ハロウィンが終わると店頭にはクリスマス商品が並び始める。同時にクリスマスケーキの予約や、クリスマス当日に向けたイルミネーションの準備に大急ぎで取り掛かる街の様子も見受けられる。
子供の頃は誰もが「サンタクロースにどんなプレゼントをお願いしようか。」と悩み、「家に煙突がないからプレゼントが貰えないかもしれない。」と、心の底から心配した思い出があるのではないだろうか。
世界中の子供たちに夢を与えてくれるサンタクロースの存在は、大人になってからも幼い頃の記憶の中に残る不思議な存在である。
日本ではサンタクロースと、サンタクロースを支えるトナカイの活躍が大きく取り上げられているが、各国のクリスマスを覗いてみると、日本では馴染みのないクリスマスを盛り上げる人気者たちの目覚ましい活躍を知ることができる。
目次
サンタクロースのサポートはお手の物〜「クリスマスのエルフ」〜
アメリカに伝わるクリスマスの妖精「クリスマスのエルフ(Christmas elf)」は、サンタクロースのアシスタントとして世界中の子供たちに配るプレゼントのラッピングから、トナカイの世話までをこなし、クリスマスに間に合うようにサンタクロースの代わりにプレゼントを届けることもあるといわれている。アメリカでは、いちばんの働き者である「エルフ」の努力に感謝する子供たちも多いそうだ。
そんな「エルフ」にとって最も重要な任務といえば子供たちの日常を見守ることだ。12月に入ると、クリスマスの日を迎えるまで「エルフ」は子供たちが良い子にして過ごしているかをサンタクロースに報告しているのだと両親は子供たちに伝え、「エルフ」の人形を子供部屋やクリスマスツリーに飾り始める。
そのため、「エルフ」は子供たちにとって、サンタクロースよりも身近な存在であり、プレゼントは「エルフ」から貰っているという認識の方が強いのだ。
スウェーデン生まれの幸運の妖精「トムテ」〜不機嫌なトムテにはご注意を!!〜
とんがり帽子を深く被り、長い髭を伸ばした「トムテ(Tomte)」は、スウェーデン版サンタクロースとして北欧の国々では有名である。人間との絆が深く、家畜の守護神として納屋に住む「トムテ」は、家庭に幸せを運んでくる妖精であることから、サンタクロースに近い存在とも考えられている。
特にスウェーデンでは、クリスマスに限らず1年中「トムテ」の人形を部屋に飾り、「トムテ」が機嫌を損ねて不幸を運んでこないように、甘いミルク粥、通称『トムテ粥』をクリスマスに供える習慣を大切にしている。
普段は優しく働き者である「トムテ」だが、過剰な干渉や感謝の気持ちを表現しない相手を物凄く嫌う性格でもある。機嫌が悪くなると仕事を辞め、幸運どころか納屋にあるものを全て持ち去っていくといった恐ろしい一面もあるが、『一生懸命、仕事に打ち込む者に対して、日頃から感謝を忘れてはいけない。』という人間に対する教訓を表しているとも取れる。
デンマーク、ノルウェーでは『ニッセ(nisse)』、フィンランドでは『トントゥ(Tonttu)』と各国の言語で呼ばれている「トムテ」の風貌は、顔を出したものから長い手足を着けたものまで様々だが、一般的に知られている「トムテ」は、帽子で目を隠しサンタクロースと同じ赤い洋服を着て長い髭を伸ばした姿である。
日本でもクリスマスツリーのオーナメントに使用されることが増え、「トムテ」の存在が少しずつ認知され始めている。
ロシアにはサンタクロースがいない!?〜大晦日を盛り上げる「ジェド・マロース」〜
ユリウス歴という古い西暦に従い、通常より2週間遅れた1月7日にクリスマスを迎えるロシアには、一風変わった子供たちのヒーローがいる。
それは、ロシアの民間伝承に登場する霜の妖精「ジェド・マロース」である。
一見、サンタクロースに似た容姿であることから、サンタクロースは双子だったのではないかという噂まで流れたことがある。
サンタクロースではなく、この「ジェド・マロース」がロシアの子供たちにクリスマスプレゼントを届けている理由は、ロシアのソ連時代の歴史にあった。
当時は宗教に関わる催事が全て排除され、キリスト教行事であるクリスマスを祝うことも禁じられていた。そんな厳しいロシアの社会体制の中でも、子供たちにだけは1年の終わりを迎える節目の日に、自分の願ったプレゼントが届く喜びを経験させてあげたいという多くの親たちからの強い要望を受け、「ジェド・マロース」が、サンタクロースの代わりを担うことになった。また、彼を支える孫娘の「スネグーラチカ」も一緒にプレゼントを届けにやってくる。
子供たちへのプレゼントが毎年12月31日に届くのは、クリスマスプレゼントではなく、1年の終わりを迎える節目の変化を実感させる新年のプレゼントを「ジェド・マロース」が用意しているからである。現在では、12月25日当日のクリスマスを楽しむ人も増えてきているロシアだが、新年を迎える大晦日がクリスマスよりも大切なイベントであることに変わりはない。
各国のクリスマスを盛り上げる妖精たちが意味すること
今回、紹介した『エルフ』、『トムテ』、『ジェド・マロース』以外にも、幸運や喜びを届けてくれるクリスマスの人気者は世界中に多く存在する。そんな彼らについて調べていく中で感じたことは、年を重ねても忘れてはいけない『人間としての心掛け』を教えられているということだ。
クリスマスを迎えるまでの日常の過ごし方を見直し、クリスマス当日を楽しく過ごした後はその喜びへの感謝を忘れないこと。過去の社会情勢に影響されることなく、誰もが幸せの瞬間を味わう自由を持っていることを彼らを通して再認識できた気がした。そして、人々の暖かい心掛けの大切さが一人でも多くの人に伝わるようにという想いそのものが、世界各国のクリスマスの妖精たちに反映されているのだと確信した。
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