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インドカレー店がなぜ多いのか調べてみた【法務省も関与していた!?】

ジャパニーズ・ドリーム

ネパールなどのインド人以外の経営によるインドカレー店が多いもうひとつの理由が、ブローカーの働きである。

日本に移住して金を稼ぎたいが、問題は就労ビザ。これを取得するのはかなり難しいが、日本で働くのなら料理人としてビザを取得するのが現実的だという。そこでブローカーが仲介料を取る代わりに、必要書類を揃え、来日の手配やカレー店への就職を可能にしたのである。

仲介料は100万~200万円程だというが、最近は日本が不景気だということもあり、100万円を下回る場合も多い。しかし、ネパールでは100万円でも非常に大きな金額だ。それでも必至に金をかき集めて来日してくる。なかには親戚中から金を借りるケースもあった。しかし、この仕組みで確実に儲かるのはブローカーだけだ。多少単価を下げようが、10人、20人の斡旋をするとかなりの金額になる。

一方で、来日した外国人は過当競争に晒され、慣れない言葉、慣れない法律などに囲まれながら利益を出さなければならない。

これがインド人以外のオーナーが、インドカレー店を始める「」の理由だった。

タンドール・ブローカー


※タンドール窯

キッチンにあるのであまり目にすることはないが、ナンなどを初めとするパン類や、タンドリーチキンなど肉料理の調理に使われるのが「タンドール窯」である。円筒形で粘土製の壺釜型オーブンのことだ。タンドールの重さは1台約200kgとかなり重い。店舗への搬入には小型のクレーンが必要なほどだ。

しかし、このタンドールは便利なのに加え、大きなナンを焼くのに適している。

日本のインドカレー屋でよく見る巨大なナンは「おかわり自由」という店がほとんどだが、普通はカレーと巨大なナン一枚だけで腹一杯になってしまう。原価率の安いナンで腹を満たしてもらったほうが店としてもありがたい。しかも、大きなナンがメニューにあると「見栄えがいい」という。ナンもコストの安さにつながっていた。

ちなみにインドでは、北部はナンなどのパン食が多く、南部は米が主食になることが多い。しかし、本場でも日本のインドカレー店で出てくるような巨大なナンはほとんど食べない。

パキスタンやイランなどでは食べられることもあるようだが、インドでパンと言えば薄焼きのチャパティがほとんどなのだ。


※チャパティ

しかし、ここでも別のブローカーが介入していた。

それが「タンドール・ブローカー」である。

法人営業の飲食店に限られるが、タンドールを店舗に導入すると1台につき4人まで法務局からネパール人料理人の就労ビザが発給されるという。

そのため、店舗にタンドールを納入する専門のブローカーがいるのだ。

日本でビザが発給されると、現地のブローカーが料理人に仕事の斡旋をする。その手数料の一部が日本のタンドール・ブローカーとタンドールを導入した法人に支払われるというわけだ。

しかし、それで無事に働ければいいが、最近は日本の法人のなかに悪質な業者も多い。。手数料だけ受け取って、一度は導入したタンドールをブローカーを通じて転売。料理人も解雇してしまうのが最近では主流らしい。

それはネパール人も最初から承知で、自分たちで他の仕事を見つけている。

最後に

こうした一連の事情、というよりカラクリがあったわけだ。

もちろん、すべてのインドカレー店が違法だったり、苛酷な労働環境に置かれているわけではないだろう。

私も何軒かのインドカレー店に入ってみたが、どこも気軽に話しかけてくれ、味も良く、値段も良心的だった。

売り上げのためのコミュニケーションとはわかっていても、嬉しくなるものだ。

カレーだけでなく、それぞれの国の料理も味わえるので興味のある方にはぜひ行ってみることをおすすめしたい。

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