施設

知られざる客室清掃業の仕事とは? 「客室の清潔さがホテルの信頼を物語る」

旅行先で期待することといえば、観光地で過ごす充実した時間や絶景スポットでの写真撮影が真っ先に思い浮かぶ。

それと同時に、日常を忘れてゆっくり寛ぐための空間である宿泊先への期待を大きく抱く人々も多い。

特に大浴場や、各部屋に半露天風呂を完備しているホテルが定着しつつある日本では、宿泊施設に対する期待値は非常に高い。

上質な顧客対応はもちろんだが、部屋の隅々まで行き届いた清潔感こそ、ホテルの信頼と魅力を引き出しているともいえる。

今回は、そんなホテルの快適な空間を支え続ける「客室清掃の実態」について調べてみた。

「快適で心地良い空間を創り上げる」客室清掃という仕事

知られざる客室清掃業の仕事とは?

画像:客室のドアを開ける様子 Pixabay

「ホテルの信頼は客室清掃の完成度で決まる。」

そう表現されるほど、客室の清潔さはホテル利用価値の判断基準をも左右する。

ホテルへの大きな期待を寄せる人々の大半は、現実から離れ、非日常を味わう旅行者である。そのため、心地よい休息や睡眠を取ることへのこだわりも強い。自宅同様に寛げる空間と、隅々まで行き届いた清掃の成果を実感できてやっと、旅行の満足感が満たされる人もいるほどだ。

そんな旅行にかける人々の特別な想いを迎え入れ、快適で心地良い空間を創り上げるのが「客室清掃」という仕事である。

短時間で完璧な清掃をこなすスキルアップが日々、求められる業務だ。

清掃から応対業務まで多彩なスキルが求められる客室清掃

客室清掃の業務は、当然ながら自宅で行う部屋の掃除とは規模が違う。一言でいえば、「時間との真剣勝負」だ。

指定されたチェックイン時刻までに、快く販売できるクオリティの高い部屋を仕上げる必要があるからである。

多くのホテルでは、個人の実力に応じて担当する部屋を割り当てているが、1人で11〜15部屋の清掃を受け持つのが一般的となっている。

1室にかけられる清掃時間は平均で20分程度とされている。指定された部屋の清掃を順番にこなしていくだけの仕事にも感じられるが、自身の退勤時間を見据えた時間配分を意識しながら業務にあたらなければならない。客室清掃を的確にこなす柔軟性が重要となる。

その柔軟性が維持できていなければ、イレギュラーな対応を求められたとき、判断力はおろか、清掃の完成度にも影響が生じる。

客室清掃の仕事は、時間・体力・精神のバランスが業務に反映される職業と言っても過言ではない。

知られざる客室清掃業の仕事とは?

画像:清潔に整えられたバスルーム Pixabay

また、顧客との対面が少ないことから客室清掃は「裏方業務」というイメージが未だ根強く残る。

しかし実際は、顧客からの直接的な清掃依頼を受けたり、清掃の有無を確認したりと丁寧な接客対応も求められる職業である。一人での作業がメインとなる客室清掃スタッフにも、販売業と変わらない明るい笑顔や、気配りが求められてくる瞬間が多々ある。

ホテルの評価にも影響する全スタッフの接客態度。

快適な部屋を創り上げる客室清掃スタッフにとって、好感のもてる笑顔と挨拶は部屋への美意識と同じぐらい重要なものとなっている。

客室清掃スタッフが抱く使命感の先にあるもの

客室のドアを開けた瞬間から大きな課題にぶつかることもあるのが客室清掃という仕事である。

それでも業務に邁進し続けるのは、「限られた時間の中で、自らの手で快適な空間を創り上げる」という強い使命感があるからだ。

その強い使命感のきっかけとなるのが、宿泊者から寄せられる賞賛の声である。

ホテルの清潔感に満足感を覚えた顧客が残した感謝の言葉には、仕事へのやり甲斐と自身のモチベーションを高める力があるという。

部屋がきれいでした。」「いつもありがとう。」といったメッセージには、客室清掃スタッフへの感謝を表現すると共に「清潔で快適なホテルだった。」という信頼の気持ちが込められているからだ。

自分が手掛けた部屋の清潔さがホテル全体の評価へと繋がる達成感は、客室清掃スタッフのみが味わえる特権ともいえるだろう。

知られざる客室清掃業の仕事とは?

画像:メッセージカード

素早く丁寧な清掃を必要とされ、ときには臨機応変な気配りを求められる客室清掃。ホテルという空間に自宅同様の安らぎを実感できるのも、そんな客室清掃スタッフの見えない努力があるからである。

一時期は観光業の衰退と、療養受け入れの対応で目まぐるしく変わる業務内容に不安ばかりが募る日々もあっただろう。「快適な空間を提供する仕事」がいつしか、感染対策という理由で「閉鎖的に近い空間を意識するもの」へと変わり、憤りを感じることもあったに違いない。

人との距離が制限される現在も、ホテルとホテルを利用するすべての人々の日常を支えている客室清掃スタッフ。旅の制限が緩和されつつある今こそ、清潔さと安心を届ける客室清掃という仕事を身近に感じられる。

自身の旅の記憶の中に、快適なホテルの印象が刻まれた時にはぜひ、客室清掃スタッフへの感謝を言葉にして伝えてほしい。

 

草の実堂編集部

投稿者の記事一覧

草の実学習塾、滝田吉一先生の弟子。
編集、校正、ライティングでは古代中国史専門。『史記』『戦国策』『正史三国志』『漢書』『資治通鑑』など古代中国の史料をもとに史実に沿った記事を執筆。

✅ 草の実堂の記事がデジタルボイスで聴けるようになりました!(随時更新中)

Youtube で聴く
Spotify で聴く
Amazon music で聴く
Audible で聴く

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事

  1. アイヌ民族の特徴とアイヌ語
  2. 戦国時代の古戦場が身近な場所に!古い地名に秘められた歴史のロマン…
  3. 沖縄の離島・座間味島に行ってみた 「予想以上にキレイな海と静かな…
  4. 成年後見制度について分かりやすく解説 「種類やできることできない…
  5. プリンス・エドワード島の魅力 「カナダで一番美しい島 赤毛のアン…
  6. 北朝鮮の観光事情について調べてみた【日本人も行ける!】
  7. ポルトガル旅行の魅力 〜「物価の安さ、カラフルな街並みと日本に近…
  8. 『都心から一番近い蒸気機関車』秩父鉄道「SLパレオエクスプレス」…

カテゴリー

新着記事

おすすめ記事

なぜ中国は常に強気なのか?歴代王朝の滅亡パターンと「農民反乱」の恐怖とは

連日のように報道される、中国による強硬な外交姿勢や、威圧的な軍事行動。テレビ越しに見…

寛喜の飢饉とは 「鎌倉時代に人口の3割が亡くなった大飢饉」

「寛喜の飢饉」とは?「寛喜の飢饉 : かんきのききん」は、鎌倉時代に起こった最大の飢饉と…

武士の嗜み「武芸四門」とは?武田軍の最高指揮官・山県昌景(橋本さとし演)かく語りき【どうする家康】

武田軍の最高指揮官山県昌景 やまがた・まさかげ(飯富昌景 おぶ・まさかげ)[橋本さとし]…

「集団リンチ、暗殺、糞便食わせ、畳一畳に18人」 地獄すぎる小伝馬町の牢屋敷生活

小伝馬町の牢屋敷とは小伝馬町の牢屋敷は、現在の東京都中央区立十思公園周辺一帯にあった牢屋…

唐の皇帝が宮女を外出させたら⋯ なんと一晩で3000人が逃走!

宮廷での仕事古代中国の封建社会において、宮廷は皇帝や后妃の他、多数の宮女や宦官が日常業務…

アーカイブ

人気記事(日間)

人気記事(週間)

人気記事(月間)

人気記事(全期間)

PAGE TOP