乗り物

小田急線について調べてみた「地下二層式線路の完成」

首都圏には多くの私鉄が都心へと乗り入れています。

「京王電鉄」「東急」「西武鉄道」「東武鉄道」などなど。どこも、地下鉄への相互乗り入れや、線路の地下化など輸送力の強化に力を入れてきました。

なかでも、「小田急電鉄」、通称「小田急」は、線路の高架化、地下化、さらに複々線化などの工事によって大きく生まれ変わろうとしています。

今回は、この小田急の大規模な工事計画について調べてみました。

観光と通勤の足として

世紀の大工事!小田急線について調べてみた
【※ロマンスカー50000形「VSE」】

この会社は、小田急というより「ロマンスカー」のほうが有名かもしれません(笑)
新宿と箱根の玄関口である「箱根湯本」を結ぶ、観光客向けの特急列車です。一方で、神奈川県の西端にある小田原市までを結ぶ、通勤の足としても人気があります。

新宿から神奈川県を横断するように走る小田急線の沿線にはベッドタウンがいくつもあるためです。

しかし、小田原線、多摩線、江ノ島線の3路線、合計約120kmが都内に乗り入れることで慢性的な混雑が悩みとなっていました。さらに通勤電車に加えてロマンスカーも約30分に1本運行しているので、ダイヤも過密状態です。

そこで、1980年代になり、大きな工事に乗り出したのです。

目指せ!複々線化!


【※.小田急線路線図】

その工事は単純明快!

線路が足りないなら作ればいいじゃないか!という思い切ったものでした。路線のなかでも電車が集中する都内の区間をできるだけ、複々線化、つまり、それまで上下2本だった線路を4本に拡張するというものです。

とはいっても、すでに沿線は住宅などで空いている土地などありません。土地の買収費用も莫大なものになります。それでも、このような根本的な解決策に手をつけなければ超満員のラッシュ時を乗り越えられないと判断されました。

上り列車が多摩川を渡り、東京都に入った「和泉多摩川」から新宿の手前にある「東北沢」までの約10kmを複々線化するわけです。その多くは線路を高架化して踏み切りを無くし、沿線住民への騒音被害も抑えるというものでしたが、工事による騒音の問題などで裁判にまで発展し、ようやく完成しました。

地下二層式線路の完成

[※下北沢駅地下2階ホーム]

そして、一部の駅は地下化され、最後に残されたのが「世田谷代田」から「東北沢」の間、1.6kmとなります。ここがこの工事で一番の難所となりました。

この区間には「下北沢」を含めて3つの駅がありますが、すべてを地下化した上で、上下二層の構造としたんです。

それというのも、世田谷代田と東北沢は各駅停車しか停まらず、中央にある下北沢は急行が停まります。そこで、4本のうち2本を地下1階の各駅停車用に、残りの2本を地下二階の急行・特急用に振り分けました。これで、各駅停車が停まっている間に、急行や特急は別の線路を通ってスムーズに運行できるというわけです。

さらに地上にあった「開かずの踏み切り」も解消されました。2018年1月現在は、すべて急行用線路だけを使って世田谷代田と東北沢は仮ホームで営業していますが、3月のダイヤ改正に合わせて全面的に運用されるとのことです。

数字で見える効果

ここまでの工事をすることで、小田急ではラッシュ時の1時間に27本の本数を36本に増やしたいといっています。

現在、もっとも混雑する世田谷代田と下北沢間の混雑率は約189%だそうです。これは、立っていて体が触れ合い、新聞を読むこともできない状況です。

これが、ダイヤ改正後には160%くらいまで緩和されるといいます。あまり大きな差ではないように思えますが、160%だと新聞を楽な姿勢で読めるくらいだそうです。

そして、時間の短縮というメリットもあります。朝のラッシュ時に町田から新宿間は約48分かかりますが、複々線化後は38分になるとのこと。

そして、驚きなのがその投資額です。全体で約3,100億円!これは、小田急の一年間の純利益の10倍以上だそうです。でも、そこまでして「小田急は混んでいる」というイメージを払拭する背景には、他の私鉄に利用者が流れることを止めたいという考えがありました。

新幹線との意外な関係?!


【※3000形SE車】

小田急のもうひとつの顔が「観光客の輸送」です。

そのために生まれたのが「ロマンスカー」でした。2018年3月のダイヤ改正では、最新型の70000万系GSEが登場しますが、今までもロマンスカー・シリーズは小田急の顔として活躍してきました。

箱根へのより早いアクセスを目指して、途中の停車駅は最低で2駅となっています。全席指定の有料列車ですが、ビジネス客も多く利用するようになったため、小田急では座席数の多い「EXE」や、逆に座席数を減らして居住性を良くした「VSE」など、その時代に合った車両を投入しています。

しかし、意外なことにこのロマンスカーが新幹線の原型になったということを知っていますか?

実は、1957年に完成した3000形SEというロマンスカーは当時の国鉄との技術協力によって生まれた車両で、国鉄の東海道線での高速試験で世界最高速度となる145km/hを記録し、その技術が後の新幹線の開発に役立てられたそうです。

まとめ

首都圏以外ではあまり関心のない路線かもしれませんが、今回のような大規模な複々線化工事は、全国的にも珍しいでしょう。そして、ロマンスカーは新宿から箱根を最短70分ほどで結びます。

車内ではワゴン販売もあり、お弁当を食べながらゆっくり過ごす観光客もよく見かけます。

東京からちょっとした旅行気分を味わうにはもってこいですね!

関連記事:小田急
小田急線と沿線の観光名所について調べてみた

 

クロワ

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