映画やゲームに登場する「ドラゴン」
ドラゴン(龍・竜)は、古来から世界各国の神話や伝説に登場する、架空の生物として知られている。
ドラゴンにまつわるストーリーは何千年も前から脈々と受け継がれ、世界の神話や伝説の中にドラゴンが潜んでいるのを発見しないことの方が難しいくらいである。
『ホビット』や『ハリー・ポッターシリーズ』、『ゲーム・オブ・スローンズ』や『ポケモン』など、多くのエンタメやゲームに登場するのも、偶然ではないだろう。
邪悪か?神聖か?世界各国のドラゴンの違い
ヨーロッパのドラゴン
たとえば、「中世ヨーロッパ」のドラゴンは、強い体にコウモリのような翼、頭に角を持ち、火を吐くトカゲのような獣として知られ、多くの場合、邪悪な存在として描かれている。
民間伝承では、ドラゴンを退治するため選ばれたヒーローが立ち上がり、困難な旅や試練を経てドラゴンと戦って倒すというストーリーが多い。
東アジアのドラゴン
逆に、「東アジア」の文化では、ドラゴンは神秘的なオーラをまとい、神聖な存在として祀り上げられ、パワーや幸運の象徴として使用されている。
中国文化でよく知られる龍は、雲の間を漂い、天を守ったとされる「天龍」であり、日本でも「龍神」が祀られている神社が数多く存在している。
南米のドラゴン
15世紀から16世紀に繁栄した中南米の「アステカ文明」でも、「羽毛のある蛇」を意味する「ケツァルコアトル」と呼ばれる神がいる。
その姿は、龍そのものとして知られ、水と風の神、農耕と文化の神として崇拝されていた。
こうして神聖視されていたドラゴンは、当時の彼らの精神的信仰において重要な役割を果たしたとも考えられている。
なぜ世界各地でドラゴン神話が誕生したのか?
問題は「なぜ現実には存在しないにもかかわらず、世界各国の文明でドラゴンの神話や伝説が誕生したのか?」ということだ。
邪悪か神聖か、性質の違いこそ存在するが、それぞれの文化が地理的にも年代的にも遠く離れているにも関わらず、どの地域のドラゴンも姿形が似ている点は、注目に値する。
スタンフォード大学の古典民俗学者で古代科学史家であるエイドリアン・マイヨール氏は、
「古代人は、絶滅した生物の化石(恐竜)を誤解し、神話上の生き物、とくにグリフィン(ライオンの胴体に鷲の上半身を持つ空想上・伝説の生物)を想像したことが記録に残っている。
つまり、ティラノサウルスなどの先史時代の恐竜の化石を発見した古代人が、それを恐ろしいドラゴンのような獣であったと空想を膨らませて信じ、子孫に代々伝えていたと考えることは、想像に難くない。」
と主張している。
一方で、セントラルフロリダ大学の人類学者デイビッド・E・ジョーンズ博士は、著書『ドラゴンに対する本能』の中で、
「ドラゴンは、人間の心の奥深くに埋もれたアーキタイプ(原型)である。
ドラゴンに関する神話が世界的に一般化しているのは、人間が危険な捕食者への無意識的な恐怖をDNAレベルで受け継ぎながら進化してきたためだ。」
と述べている。
ジョーンズ博士によると、ドラゴンには、人類の祖先が原始的本能から野生動物を恐れることを学んだ数々のモチーフが見られ、ワニ、ヘビ、猛禽類、大型ネコ科動物(ライオンやトラ)など、地球上に実際に存在する生物の獰猛な特徴や性質がすべて融合されている、という。
人間の原始的本能や捕食への根源的な恐れ、恐竜の化石からのイメージングなど、さまざまな要因が折り重なって想像され創造されたのがドラゴンなのである。
どのような理由で生み出されたにしても、ドラゴン(龍・竜)という架空の存在が、私たち人類を畏怖の念や恐怖によって支配していることは明らかである。
ドラゴンが「邪悪な存在」か「神聖な存在」か、その性質を決めるのもまた、私たちの想像力による創造と、選択といえるのではないだろうか。
ドラゴンはこれまで何千年もの間、人類史に存在し続け、魅力的でもあり恐怖の対象でもあり、これからも私たちに影響を与え続けてくれるだろう。
ドラゴンを味方につけるために、日本各国の龍神神社を参拝して人生のスパイスにするのも良いかもしれない。
参考 : Why Do So Many Cultures Have Dragons In Them? | IFL SCIENCE
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