令和5年(2023年)の干支は癸卯(みずのとのう)。いわゆるウサギ年ですね。兎(ウサギ)は跳ねる動物ですから、世の景気も弾みがついて欲しいところ。
今回はそんなウサギ年に使いこなしたい、兎に関することわざを一挙紹介。よく知られているものから、知っていると一目置かれるものまで、さりげなく会話に弾みをつけられるかも知れません。
目次
兎が波を走る
意味:理解が浅い様子。
概説:波打ち際に月が映ると、兎が走っているように見えます。しかし兎は水が苦手なため、深く遠く泳ぐことはありません。それで、仏道の悟りなど理解が浅い様子を示すようになったそうです。
「アイツは兎が波を走るようなもので、大して分かっちゃいないんだ」
兎死すれば狐之(これ)を悲しむ
意味:明日は我が身。真心のない悲しみ。
概説:兎が死に絶えれば、それを食う狐も遠からず餓死するでしょう。それを悲しんで(自分の利害や私欲から)泣くのであって、別に兎の死を悼んでいる訳ではありません。
「葬儀に来るなんて、アイツも意外と律儀だね」
「ふん、兎死すれば狐之を悲しむってヤツさ」
兎に祭文(さいもん)
意味:無駄なこと。また上の空。
概説:馬の耳に念仏と同じ意味。長い耳でよく聞いているかと思いきや、何も理解していない様子を言います。
「まったく人の話を聞いてない。こりゃ兎に祭文だね」
兎の産み放し(ひり放し)
意味:無責任。
概説:兎は子供を産んだら産みっぱなし(実際にはお乳を与えるなど最低限のことはしているはず)、あまり子育てをしない事から。似たことわざに「兎のひり放し(排泄し放し)」もありますが、あまり品がよくないので、使用はおすすめしません。
「まったくいつも兎の産み放し、片づける身にもなっとくれよ」
兎の毛で突く
意味:何の効き目もないこと。
概説:ラビットファー(毛革)を触った方なら実感するでしょうが、兎の毛はとても柔らかいため、いくら突いても痛くありません。
「へっ。そんな説教なんて、兎の毛で突いたようなもんだ」
兎の逆立ち
意味:耳が痛いこと。
概説:もし兎が逆立ちしたら耳が地面につかえて痛そうです。転じて、忠告やアドバイスなど耳が痛い様子を指すようになりました。
「兎の逆立ちかも知れないが、年寄りの言うことは聞いて置くもんだよ」
兎(う)の字
意味:退職すること。
概説:お役御免の「免」が「兎」と似ているため、隠語として使われるように。
「アイツ最近見ないと思ったら、兎の字だって?」
兎の上り坂
意味:絶好調。
概説:兎は前足が後脚より短いため、上り坂が得意なことに由来します。逆に下り坂は苦手で、恐る恐る下りて行くそうです。機会があったら見てみたいですね。
「得意分野の仕事で成果を出せたよ。今年は兎の上り坂だね!」
兎の昼寝
意味:油断すること。又それによる失敗。
概説:昔ばなし「ウサギとカメ」に由来します。ゴールしてから寝れば良かったのに……。
「兎の昼寝で負けたって?まったく目も当てられないな」
狡兎三窟(こうとさんくつ)
意味:リスク対策を講じること。
概説:兎はいつ襲われても安全を確保できるよう、常に巣穴を複数用意しておく習性があります。私たちも、十分なリスク対策を講じておきたいものです。
「株式投資が不調なら、金現物や債権も用意してある。狡兎三窟ってヤツさ」
狡兎尽きて走狗(そうく)烹(に)らる
意味:用済みで粛清される。
概説:兎を狩り尽くせば、猟犬(走狗)は不要になるから煮て(烹て)食われる運命です。「飛鳥(ひちょう)尽きて良弓蔵(しま)わる」とペアで使われることも。
「あれだけ会社の再建に尽力したのに、安泰となったらリストラかい」
「まさに狡兎尽きて走狗烹らる、だね」
三月兎(さんがつうさぎ)
意味:好色漢、気のふれた者。
概説:発情期を迎えた兎の荒ぶる様子から。童話『不思議の国のアリス』に登場するキャラクター・三月兎はこれに由来するとか。
「三月兎じゃあるまいに、少しは落ち着きなさい!」
守株待兎(しゅしゅたいと)
意味:一度の幸運を再び期待すること(その幸運は二度と巡らない)。
概説:たまたま兎が切り株にぶつかり、その肉を手に入れた者が味をしめて、次の非からずっと待ち続けた故事によります。「柳の下のどじょう」と同じですね。
「ビギナーズラックで一発当てたからって、次も来るとは限らない。このままじゃ守株待兎だ」
脱兎(だっと)の勢い
意味:兎が逃げ出す時のような勢い。
概説:巣穴から脱出する兎の様子が目に浮かぶようです。ケージから脱走した時も、捕まえるのが大変でした。
「アイツなら、部長の顔を見た途端に脱兎の勢いで逃げ出して行ったよ」
兎角亀毛(とかくきもう)
意味:ありえないこと。強引に押し通すこと。
兎に角はなく、亀に毛は生えません。しかしそれをあえて押し通すことを「とにかく」と言います。
「そんな話しは兎角亀毛の絵空事、協力はできないな」
「兎角亀毛でもやりとげる。だから一口乗ってくれないか」
終わりに
以上、兎にまつわることわざを紹介してきました。
これ以外にも「二兎を追う者は一兎も得ず」「三年なぶれば兎も咬みつく」など色々あり、昔から兎が人々の身近な存在であったことがわかります。
令和5年(2023年)も兎の上り坂になれるよう、フットワーク軽く前向きに過ごしたいですね!
※参考文献:
- 『旺文社 標準ことわざ慣用句辞典』旺文社、2020年12月
- 『三省堂 中国故事成語辞典』三省堂、2010年7月
- 『三省堂ポケット 故事成語辞典』三省堂、2007年2月
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