豆腐の起源
豆腐の起源 は、明の時代に書かれた「本草網目」(当時の百科事典のようなもの)によると「豆腐の源は前漢時代の劉安である」というのが通説になっています。
が、しかし日本豆腐協会のホームページでは、劉安の時代には中国に大豆はなく、学者であった劉安が書き記した書物にも豆腐という言葉が出てこないため、この通説はいささか疑問であるというようなことが書かれてありました。
気になったので大豆の歴史などを調べてみると、大豆は前漢時代の歴史書「史記」にも歴代皇帝が毎年五穀豊穣の儀式で、大豆を蒔いていたと書かれていました。
紀元前2000年ころまでには中国の広い範囲で大豆は栽培されており、劉安と同じ時代に生きた政治家の墓、馬王堆漢墓(まおうたいかんぼ)から大豆や大豆の加工食品が出土されたとあります。
さらには豆腐を固める材料となる石膏(硫酸カルシウム)は紀元前7000年の古代エジプトからペルシャへ、そしてローマへと受け継がれ、シルクロードを通って前漢の前に栄えた秦へと輸入されていたとされています。
劉安が豆腐を発明したという確たる証拠はありませんが、起源はそのころであるという可能性はありそうです。
一説には豆腐の起源は8~9世紀の唐代中期とも言われており、文献上で初めて「豆腐」という名称が登場するのは10世紀の「清異録」です。
日本に豆腐が輸入されたルーツ
奈良時代に中国に渡った遣唐使の僧侶によって日本に豆腐が伝えらえたと言われていますが、諸説あります。
一説では、遣唐使として唐へ渡った空海が滋養強壮の薬の一つとして高野豆腐を持ち帰り、入京して高野山で真言宗を開いて、修行食として供するようになったとあります。
豆腐が日本で記録として初めて登場したのは寿永2年(1183年)の春日大社の「春近唐符一種」で、お供えものとして記載されました。
豆腐は精進料理として僧侶の間で食されていたものが、貴族や武家社会に伝わり、室町時代になって奈良から京都へ、そして全国に普及しました。
江戸時代になっても高級品だった豆腐が庶民の口へ気軽に入るようになったのは、江戸中期になってからです。
当初、田楽として串に刺して味噌を塗って焼かれて食べられていた豆腐は、木綿豆腐が一般的でした。
絹ごし豆腐を始めて発売したのは、現在も残る老舗「根ぎし 笹之雪」です。
江戸で爆発的にブームになった豆腐は、豆腐料理本も出版されるほどでした。天明2年(1782年)に刊行された「豆腐百珍」、「豆腐百珍続編」「豆腐百珍余禄」と続編が次々と刊行されるほどの人気です。
近代工業の発展に伴い豆腐の製造も工業化されます。
わずかな大豆から大量生産される豆腐は安価で提供されるようになり、庶民の生活に根付くようになりました。
豆腐の種類
木綿豆腐
豆乳に凝固剤を加えて、固まったものを布を敷いた型箱に流し込み、脱水、成型して作られます。
絹豆腐
木綿豆腐よりも濃い豆乳に凝固剤を入れて、型箱で固め、水にさらしてカットされた柔らかい豆腐
ソフト豆腐
絹ごし豆腐状に凝固した豆乳を木綿の型箱に流し込んで脱水、成型したもので木綿と絹の間の触感の豆腐。
京都の嵯峨豆腐が有名。
おぼろ豆腐(木寄せ豆腐)
木綿豆腐の行程中に型箱に入れる前に器に盛った製品。
おぼろ月のもやもやした状態に形状が似ているために、おぼろ豆腐とも呼ばれます。
寄せる状態でざるに盛ったものを、ざる豆腐と呼びます。
充てん豆腐
絹ごし豆腐と同様の濃い豆乳を冷却後に凝固剤を加え、合成樹脂製の容器に充填して、90度で40分~50分加熱して作られる豆腐。
加熱凝固で殺菌されるために長期保存が可能。葉酸の含有量が他の豆腐の2倍ほどある。
豆腐の加工食品
高野豆腐
鎌倉時代に生まれ、「凍み豆腐」「氷豆腐」とも呼ばれる。
かつては寒ざらしによって水分を飛ばして造られたが、現在は工場で通年生産される。
凍結と解凍を繰り返して水分を抜いた乾物なので、日持ちがする上に、カルシウム、リン、ビタミンE、タンパク質などの栄養成分が凝縮した健康食品。
油揚げ
薄く切った豆腐を揚げたもの
厚揚げ
厚く切った豆腐を揚げたもの。中心部が豆腐のままのため、「生揚げ」とも呼ばれる
焼き豆腐
堅めに作った木綿豆腐を水切りして焼き目を付けたものです。崩れにくく味が染み
やすいので、すき焼き、煮物、田楽などに使われます。
がんもどき
水切りした木綿豆腐につなぎに山芋、具に笹がきごぼう、人参、きくらげ、昆布、ぎんなん等をいれて撹拌し、成型して油で揚げたもの。
江戸時代には揚げ物としてそのまま食べられていたようですが、現在はおでんの具、惣菜、煮物など広く食卓に供されます。
関東では精進料理で雁に摸して作られたから「がんもどき」、関西ではポルトガル語の菓子の名前「フィリオース」もしくは竜の頭に形が似ているから「ひりゅうず」と呼ばれます。
豆腐の二次食品
豆乳
発症地の中国ではかなり飲まれているものの、日本ではその習慣はあまり根付いていません。
昨今の健康ブームにより見直されているものの、大手メーカーの販売のみで、豆腐屋から直接購入する人は少ないのが現状です。
おから
大豆を水に浸して柔らかくし、水と共に煮てすりつぶし呉を作ります。呉から豆乳を絞った後に残るのがおからです。
おからは、タンパク質、脂肪、食物繊維が豊富な健康食品で「卯の花」として食用される他に家畜の飼料として利用されています。
ゆば
豆乳を加熱すると表面に膜が張ります。これを竹串で引き上げたものが「生湯葉」です。
タンパク質と油脂分を多く含み、乾燥品は保存食として重宝されます。
京都や日光などで湯葉料理が有名ですが、一般に食べる習慣があまりありません。
豆腐料理の歴史
百種類の料理法を紹介されるほどに江戸時代には人気となった豆腐料理。
長らく精進料理として寺院の中でのみ食されたり、高級食材として生産を制限されたり、価格統制を図られていたために庶民の口に入るようになったのは、江戸の中期です。
後期になると「棒手振り」という行商人が豆腐、油揚げ、がんもどきなどを担いで売り歩くようになり庶民にとって身近な食べ物になりました。
江戸後期に食べられる豆腐料理は庶民にとっては冷奴、湯豆腐、豆腐田楽が手軽に食べられる豆腐の食べ方でしたが、
豆腐百珍には
「尋常品」・・・どこの家庭でも常に料理する「木の芽田楽」「飛竜頭」など26品
「通品」・・・「焼き豆腐」「油揚豆腐」「絹ごし豆腐」など一般的な料理10品
「佳品」・・・尋常品より風味が優れ見た目がきれいな料理「なじみ豆腐」「今出川豆腐」など20品
「奇品」・・・人の意表をつくほど変わった料理。「蜆もどき」など19品
「妙品」・・・気品より優れたもの。「光悦豆腐」など18品
「絶品」・・・珍しさ、盛り付けにとらわれることなく、豆腐の持ち味を知り得た料理。
「湯やっこ」「鞍馬豆腐」など7品
と6つのカテゴリ別に紹介されておりました。
このように江戸後期になると様々な豆腐の調理法が編み出され、人気の豆腐料理店は番付などで庶民にも紹介もされました。
洋風の調理法が加わった現代になると、さらに無限の可能性を感じさせる食材として成長しています。
豆腐の栄養素と健康効果
大豆が主原料なため、植物性たんぱく質が豊富。カロリーが低いために健康食品として人気がある。
絹豆腐100g中、水分89.4g、タンパク質5.0g、脂質3.3g、糖質1.7g、58kcal
残念ながら食物繊維は搾りかすのおからに方にほとんとが含まれます。
1 コレステロール値を下げる
豆腐に含まれるリノール酸はコレステロール値を下げる働きがあり動脈硬化・心筋梗塞・脳梗塞の生活習慣病の予防になります。
2 便秘解消
オリゴ糖が含まれているために胃腸の調子を整えて便秘を解消します
3 老化やボケの防止
豆腐に含まれるレシチンが血流を促進するために、脳細胞を活性化させて老化やボケの防止につながります。
4 ダイエット効果
低カロリー高タンパク所品の豆腐はダイエットの強い味方です。
5 ホルモンバランスを整える
大豆イソフラボンは女性ホルモンと同じような働きを持つために更年期障害や月経前症候群に良い働きをします。
世界の豆腐
中国で豆腐はdoufu、韓国ではdubu、東南アジアの各国ではto-fu、daufu、tafu、tahoと呼びます。中国発祥の豆腐(doufu)がそのまま広まったと考えてよさそうです。
日本以外の豆腐料理としては
中国・・・麻婆豆腐、臭豆腐
台湾・・・豆花(豆腐にシロップや小豆フルーツをトッピングしたデザート)
韓国・・・スンドゥブ・チゲ
ベトナム・・・ブンダウ(揚げた豆腐と麺を一緒に食べる)
フィリピン・・・タホ(温かい豆腐にタピオカと黒蜜をまぶした菓子)
などアジア圏では豆腐は非常に馴染みが深い食材です。
簡単豆腐料理
超簡単な豆腐料理をご紹介します。
1 ガリバタ豆腐ステーキ
水切りした豆腐に片栗粉をまぶし、多めのサラダ油で両面焼き、醤油・みりん・砂糖・おろしにんにくのたれをまわしかけ、最後にバターを絡める
2 焼肉のたれでそぼろ豆腐
ひき肉を炒め、焼肉のたれを入れる。水切りして賽の目に切った豆腐を入れてからめ、刻み葱をふる。
3 オリーブオイルとクリームチーズのサラダ
崩した絹ごし豆腐に賽の目に切ったクリームチーズ、スライスしたプチトマトを塩を混ぜたオリーブオイルで和えてひきたてこしょうを振る
4 豆腐カレーグラタン
水切りした豆腐をグラタン皿に入れ、残り物のカレー(レトルトカレーでも可)をかけて、とろけるチーズとパセリをトッピングしたら180度のオーブンで15分焼く
まとめ
豆腐は原料となる大豆が、弱アルカリ性の土壌と土中に大豆と共生関係にある根粒菌が存在しないと育ちません。
ヨーロッパにはその環境がなかったために大豆が作られず、その加工品である豆腐は存在しませんでした。根粒菌が存在するアメリカでも大豆は製油用、飼料用として扱われ、長く食用としては受け入れられませんでした。
ハウス食品と森永食品の長きにわたる企業努力と1999年にFDA(米国食医薬品局)が大豆たんぱくが心臓病に効くと発表したこが後押しとなり、豆腐はアメリカで市民権を得、欧州にもその人気は伝わりました。
世界的にその健康効果を認められた豆腐、冷奴だけでなく色々なアレンジを加えて日々の食卓に登場させてみてはいかがでしょうか?
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