不思議

かごめかごめの歌詞の違いについて調べてみた

はじめに

かごめかごめ
籠の中の鳥は
いついつ出やる
夜明けの晩に
鶴と亀が滑った
後ろの正面だあれ?

鬼役の子が両手で目を隠して真ん中にしゃがみ、その子を囲んで、輪になった他の子達が手を繋ぎ歌いながら回る。歌い終わると同時に回っていた子達はしゃがみ、鬼役の子が自分の真後ろにいるのが誰なのかを当てる――。

かごめかごめ』は、そんな遊び歌です。
かごめかごめの歌詞の違いについて調べてみた

大体の地域では最初に記した歌詞であると思うのですが、地域によっては歌詞が異なっているのです。
そこが、『かごめかごめ』が不思議に感じられる特徴の1つでもあると思います。

そんな『かごめかごめ』の歌詞に焦点を当て、今回は調べてみました。

地域によって異なる歌詞

各地域の『かごめかごめ』は、先に記した歌詞と比べて「僅かに歌詞が異なっているもの」と、「大きな違いが見受けられるもの」に分かれます。

僅かな違いの場合は、「鶴と亀が」の部分が「鶴と亀と」になっているだけなど、本当に些細な違いです。

今回は歌詞と大きな違いがあるものを中心に調べてみました。

鍋の底を抜く事が記されている歌詞

かごめかごめ
籠の中の鳥は
いついつ出やる
夜明けの晩に
つるつる滑った
鍋の鍋の底抜け
底抜いてたもれ

こちらの歌詞では、籠の中の鳥は出てきますが、「鶴」や「亀」といった具体的なものは出てきません。
「鶴」の部分が「つるつる」と、「滑った」にかかる表現となっています。

『かごめかごめ』は江戸中期以降の文献に出てくるのですが、実は「鶴」や「亀」といった言葉は、明治末期より前の文献では確認されていないのです。

修験僧であり悉曇学者あった「行智(ぎょうち)」がまとめた童謡集『竹堂随筆(ちくどうずいしゅう)』は、宝暦・明和年間(1751年~1772年)頃に収録されたとされているのですが、その中の『かごめかごめ』にも、「鶴」と「亀」は出てきません。

その箇所の歌詞はと言うと、

つるつるつっぺぇつた
なべのなべのそこぬけ
そこぬいてーたーァもれ

となっているのです。

また、「鍋の底」いう歌詞が出てきましたね。

ちなみに「たもれ」は、「賜(たも)る」の命令形です。「たまわる」が変化した「たもうる」から更に転じたものですから、「~下さる」「~くれる」の命令形となります。

つまり、「鍋の底を抜いて下され」と言っている事になります。

そして面白いのは、「かごめかごめ」の遊びには欠かせないと思える「後ろの正面だぁれ」の歌詞がないところですよね。

鳥居や番人、少年が出てくる歌詞

籠目籠目
加護の中の鳥居は
いついつ出会う
夜明けの番人
つるっと亀が滑った
後ろの少年だあれ?

こちらは、ガラリと印象が変わる歌詞となっています。
一番の違いは、なんと言っても「籠の中の鳥」ではなく、「加護の中の鳥居」となっているところです。
「加護」とは、神仏が力を与えまもり助けることを言いますし、「鳥居」が歌詞に入っているという事から、なんだか神社を彷彿とさせますよね。

また、「夜明けの晩」の部分が「夜明けの番人」となっているところも、意味ありげな印象を受けます。

それに加え、「後ろの正面だあれ?」の部分が「後ろの少年だあれ?」になっています。
ただ単に「後ろの正面にいるのは誰か?」と聞かれるよりも、「後ろにいる少年は誰か?」と聞かれる方が、なんだか身震いするような恐怖を覚えると思いませんか?

不思議な印象を与える「かごめかごめ」の歌詞の中でも、不気味さや怖さがより強く感じられる歌詞であると思います。

鶴と亀が八日の晩に滑る歌詞

かごめかごめ
籠の中の鳥は
いつもかつもお鳴きゃぁる(お鳴きやる)
八日の晩に
鶴と亀が滑ったとさ
ひと山 ふた山 み山 越えて
ヤイトを すえて (お灸を据えて)
やれ 熱つ や(やれ熱や)

こちらは「八日の晩」といった意味ありげなものや、「ヤイトをすえて」と少し物騒な言葉が出てくる歌詞となっています。
「ひと山 ふた山 み山 越えて」と3つの山を越えて、となっている歌詞も「何かを意図しているのでは?」と思わせるものとなっています。

「そして八日の晩」は、家を訪れ害をなす妖怪や悪神などを防ぐ為の『事八日』と呼ばれる行事をも彷彿とさせる歌詞となっています。
これは地域によっても異なるのですが、事八日は『目籠』などを戸口や軒下に掲げて魔除けにする行事です。その部分でも「何かしら繋がりがあるのかもしれない」とも思えます。

ちなみに「いつもかつも」は、「しょっちゅう」や「四六時中」の意味となります。「籠の中の鳥は四六時中鳴いている」のです。
そして「ヤイトをすえて」は「お灸を据える」の意味です。「灸で治療をする」という意味もありますが、「きつく注意したり罰を与えて懲らしめる」という意味もあります。
後者の意味ではないか、と思えますよね。

最後の「やれ熱つや」の歌詞からも、熱いヤイトをすえられて懲らしめられている、もしくは苦しめられている様子を想像してしまいます。

最後に

今回は、地域によって違う「かごめかごめの歌詞」を幾つかご紹介しました。
「口頭で伝えられたものが聞き間違えてしまったのでは?」と思えるものから、「知っている歌詞よりも不気味さが増している」と思えるものなど、色々とあったのではないでしょうか?

色々な仮説を立てつつ、皆様にも楽しんで頂けてましたなら幸いです。

関連記事:
かごめかごめについて調べてみた
『かごめかごめ』の不可思議な歌詞について考察
とても怖い?! ゆびきりげんまんの由来

✅ 草の実堂の記事がデジタルボイスで聴けるようになりました!(随時更新中)

Audible で聴く
Youtube で聴く
Spotify で聴く
Amazon music で聴く

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事

  1. 【聖剣エクスカリバー】アーサー王伝説について調べてみた
  2. 「思い込み 」について調べてみた【ミスディレクション】
  3. この地球は樹木の残骸でできていた
  4. 【母親の愛が幽霊となって残る】夜な夜な飴を買い続けた「子育て幽霊…
  5. 厄払いの側面から陰陽師を調べてみた【護符も自分で書ける】
  6. 古代の超大陸について調べてみた【 パンゲア大陸 】
  7. 引き寄せの法則は『波動』で説明できます、の波動ってなんだ?
  8. 西洋魔術 について調べてみた【オガム・ルーン文字】

カテゴリー

新着記事

おすすめ記事

長篠の戦いの本当の理由 「武田軍は鉛が欲しかった」

前編では、長篠の戦いにおける織田軍と武田軍の実像について解説した。今回は、長篠の戦いのシミュ…

日本に中国における「パンダ」の関係 【パンダ痴漢】

パンダの可愛らしい仕草は、子供から大人まで魅了する。パンダの繁殖には多くの人が関心を…

天竜川の救世主・金原明善って知ってる? 幕末から大正まで大活躍の生涯を調べてみた

信州の諏訪湖を水源に、愛知県・静岡県を経て遠州灘へと流れだす天竜川。名前の由来は速い水流が天に昇る竜…

古代中国の美人メイクとは 「地雷メイク、美白、フェイクエクボが流行った」

中国人の化粧TikTokなどで、中国人の女性が素顔からメイクする過程を撮影した動画をよく見かける…

【武蔵陵墓地】 大正・昭和天皇と皇后たちの眠る場所

東京都八王子市に位置する武蔵陵墓地は、日本の歴史と皇室文化を感じることができる特別な場所である。…

アーカイブ

PAGE TOP