働き方の自由が問われ、自身の快適なライフスタイルを構築することに注目が集まる一方で、教育の現場にも自由に選択できる学習方法を望む声がある。
基本的に自宅学習を中心とし、家庭内で教養を受ける「ホームスクーリング」は、正に新しい教育方針の火付け役だ。
この「ホームスクーリング」が合法化されているアメリカやカナダ全州では、政府が定めるホームスクール制度に従い、両親による必須科目の認識や出席記録を教育局へ提出すれば、正式な「ホームスクーリング」導入家庭として認定される。
目次
「ホームスクーリング」に魅力を感じる両親たちの心理とは!?
かつて王族や富裕層の間では、我が子に良質な教育を受けさせるために、両親が期待を寄せる教師に家庭教師を依頼することが多かった。
専門的な知識を兼ね備えた教師との学習環境を確保するために始まった自宅学習が、現在の「ホームスクーリング」の由来ともいわれている。
ネットの普及が世界的に拡大してからは、子供の年齢に合わせた入学、卒業を繰り返すよりも、学習すべき科目の範囲を各家庭で選択できる「ホームスクーリング」を実践することが、我が子への最善な教育方法なのではないかといった両親の気持ちに変化が見られ始めた。
個人の学ぶスピードに合わせた「ホームスクーリング」を活用すれば、得意、不得意で左右される周囲との比較や、学習に対するストレス軽減に繋がるメリットがあるとの見方が増えたからである。
また、卒業認定試験を独自で受験し見事合格できれば、通常よりも早い段階で義務教育と高等学校制度で必要な教育を終えることも可能なため、大学進学あるいは就職活動開始時期までにできた余暇時間を、海外旅行や語学留学などに費やすることができるのも「ホームスクーリング」が注目される要素の一つだ。
忠実に取り組める学習方法の決定権は子供自身にあり!!
「ホームスクーリング」が合法化されているアメリカやカナダでは、両親自身が「ホームスクーリング」教育を受けて育った境遇の場合も多く、そうなると必然的に我が子にも「ホームスクーリング」を取り入れる流れが生まれるのだが、あくまでも自身の教育環境を選ぶ権利は子供自身にあることを忘れてはいけない。
子供自身に『学校に通いたい。』と願う強い意志がある以上、学校へ通学させる本人の意志に賛同する役割を両親は担う必要がある。
真剣に「ホームスクーリング」での教育を考えている家庭は、学習環境の拠点をどうしていくことが自分にとって適切なのかを、普段から子供との会話で話し合う姿勢を取ることが重要となる。な
ぜなら、「ホームスクーリング」を行っていた子供が途中から通学を希望しても、実際の学校生活の中で生まれる理想と現実の違いから、『やっぱり自宅学習の方が良い。』と考えを変えてしまうといったケースも少なくないからだ。
通学を希望するのであれば、最後まで学校での教育を終えることを自覚させ、「ホームスクーリング」を選択した場合でも、自宅でのんびり過ごすのではなく、自身の学習レベルに合わせた授業のカリキュラム通りに自宅学習を進めることを認識させ、いずれも「ホームスクーリング」が逃げ道として捉えてしまわぬように決定権を子供に委ねることが適切である。
我が子と二人三脚で挑む「ホームスクーリング」の実態
「ホームスクーリング」を実践している家庭の数だけ、様々な自宅学習方法が存在する。
両親が得意とする教科は、対話を交えながら直接親が子供に教え、その他の教科はオンライン授業で補うケースもあれば、得意な教科への知識を高めるために、専門分野に特化した学習塾での学習を「ホームスクーリング」と並行して行う家庭もある。
兄弟(姉妹)がいる場合は、お互いに勉強を教え合う時間を積極的に設ける家族もいるなど、「ホームスクーリング」教育は各家庭の特色が垣間見れる新しい教育のかたちだ。
1日の大半を自宅で行う「ホームスクーリング」教育では、規則正しい生活習慣の在り方を親から子へ教える過程も最大の課題とされている。
そのため、起床してすぐに、指定の時間に合わせて身支度を整えることや、家族と分担して行う家の清掃といった責任感と協調性をいかに家庭内で養わせるかが問われてくる。両親の賢明な判断と教養のノウハウが試される部分でもある。
「ホームスクーリング」導入家庭が必要不可欠としている心得
自宅を拠点する「ホームスクーリング」において、最も心配とされているのが、子供の内面的な成長だ。
「ホームスクーリング」を行う中で、ほぼ毎日会話をする対象が両親もしくは兄弟(姉妹)と限定されてしまうことから、育った環境や考え方が異なる大衆を相手とした時のコミュニケーション力、対応力に差が出てしまうのではないか。学校生活を経験していないことで、子供自身の集団行動への意欲や、人間関係を通して鍛えられる洞察力や観察力に偏りが見られてしまうのではないかと疑問を持つ人々も多いだろう。
しかし、「ホームスクーリング」を実践する家庭から聞こえてくるのは、『ホームスクーリングを行なっていることが問題なのではなく、どんな家庭環境で育ったのかが、我が子の人格を形成するものである。』といった前向きな答えばかりだ。
「ホームスクーリング」導入家庭では、いつどんな時でも子供が抱く悩みに一緒に向き合い、側で励まし合いながら、常日頃から子供に関心を置く両親の姿を見せることが、人間誰しもが必要としている大切な教養であるという明確な心得が定着している。
「ホームスクーリング」に抱くネガティブ要素はもう古い!!
日本では学校教育法の規定により、「ホームスクーリング」は認められていないが、様々な理由で登校が難しい児童に関しては、自宅学習を認めるといった対応が各学校で行われているケースもあるため、どうしても自宅学習が特別視されてしまう傾向が強い。
「ホームスクーリング」が合法化されている国々でも、未だ日本同様に学校へ登校しないことで、周囲から悲観的な印象を持たれることがあるというが、それは「ホームスクーリング」の実態が多くの人々に認知されていないだけである。
『ホームスクーリングは、多様化する教育方法の一つにしか過ぎない。』といった人々の寛容な価値観が世界的に主流となれば、自身の人生プランに合わせた自由な教育の場を実現できる時代がやってくる日もそう遠くはないはずだ。
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