健康

フロイト「喫煙がやめられない人の原因は幼少期の搾乳法にあり」

煙草がやめられない人は、口寂しさに最も苦しむ。

健康的には害でしかない煙草を辞められない理由には心理学的にもいくつかの理論があてはめられるが、その一説に「煙草を吸う人は小さい頃にママの搾乳を思う存分得られなかったから」という茶化した話がある。

しかし、これはあながち間違っていないという。

心理学の第一人者 ジークムント フロイト

フロイト「喫煙がやめられない人の原因は幼少期の搾乳法にあり」

※ジークムント・フロイト Sigmund Freud

ジークムント フロイト「Sigmund Freud」(1856-1939)といえば、オーストリアの精神科医であり夢診断、無意識、自由連想法など心理学における様々な研究を発表し、精神分析学の創始者として知られている。

彼はある日、長居する友人と談笑していた。食事はとっくにすんで、ただただ話をしているだけである。彼はその時、咄嗟に間違えてリビングの電気を消してしまった。

そしてその時初めて、彼は友人に帰宅してほしいのだと思っていることに気が付いた…そこから、人間には意識できていない無意識という層があるのではないかという考えに至ったという。

そんな聡明な研究者であるS,フロイトは、精神分析学の中で欲望、つまりリビドーの最初の発達は口から感じる快楽であり、幼児期、それも生まれたばかりの赤ん坊は生存のためからも本能的に乳を吸う。

口から得られた満足感は快楽にかわり、それはやがて信頼や肯定的で楽観的な性格形成に発達すると考えた。

心理性発達理論・・・口唇期、肛門期、男根期、潜伏期、性器期

S,フロイトは幼児の性欲に関して、その性が「口、肛門、男根、潜伏ののち、性器」に進んでいくと考えた。日本では敬遠されそうな内容なのでなじみが薄いが、欧米やアメリカではピアジェの発達理論と並んで重要視されているような理論である。

フロイトによれば生まれた時は口から乳を含み栄養をもらうことで満足感を得る。母親の優しい腕に包まれながら腹を満たす好意は至高の幸福である。ミルクにおいても、硬いスプーンやストローではなく、やわらかい乳首によってほどよい暖かさの液体をあげる。

これは、もちろん子どもの飲みやすさも考えたものであるが、どちらにせよ赤ん坊にとって授乳タイムは最高に至福の時である。そしてこの口唇期は2歳まで続くと考えられている。

口唇期固着

フロイト「喫煙がやめられない人の原因は幼少期の搾乳法にあり」

フロイトはさらに、それぞれの発達段階において満足に欲求が満たせなかった場合、その後の発達において重大な問題が起こると考えている。

性欲というと多くの大人が口を一文字に結んで「シーッ」と言ってしまうだろう。性に関する知識や経験は人間の繁殖、人間にとって無くてはならない重要な行為であるにも関わらず、愛や性に関することを日本ではあまり大っぴらに表現しない。ましてそれが子どもであれば、多くの大人がわざわざ触れさせようとはしないだろう。

口唇期では唇により快楽を得る。赤ん坊は母親のミルクを求めて泣くし、色々な物を口にいれて確かめようとする。その欲求が十分に満たされずに育つと、その段階の欲求に異様にこだわるようになる。これは口唇期固着(こうしんきこちゃく)と呼ばれる。

注意すべきは、満たされなくても固着するが、十分以上に満たされても同様に固着が起こってしまう。本人がもう満足だと思っているのに必要以上に与えることも、本人にとって不快もしくは不信に陥る原因になる。

口唇期固着が起きた結果大人になると…

あくまで一説であるが、乳離れが早すぎたり、口に物をいれることを過度に怒られたりすると、悲劇的であり不信に陥りがちな攻撃的な人格が形成される可能性がある。

あるいはもう十分に満足しているのに必要以上に授乳や詰め込むような食事のさせ方は、大人になりタバコやアルコール摂取の増加、爪噛みなどの行動が起こると考えられている。

性欲はいつから始まるか

フロイトに限ることでなく、発達において「性的な欲望」は生まれた時から備わっていると考えられている。

赤ん坊にとって、食欲や睡眠側欲と同時に、排尿や排便の欲望ももちろんある。そして、オムツを代える時などにおしっこが頻繁するのは冷気にふれて体が震えることもあるが、窮屈なオムツから開放されて気持ちが良いのであろう。この気持ちよさはまさしく大人の射精に通ずるものがある。

しかし、男性の勃起や射精のように魅力的な身体を見て興奮したりするのはまだ先であろう。1~3歳になると男性器を触ることが多いが、気持ちがいいことや、これはなんだろう?と思っているのもあるので、むやみやたらに触らせまいとするより、微笑んで受け入れてあげたほうがいいだろう。女の子が女性器を気にする場合は排泄物がきちんと拭けておらず痒くなっている場合もあるので注意である。

自分の娘、あるいは息子が性的な興奮をもった時の対応についても日本はかなり遅れている。

中学生や高校生が正しい性の知識を持たないままに行為に及び、妊娠してしまう事例も多くある。それを、若いのにそんな行為を!と叱るべきではなく、反省すべきは正しい知識と行為の意味を教えなかった大人である。

日本の性教育は「女性の性器は~男性の射精は~」という的外れな学習が多い。性に対して奥ゆかしい気持ちを持つことも大切であるが、人を好きになること、性行為を行うこと、子どもを作ることは決して悪いことではなく、ただ責任を伴うことから大切にするべきである、と教えていくことが必要ではないだろうか。

まとめ

フロイトによると性欲は生まれた直後から持っているものであり、それは成人を過ぎ、死ぬまで持ち合わせていると考えている。

食欲・睡眠欲・性欲という三大欲の中でも一番強い欲は性欲であり、性的な欲望を抑えることは自尊心の発達にも多大な影響を与えると考えている。いささか日本では過激ではないかと思われるが、彼は今尚心理学の世界において第一人者のまま数多くの学者に尊敬されており、フロイトの流れを汲んだ研究は現在も続けられている。

彼の性に関する考えは、決して的外れではなく、むしろ現代の我々がしっかりと知っておくべき事柄であろう。

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