西洋史

【孤高の天才芸術家】 ミケランジェロと彼の作品について調べてみた

15世紀のイタリアではルネサンス文化が花開き、暗黒時代と呼ばれたヨーロッパ文化は新しい動きを見せていた。

そのような背景の中、芸術の分野では数々の天才が誕生した。

レオナルド・ダ・ヴィンチ
・ミケランジェロ・ヴォナローティ
・ラファエロ・サンティ
・サンドロ・ボッティチェッリ

などが有名である。

その中でも、最も大きな作品であるシスティーナ礼拝堂の天井画を残し、それをなんとほぼ1人で創り上げた人物がいる。それがミケランジェロである。

彼は画家、彫刻、建築、詩と多くの分野に非凡な才能をみせている。

ミケランジェロと彼の作品について調べてみた

ミケランジェロ・ヴォナローティ wikiより引用

ミケランジェロの出自

ミケランジェロは、1475年にイタリアのフィレンツェで生まれる。
父親は役人であり、母親は彼が6歳の時に死去している。

父親は大理石採掘場を経営しており、ミケランジェロは小さな頃から石を彫るための道具が身近にあった。後々彫刻家として才能を開花させる要因である。

13歳の時に父親の推薦もあり画家の元へ弟子入りし、絵画や彫刻の製作を学んでいった。
この修行期間に彼は、階段の聖母ケンタウロスの戦いという彫刻のレリーフを製作している。

ミケランジェロと彼の作品について調べてみた

ケンタウロスの戦い

ローマでの活躍

その後、政治上の理由によりフィレンツェを離れることになったが、作品の素晴らしさはローマでも噂になっておりバチカンへと招待される事となる。

ローマに到着した時、ミケランジェロは21歳であった。

彼はローマでの最初の大仕事であったピエタを製作。

この作品は磔の刑に処されたイエスの亡骸を抱える聖母マリアの像であるが、大理石で彫られたとは思えないほどに聖母マリアの悲しい表情や衣服のシワまで見事に表現されている。同時期の画家であるヴァザーリは「奇跡と言える彫刻で、大理石で出来ているとは思えない」と評している。

ミケランジェロと彼の作品について調べてみた

彼の初期の代表作 ピエタ

1504年、ミケランジェロの代表作であるダビデ像を製作。

ミケランジェロと彼の作品について調べてみた

ミケランジェロが彫刻家としての名声を手に入れた傑作 ダビデ像

5メートルを超える大理石から掘られたこの力強い像は、彼の彫刻家としての才能と名声を決定的なものとする作品であった。
筋肉の表現、筋張った健、そして今にも動きそうなポージングは彫刻の最高傑作と言える。

このダビデ像は上半身と下半身の比率がわざと悪くなるように彫られている。
この像が5メートルの大きさであった事と設置場所が高い所になる事が事前にわかっていたため、上半身を大きくする事で見る人が目線を上に見上げた時にバランスが良く見えるように計算されているのである。

この作品を製作するにあたって、ミケランジェロは自ら大理石を見に行き素材を確認しており、作業しているところを他人に見られないように作業場に仕切りを立て、作品造りに集中していたようである。

1508年の段階で、ミケランジェロは優れた画家としてローマ教皇に認知されており、教皇のユリウス2世の霊廟の設計や他の仕事も多く依頼されており、1つの作品の制作を終わらせる事が難しい状態になっていた。霊廟に関しては完成に40年かかっている。

ミケランジェロ最大の作品

しかし彼は多忙の中で最も大きな作品を完成させる。それがシスティーナ礼拝堂天井画である。

システィーナ礼拝堂天井画

旧約聖書の内容を天井画として描いており、縦40メートル横13メートルの巨大な作品である。

作品の構成は過去に類を見ない物であり、彼は自身の画家としての才能と建築の知識を活かして立体的な構成になるような絵画を描いた。
この作品をミケランジェロはほぼ1人で、4年の歳月を費やして完成させている。

天井に絵を描くのは長時間上向きな状態で絵を描く事になるので、ミケランジェロは首と腰を痛めたり、製作途中にフレスコ画の染料が目に入り視力を落としてしまったりと大変な思いをしながら完成させた。

この礼拝堂にはもう一つ彼の傑作がある。最後の審判である。

ミケランジェロと彼の作品について調べてみた

最後の審判

最後の審判の制作には、1541年から1547年の6年間をかけている。
天井画を描いてから40年近く経っての事である。

キリストの再臨と現世の終末を、天使に囲まれたキリストが生前の行いによって人々の魂を裁いている情景で描いている。
作品には生々しい男女の裸体が描かれていたが、人物の下半身を隠すように後に加筆されて完全なオリジナルは今は見る事が出来ない。

その後も数々の作品や建築を世に残していったミケランジェロは、1564年に88歳でこの世を去った。

最後に

バチカンサンピエトロ大聖堂の特徴的なドーム これもミケランジェロの設計である

ミケランジェロは弟子を一人も作らず最後まで孤高の芸術家であった。彼の頑固で偏屈な性格で他人が近寄りがたい人物であった。
彼は1人でいることを好み、見た目に気を遣わず、食事も必要だから食べるといった具合で、芸術以外に興味がなかった。

同時代のレオナルド・ダ・ヴィンチはアーティスト気質であったが、ミケランジェロは職人気質であり、大量の作品を1人で仕上げきる意思の強さも持ち合わせていた。

彼のその多大な労力によって今も素晴らしい芸術作品が世に残っているのである。

 

草の実堂編集部

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草の実学習塾、滝田吉一先生の弟子。
編集、校正、ライティングでは古代中国史専門。『史記』『戦国策』『正史三国志』『漢書』『資治通鑑』など古代中国の史料をもとに史実に沿った記事を執筆。

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コメント

    • 名無しさん
    • 2021年 7月 02日 9:31pm

    最後の晩餐ではなくて、最後の審判ですね。

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