東ヨーロッパに属する『ルーマニア』は、日本とほぼ同じ面積を誇り、姉妹都市提携を結んだことで日本との都市間交流も盛んなことから、日本と非常に深い関わりを持つ国といわれている。
ルーマニア西部の街『バイレ・フェリックス』には、リウマチや婦人系疾患の療養に活用される温泉保有地も存在し、こちらも日本との縁を感じる習慣だ。
また、ブルガリア、ウクライナ、ハンガリーなど複数の国々との国境を隔てた立地でもある『ルーマニア』には、隣国出身の移住者も多く、各々が自国の文化や風習を継承し合いながら生活している。
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神聖なのにユニークな場所?人気を集める奇想天外な観光スポット
ローマ帝国の領土であった時代にラテン系の血筋を引くローマ人が、ルーマニアに移住した歴史もあり、東ヨーロッパ唯一のラテン系民族として知られるルーマニアの人々。
そのため、開放的で陽気な国民性というイメージを持たれやすいのだが、その言葉通りルーマニアの『陽気さ』を強く象徴している場所がある。
それは、ルーマニア北部の『サプンツァ村』に静かに佇むカラフルな色彩が話題を呼んでいる『メリーセメタリー(Merry Cemetery)』と呼ばれる墓地だ。
青色を基調とした『メリーセメタリー』は、著名人の墓を巡る掃苔家(墓マイラーとも呼ばれている。)によって発見され、『世界一陽気な墓』として世界中から注目を浴びた。
世界中に『メリーセメタリー』の存在が発信されたのち、入場料を支払えば誰でも自由に墓地を見学できる、れっきとした観光地としての運営が始まった。
サプンツァ村に住む木彫り職人であったスタン・イオン・パトラシュという青年が、家族や友人の死を悼む大勢の人々の心を癒すことに繋がればという想いで、カラフルで明るい墓標を手掛け始めたことが『世界一陽気な墓』の由来とされている。
彼自身もこの『陽気な墓』の地で眠っている。
神聖な場所である墓地を観光地と表現するのは、心象的にはどこか無礼を働いているような気もしてしまう。
しかし故人の肖像画に加え、職業、人柄、生前故人が遺した詩、そして死因までを賑やかなデザインと色合いで描かれている墓標を目の前にすると、必ずまた来世で会えることを信じ、死というものに恐怖や悲しみという感情を抱かないルーマニア特有の死生観を間近で見せられている不思議な感覚にも陥る。
ルーマニアの古城「フニャド城(フネドアラ城)」にはドラキュラが住んでいた!?
『世界一陽気な墓』に続き、人々をあっと驚かせているのが、ルーマニアにまつわる『吸血鬼ドラキュラ』伝説である。
小説の架空のキャラクターとして誕生し、最近ではクライムサスペンスの題材にも取り入れられている。
そのモデルとなったのが、現在のルーマニア南部にあたる地域を従えていた君主、ヴラド3世(ヴラド・ツェペシュ公)だ。
彼が、小説『ドラキュラ』の主人公である『ドラキュラ伯爵』のモデルになった理由には諸説あるが、敵に対する残虐な拷問や戦い方で多くの犠牲者を出した彼の半生を、『ドラキュラ』の作者であるブラム・ストーカーが、ホラー小説の題材に反映させたといわれている。
ホラー好きの人々を中心に、ドラキュラ誕生の地と題して、生前のヴラド3世と縁のある古城や修道院を巡るツアーも開催されている。
中でも映画の世界からそのまま飛び出してきたかのような迫力を放つ、ルーマニア西部『フネドアラ』という都市に実在する「フニャド城(フネドアラ城)」は、実際に拷問部屋として使用されていた部屋を一般公開しているなど、終始圧倒される見所が満載となっている。
「フニャド城」は、ヴラド3世が幽閉されていた城ということで観光地として有名になった経緯もあるが、彼と「フニャド城」の関係を証明する記録はどこにも残っていないため、その真相は謎に包まれたままだ。
ルーマニアには、現在でも『魔女』を職業として生きる人々もいるため、オカルトやホラーの舞台になることが多い。
謎のベールに包まれた、現実世界では解明できない奇妙な魅力もまた、ルーマニアならではの特徴なのだろう。
陽気なイメージとは別に、厚い信仰心を受け継ぐルーマニアの人々
ルーマニアでは、国民の8割以上がキリスト教の正教会に属する『ルーマニア正教』を信仰し、月に一度のペースで必ずキリスト教に関連する宗教行事が執り行われている。
特に、イエス・キリストの復活を祝う『イースター』は、イースター休暇が設けられるほど、クリスマスよりも遙かに盛大に祝われている。
これは、信仰心の強いルーマニアにとって、キリストの復活を意味する日こそが、1年の中で最も重要な祝祭だと考えられているためである。
イースター当日には、各教会で大規模な礼拝が行われるため、公共交通機関や飲食店の休業も珍しくない。
これほどまでに熱心で、厚い信仰心を保ち続けるルーマニアの姿から、ルーマニアは伝承文化がとても強く生き続ける国だということが感じ取れる。その土地にまつわる風習や歴史には絶対の信頼を寄せ、時代が移り変わっても伝承だけは色褪せることなく受け継がれていく。
ルーマニアでドラキュラ伝説や『魔女』という職業が国から認められているのも、その事柄の真相を紐解くことよりも、その伝承自体を風化してはいけない、無くしてはいけないという次世代への継承に重点を置く人々が多いからではないだろうか。
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