西洋史

スパイス&ハーブの歴史と使い方について調べてみた

スパイス&ハーブの歴史と使い方について調べてみた

古代から、人類はその経験に基づく知恵を生かして「スパイス&ハーブ」を生活の色々な場面で役立ててきた。

今日まで5000年に及ぶその長い年月にはどのような変革があったのか? 今では身近になったスパイス&ハーブの歴史・使い方などを調べてみた。

世界における歴史とスパイス戦争

古代エジプトでは死後、魂はその肉体に再び還って復活すると信じられ、王族など高貴な人々の遺体が腐らない様にミイラが盛んに作られた。

その時に強力な防腐作用を持つ「シナモン・アニス」などのスパイスが死者の体内に詰められた。またその王族の墓所であるピラミッド建設の際に多くの労働者達に体力をつける為、大量のガーリック(ニンニク)を食べさせた事が伝えられている。
中国の漢の時代には、政事を奏上する時に1本のクローブを口に含み口臭消しにした。
この他、各国で山椒・クローブ・シナモンなどが寺院や教会で火にくべられ、空気を清める香煙として使われたりもしたのである。

紀元前2500年頃、中国ではスパイスを加えた香酒や香飯が神に供えられたり、宗教的な役割を担っていた。

医学の誕生

ヒポクラテス(ピーテル・パウル・ルーベンス作版画)wikiより

医学の祖とも呼ばれるギリシアのヒポクラテスは、紀元前400年頃にすでに400種類ものハーブの処方を残しており、その中でも「ハーブの香りによる効能」に触れ、科学的に病気をとらえ現代にまで通じる医学の基礎を築いた。

また紀元前50~70年頃、活躍したローマのディオスコリデスは、植物・動物・鉱物などを利用し、鎮静から消炎・利尿などの薬理機能上から分類した「マテリア・メディカ」を著した。

掲載されている植物は600種類にも及び、「スパイス&ハーブの効果」が体系化され、医学・薬学・植物学が誕生したのである。

マルコ・ポーロの「東方見聞録」から始まった東洋の憧れ

古代薬用・神仏・媚薬・保存剤として使われていたスパイス&ハーブは貴重品として扱われ、その後、中世にかけては、産地である遥か遠くの東洋からヨーロッパで陸路で運ばれてきたが、途中、盗賊・自然災害などの危機にさらされた為、価格は跳ね上がり金銀財宝ととして、アラビア・ベネチアの商人によって取り引きが行なわれた。

交易の中心となったアラビアの街は大いに繁栄したのである。数あるスパイスの中でも特に入手困難だった「こしょう・クローブ・ナツメグ・シナモン」などは、ヨーロッパの人々にとっては、まさにかけがえのない貴重品であり、生産地の東洋が宝の島の様に思われ、有名なマルコ・ポーロの「東方見聞録」は美しい絹織物・中国やモルッカ諸島のスパイス・ジパング(日本)の黄金の宮殿など1299年にまとめたものである。

これがヨーロッパの人々に強烈な印象を与え、300年に渡る「海の冒険家達」による大航海時代へと突入していった。

大航海時代からスパイス戦争へ

大航海時代の主な航路を示した地図 wikiより

1492年、イタリアのコロンブスはスペインのイザベル女王の賛同を得て、1504年までの間に4回も大西洋を渡って、東洋の国々を探索する。

途中アメリカ大陸に到着するのだが、アメリカ大陸固有のスパイスだった唐辛子の発見は、その後の世界の食文化に大きな影響を与えたのだった。

一方ポルトガルではバスコ・ダ・ガマが1498年にインド西海岸のカリカットまでの航海に成功し、こしょうやシナモンを安価で手に入れる道を開き、海洋王国ポルトガルの栄光時代を築くきっかけをつくったのだった。

スペインでは1520年にマゼランセラーンが太平洋横断に成功をし、船団は苦難の末に香料諸島(モルッカ)に到着し、彼らが持ち帰った「クローブ・ナツメグ・シナモン・メース」などのスパイスはスペインに莫大な利益をもたらし、一方でスパイスの交易で賑(にぎ)わったアラビア・ベネチア・ペルシャは衰退の一途をたどったのである。

この頃、スパイスやハーブの栽培はヨーロッパでも行われる様になるのだが、どうしても手に入らないものとしては「こしょう・クローブ・ナツメグ」があり、ヨーロッパ各国で争奪戦が激化し、東南アジアにおける「スパイス戦争」に発展していくのである。

スパイスをめぐっての争いは16世紀前半、ポルトガルが「産地・交易地」を抑え、16世紀後半にはイギリスが海賊行為によって1600年にイギリス東インド会社を設立し、イギリスの動きと同じ頃にオランダも、イギリスと同じ海域を虎視眈々と狙っており、1602年、オランダ東インド会社を設立。

ポルトガル・スペイン・イギリス・オランダの4か国による植民地争奪をかけた乱戦状態が続くのである。

しかしこれを制したのは意外にもフランスであった。フランスは利益を生むスパイスの苗木を生育地から盗み出し、支配下にある植民地へと移植して育てていく「盗木」を行い争奪戦を意味を成さないものにした。イギリスもまたフランスと同様の手口を行い、自然と「スパイス戦争」は鎮静化していったのである。

日本における歴史

薬味」という言葉はあっても日本には、スパイス・香辛料は日本人には馴染みの薄い言葉だった。

わさび・山椒・しょうが・ねぎなどがあげられるが、その使用方法も食材の持ち味を損なう事のないように、隠し味・添える程度のものだった。

712年古事記には、「しょうが」、山椒を指す「はじかみ」「にんにく」等の記述があり、734年の東大寺正倉院文書には、「胡麻・わさび」などが登場し、古くから日本でも栽培されていた事が伺える。にんにくは927年の延喜式に栽培法が記載されている。

こしょうなどの熱帯地方原産のスパイスは、聖武天皇の時代(724~749年)すでに日本に上陸していたようである。正倉院の御物の中に、こしょうの他、クローブ・シナモンが治められている。

江戸時代後期の寛永2年「からしや・徳右衛門」が七味唐辛子を発明して今の東日本橋に店を構え、売り出しはじめる。
明治維新を迎えると文明の道が開け、明治5年(1872年)に刊行された「西洋料理指南」の中に初めての「カレー作り」が発表されたのだった。

古代から使われた代表的なスパイス&ハーブ

アニス「別名:茴芹(ういきん)」

リキュールにも使われる、個性的な甘味と香り。

古代エジプトでは、ミイラの防腐・保存剤として「アニス・クミン」が使用されていた。
個性的な甘みと香りを持つスパイス。クッキーやケーキなどの菓子類、またパンやシチュー・スープの風味づけに用いられることもある。その甘い風味を生かして、アルコール類の風味づけにも使われている。

オレガノ「別名:花薄荷・ワイルドマジョラム」

オレガノはギリシア語で「喜びの山」が語源。ローマ時代の美食家アピシウスが「美味しいソースに欠かせない」とその香りを愛した。

シソ科の植物が持つ清涼感のある香りが人気。イタリアのトマト料理に欠かせないハーブ
トマトソースのパスタやピザ、トマトの煮込みなどによく合う。メキシコ料理で多様されるチリパウダーにも不可欠なスパイスの一つ。

ガーリック「別名:にんにく」

巨大ピラミッド・ギザの建設に従事していた労働者達に出されていた食事には、沢山のガーリックとオニオンが使われていた。炎天下の重労働に耐えられるスタミナ源としての役割も大きかった。
11世紀の「源氏物語」の帚木(ははきぎ)の巻に登場する。久しぶりに自分の元を訪れた男性に女性が蚊帳越しに「月ごろ、風病重きに耐えかねて、極熱の草薬を服して、いとくさきによりなん、え対面賜はらむ」と当時、風邪薬として乾燥させたにんにくを煎じた飲み物の事が記してある。

カルダモン「別名:小豆冦(しょうずく)」

紀元前1000年以上前からインドで「泌尿器系」の病気・肥満改善の為、生薬やスパイスとして使われていた。

爽やかな強い刺激とほのかな柑橘系の香りが特徴。「香りの王様」とも呼ばれ、インドではカレーやガラムマサラに多様され、日本のカレー粉の主原料でもある。リキュールなどの香りづけに用いられる。

クミン「別名:馬芹」

元々はナイル河の渓谷に育生しており、古代エジプト時代には王族貴族を死後ミイラ化して保存する為に、防腐剤としてアニスと他のスパイスと一緒に用いられた。
カレーを思わせるエスニックな芳香のある、カレー粉やチリパウダーに欠かせないスパイス。アフリカ・中近東・アジアなど世界各地で煮物・炒め物・パン・チーズなどに幅広く用いられる。インドのカレー・アフリカのクスクスなどが有名である。

クローブ「別名:丁子(ちょうじ)」

古くから中国・インド・ヨーロッパで口腔清涼剤・胃腸薬など重要な役割を果している。日本にも渡来したものが「正倉院」の御物に納められている。
甘く濃厚な風味で、肉料理との相性がとてもよく、西洋料理ではポトフ・ビーフシチューなどに欠かせない。

またインド料理では肉を使ったカレー風味づけに使われる事も多い。

インドカレーを自宅で作るレシピ紹介

上記のスパイスを使い「インドカレー」を作ってみる。

(用意するスパイス)

・粒スパイス(カーダモン・シナモン・クローブ)
・粉スパイス(ターメリック・唐辛子・クミン・コリアンダー・ガラムマサーラー)
・たまねぎ
・鶏肉
・塩 (好みにより生クリーム・ヨーグルトを入れても良い)

(インドカレーの作り方)

1、深鍋にサラダ油と粒スパイス(カーダモン・シナモン・クローブ)を入れ火にかける。
2、薄切りにしたタマネギを加え、飴色になるまでよく炒める。
3、すりおろしたしょうが・ニンニク・ザく切りトマト・トマトピューレ
4、粉スパイス(ターメリック・唐辛子・クミン・コリアンダー・ガラムマサーラー)塩を加え混ぜ合わせる。

5、鶏肉のぶつ切りと水を入れて、強火にする(好みにより:ヨーグルト・生クリーム)
6、とろみがでるまで、じっくり煮込む。出来上がり!!

本場のインドカレーを自宅に作れるレシピである。

スパイスは今、スーパーでも手軽に購入する事ができる。スパイス=カレーと連想するのは、自分だけだろうか?!
ハーブの紹介が少なかったが「シナモン」はハーブの一種である。スパイスの知識を深めた所で、スパイスの味の深さも自分で作って味わってみるのも一興である。

関連記事 :
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いちから始めるインドカレー: 簡単なのに本格味。とっておきの63カレー

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総一郎

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