用を足すということ
今も昔も人類にとって「食事をして用を足すこと」は生きるために必要不可欠な行動ある。
中国にはこういう言葉がある。
「人有三急,如廁第一」
※人には三つの急ぎごとがある、一番は用を足すことだ。一旦急ぎ始めたら、用を足すまで我慢できない。
各国のトイレ事情は様々である。日本のトイレは非常に綺麗で衛生的な上、最近ではハイテクな便座も開発されている。
中国のトイレは、外国人にとって慣れるのに時間がかかる。
5年ほど前に筆者が中国に住んでいた頃、トイレにティッシュペーパーは流せなかった。なぜなら下水道がきちんと整備されていないため、すぐに詰まってしまうからである。
どこもこんな感じで、便器の横にはゴミ箱が置かれ、その中に使用済みのティッシュが入れられている。ティッシュがたまっている時のゴミ箱の臭いはご想像の通りだ。
トイレットペーパーもの値段も異常に高く、まとめて買うとびっくりする値段になる。
そして2018年当時でも「ニーハオトイレ」は存在した。ニーハオトイレとは壁がないトイレである。つまり個室ではないのだ。
扉を開けると剥き出しの便器がいくつか並んでいるだけ。つまり用をたしながら「ニーハオ」と挨拶できるのだ。個室になっていたとしても扉が外されていたり、理解に苦しむトイレがほとんどだった。
筆者が住む町にあった大学は、区切りはあったものの便器はなく、下には溝があるだけのトイレもあった。お隣の人のものが流れてくるタイプだ。
今回はそんな中国の古代のトイレ事情について掘り下げていきたい。
世界最古の水洗トイレ
水洗トイレの歴史は、今からおよそ2200年から2400年前の時代に遡るという。
中国でいうと、古代の戦国時代から漢朝の初期にあたる。
2022年の夏、初めて中国を統一した秦の首都があったことで有名な西安で、世界最古の水洗トイレと思われるものが発見された。およそ2400年前のものだという。
発掘された場所は西安市にある櫟陽城という遺跡群の中の宮殿だった。櫟陽城とは秦から漢時代に最も栄えた中心都市だ。宮殿を発掘しているときに割れた便器の一部分と曲がった下水管を発見したという。
周りを慎重に堀り進めると水洗トイレであることが明らかになった。残念なことに上の部分は発掘時には見つけられなかったようである。
写真を見ると便器の下に下水管がついている。排泄物がそこへ落ちて流れいくという簡単な作りだが、完全に水洗トイレである。
この水洗トイレは、始皇帝が統治していた時代に使用されていたものと推測されている。
発掘に携わった研究チームは
「これは中国の歴史において唯一残る水洗トイレだ。現場の研究員たちはまずとても驚き、みんな一緒に大笑いした」
とコメントしている。
彼らもまさか、水洗トイレを発見するとは思わなかったのだろう。
古代の一般人のトイレ
文明の進んでいなかった古代において、排泄物は穴を掘ったり、草で覆ったりして処理してした。
少し進んでトイレのような固定の場所が作られ始めると、豚の餌にするために豚舎の上に便器が設置された。
古代においても用を足すこと気恥ずかしいプライベートなことと思われていたらしく、「用を足す」とは直接言わずに隠語が使われていたという。
例えば「方便」、これは現在の中国語で「便利」という意味になっている。
その他には「登東」、これは中国語で「東に登る、行く」というような意味である。
その昔、古い家のトイレは東の角に作られることが多かった。そこで「ちょっと東に行ってくる = トイレに行く」という意味の隠語として使われるようになった。
他には「更衣室」という呼び方もあったという。
古代においても現代においても、用を足すことに対する羞恥心は変わらないようである。
参考資料 : 中國西安發現「世界最古老」的衝水馬桶
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