海外

【新卒1500万人が未就職】 若者の失業率が高まる中国で流行している 「子供業」とは

若者の失業率

「子供業」とは

画像 : 就活する中国の若者たち イメージ

コロナ収束後の2023年4月、中国政府は全国で国民の失業率について調査し、公開した。
全体の失業率は5.1%、16歳から24歳までの若者の失業率は20.4%に登ったという。

コロナの影響で、社会活動が一時的に停止してしまったことが大きな原因である。

コロナ禍の3年(実質的にはもっと長かったと思われる)の間に大学を卒業した若者たちの、1500万人が就職できずにいる。

企業だけではなく農民にも影響が出ている。3年間の間に農業に携わっていた者の中で2300万人が失業して故郷に戻ったという。当然その中には若者も多く含まれる。

就職ができない若者の中で、FoodpandaUbereatsなどのデリバリーや、その他宅配業などの仕事に転職した者は800万人いたという。

滴滴」というアプリのタクシードライバーに転職した者は、1200万人以上に登った。

これらの仕事は保証はないが、コロナ禍の中で少なくとも収入を得ることができ、時間に縛られないという点が若者にウケているようだ。

「子供業」に専念する中国の若者たち

中国では、「子供業」に専念する若者が増えているという。

「子供業」とは聞き慣れない言葉であるが、つまり父母の世話をするということである。

これだけだとまだ分かりにくいので、一例を挙げよう。

これは北京に住む女性Rさんの例である。

彼女は北京で5年ほど、ある企業で働いていた。仕事場の環境は悪く、毎日残業を強いられていた。
結局彼女は仕事を辞めるのだが、離職するまでの数ヶ月は午前9時に家を出て出社し、深夜1時に家に帰ると言った生活を続けていた。

「子供業」とは

仕事からのストレスで、夜は睡眠薬を飲む必要があった。眠っても仕事の夢ばかり見る。そして目が覚めても仕事に出かけ、まるで24時間仕事をしているかのようだった。毎日悪夢を見ているように感じた

企業が厳しい仕事環境を強いるのも、失業率が高くなって就職難民が増えていることが関係している。就職の競争率が高くなっていることから、企業は求職者の足元を見るのである。

残業などの厳しい条件を突きつけて、要求を飲まないなら簡単にクビにできるという。この悪循環が多くの若者を苦しめている。

そんな状況も重なり、Rさんは両親と話し合って実家に戻ることを決めた。

そして専業の「子供業」を行うのである。

子供の仕事?という感じだが、父母の世話しながら家事を手伝い、生活費は両親が出し少しの給料も出すという。給料というよりはお小遣いといった感じであろうか。

だが、Rさんは現在29歳。両親は退職したとはいえ、まだ世話が必要といった年齢ではない。

つまり、両親は一人っ子のRさんと共に時間を過ごし、人生の次の展開について時間をかけて考えさせようというのだ。

両親のRさんへの要求は「早寝早起きをすること。正常な生活のパターンを維持すること。」である。

毎日たいしてすることはないが、ダラダラ過ごすのではなく「人としての生活を送ること」が条件なのである。

流行しつつある「子供業」

画像 : 仕事が見つかるように神頼みする若者たち イメージ

失業率が高まり就職難が続いている中国では、若者たちの中でRさんのような人が増えている。

大袈裟なケースとしては、子供が親と契約を結び、家事一つこなすごとに報酬がもらえるという。
または、1時間親に付き添うといくらかの報酬がもらえる。といった感じである。

本来は家族の中で普通にすべきことが、お金に換算されているのである。

この現象は、このまま不景気が続き失業率が高まっていけば、さらに流行することが予測されている。

 

アバター

草の実堂編集部

投稿者の記事一覧

草の実学習塾、滝田吉一先生の弟子。
編集、校正、ライティングでは古代中国史専門。『史記』『戦国策』『正史三国志』『漢書』『資治通鑑』など古代中国の史料をもとに史実に沿った記事を執筆。

✅ 草の実堂の記事がデジタルボイスで聴けるようになりました!(随時更新中)

Audible で聴く
Youtube で聴く
Spotify で聴く
Amazon music で聴く

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事

  1. あなたは“ナートゥ”をご存知か? インド映画「RRR」で有名なN…
  2. マッコウクジラの腸結石(アンバーグリス) を海辺で拾えば一攫千金…
  3. 『天国にいちばん近い島』 ~ニューカレドニアの魅力
  4. 海外で人気のあるG1レース 「イギリス、オーストラリア、アラブ、…
  5. 【デンマーク初の女王誕生のきっかけを作った王妃】イングリッド・ア…
  6. オーストラリアの真夏のクリスマスはどう過ごしているのか? 「クリ…
  7. ルーマニアの奇想天外な観光スポット 「世界一陽気な墓、ドラキュラ…
  8. モンゴルのトゥス・キーズと韓国のポジャギ 「母の愛を改めて知るア…

カテゴリー

新着記事

おすすめ記事

アメリカ開拓地の怪物伝説!木こりたちが語る恐怖の「フィアサム・クリッター」とは

20世紀初頭のアメリカは、ニューヨークなどの大都市を除けば、まだまだ未開拓の荒野であった。…

伝説の5人の狙撃手たち 【戦場の死神】

狙撃という行為ほどコストパフォーマンスの良い軍事攻撃はないだろう。時には一人の狙撃手と数発の…

華岡青洲 ~世界初の全身麻酔手術を成功させた「医聖」

華岡青洲とは華岡青洲(はなおかせいしゅう)とは、江戸時代の文化元年(1804年)に世界初…

甲斐の虎・武田信玄の兜の白い毛は何だったのか?

戦国時代を語る上で、三英傑以外で必ず名前が挙がる戦国武将の代表格が「武田信玄」と「上杉謙信」…

ダイソーのおすすめアイテム 5選【使ってみた】

100円ショップのアイテムは、どれも100円とは思えないクオリティで大人気です。私も100円…

アーカイブ

PAGE TOP