の腕が味にあまり影響しない。
このような理由がインドカレー店の過当競争につながったようだ。
エスニック料理の普及がインドカレーを後押し
※インド周辺の地図
日本のインドカレー店のほとんどが、インド人ではない南アジア人が営業、労働しているという話も有名である。
「本場インドカレー店」といいながら、よく見ると「インド・ネパールカレー」となっていたり、「インド・スリランカカレー」のように経営者の出身国の料理も合わせて提供する店が多い。
逆にインドではカースト制度により貧富の差が激しいので、来日できるインド人はIT企業などに勤務する一部のエリートなどに限られる。そのため、インド周辺の国々の人は、来日しても知名度の高いインドカレーを店の看板に掲げるわけだ。
自国の料理と極端な違いがない上に、男性でも料理できる家庭料理ばかりなので単身で来日することも出来る。その中でも特に多いのがネパール人と言われている。
インド人以外のオーナーが、インドカレー店を始めるには二つの理由があった。
まずは、日本人の味への親しみ。
最近のエスニック料理ブームによって、日本人向けの味付けをしない「本場」の味が好まれるようになった。これはインド料理も同じで、多くのスパイスを調合したものでも「いい匂い」と感じるファンが増えてきている。独特の香辛料の香りや辛さによって避けられてきたインドカレーも、今ではしっかりと見直されているわけだ。
また、インドカレーといってもすべてが辛いわけではなく、逆に日本の辛口カレーのような辛さのものを見つけるほうが難しい。インドカレー店でもメニューにどのカレーが辛いのかが書かれており、すぐわかるようになっている。
また、ヨガが流行ったことなどから、ヨガやインド健康法を習っている人も、健康面からインドの本場カレーのファンになる確率は高くなるという。
これが「表」の理由である。
次のページへ
1
2
この記事へのコメントはありません。