三星堆遺跡の出土品
三星堆遺跡(さんせいたいいせき)とは、四川省三星堆で発見された長江文明に属する古代中国の遺跡の一つである。
その出土品の多さと形の奇妙さで、とても異色な遺跡となっている。
掘れば掘るほど謎が深まるその遺跡は、歴史ファンの心を掴んでやまない。
今回はその出土品の一つ「大立人」について掘り下げていきたい。
青銅大立人
青銅大立人は、1986年に出土した青銅の人型の像である。
大立人は中国政府によって、「国家一級文物」に指定されており、国外に出ることは禁じられている。それほど貴重な出土品なのだ。
この大立人が発見された時、残念ながら腰のところで折れていた。
さらに大きく変形してしまった箇所など破損が激しく、一時は修復不可能かと思われていた。
そこで、中国国家博物館の研究員7人が全精力を傾けて修復し、今の姿に至った。
この修復に関しても面白い話がある。
大立人の背中部分を修復していた時のこと、研究者はどうしても足りないピースがあることに気がついた。
そこで、研究者たちは注意深く仮パーツをつなげることにした。大立人の衣服にはたくさんの模様が施されていたが、研究者たちは流石にそこまでは再現できずにいた。
そして修復が完了した6年後の1993年、誰も想像していなかったことが起きた。なんと仮パーツの部分が発掘されたのだ。
こういった経緯で、大立人は長い眠りから完全に目覚めることになった。
ちなみに大立人の像は他にもいくつか出土しているが、その多くは、頭だけの像、上半身だけの像など不完全な物ばかりであった。
修復された大立人の高さは1.8メートルであった。80センチほどの台座の上に立っており、土台まで足すと2.62メートルにも及ぶ。
台座には四頭の神獣がおり、大立人を支えている。
大立人は3000年以上の歴史があると推定されている。
世界も最も古く、その美しい姿から非常に貴重で特異な存在なのである。
大立人の出立
大立人は「世界最古の龍袍」を着ている。
龍袍とは中国古代王朝の皇帝が来ていた衣装を想像していただくと良いかもしれない。
袖は手首に向かって狭くなっており、服の襟は左前に合わさっている。その装飾は非常に美しく様々な模様が施されている。
龍、動物、鳥、虫、うずまき模様などがみられる。
大立人の後ろに回って観察してみると、燕尾服のように長めにデザインされている。
大立人は一体何者だったのか?
専門家は当初、大立人の身分に関して「蜀の王」か「身分の高い祭祀」ではないかと考えていた。
その後、詳しく大立人を調査したところ、おそらくその服装は「法衣」と呼ばれる宗教の儀式で着用される物であるという結論に達した。
当時の社会は「神権社会」と呼ばれ、国家の政治を執り行う者と宗教の儀式を執り行う者は同等の高い身分とされていた。王=祭祀だったのである。
神、王、祭祀の境界線はなく、平民からするとどの身分も崇敬の対象であった。
祭祀は神となり、そして同時に彼らの王でもあったのだ。
大立人が手に持っていた物とは?
大立人のもう一つの謎は、「彼が手に持っていた物は何だったのか?」ということである。
大立人の両腕は奇妙な形をしている。両腕を胸の前に回し、その手は筒状になっている。
まるで両手で何か長い物を持っていたかの様に見えるのだ。
宗教の儀式に使用された用具なのか、それとも王が持つような金の杖なのか。
調査が進むにつれ、右手と左手の筒は微妙に角度が違っており、一本の真っ直ぐな長い物を持つのは不可能であるということが判明している。
つまり、右手と左手で別々の物を持っていたのか、もしくは曲がったものを持っていたのか、新たな発掘と調査に期待したい。
参考 : 三星堆出土的青铜立人像 | 新华网
この記事へのコメントはありません。