日本史

桃太郎伝説はどこから始まったのか 「実際の人物がモデル?」

桃太郎の知名度

筆者は台湾に住んでいるのだが、なんと台湾でも桃太郎は有名で歌まで浸透している。しかも中国語版ではなく日本語版である。

1987年には「新・桃太郎」と題し映画化までされており、資料を見てみるとなんとも斬新な内容だった。

桃太郎伝説はどこから始まったのか

新・桃太郎(台湾の映画)

私事であるが、筆者の生まれ故郷は桃太郎の発祥地岡山である。
岡山県の知名度はあまり高い方ではなく、2020年の都道府県知名度ランキングによると33位である。
だが、桃太郎の昔話は知名度一位だそうである。

桃太郎は

大きな桃の実から生まれた男の子「桃太郎」が、お爺さんお婆さんからもらった黍団子を持って鬼退治に行き、その道中でイヌ、サル、キジと出会い黍団子を渡して一緒に鬼を退治しに行く。そして鬼の財宝を持ち帰り郷里に凱旋する

というおとぎ話である。

作品によって場面ごとの違いはあるが、どの作品でも桃太郎側視点での勧善懲悪物語となっている。

口承文学の異伝

桃太郎伝説はどこから始まったのか

桃太郎の誕生について最も一般的なのは、

お婆さんが川へ洗濯に行くと、河上から大きな桃がどんぶらこどんぶらこ…と巨大な桃が流れてきて、お婆さんがそれを持ち帰って割ってみると、中から男の子が出てくる

というものである。

その他には「赤い箱と白い箱が流れてきて、赤い箱を拾ったら中に赤ん坊が入っていた」など、差異のあるものも多く伝わっている。

桃太郎の成長過程については働き者の良い若者に育ったとする場合もあるが、力持ちに育ったが怠け者で寝てばかりだったという話も残っている。つまり三年寝太郎型の桃太郎である。

鬼退治にしても鬼を海中に投げて宝物をとって帰ったり、鬼に酒を飲ませて退治したりする話もある。

広島県、愛媛県の桃太郎は家来もなんだか興味深い。

イヌ、サル、キジ」ではなく「石臼、針、馬のふん、百足、蜂、蟹」であり、鬼退治にはあまり役立ちそうもない面々である。まるで猿蟹合戦のおとぎ話を彷彿とさせるメンバーである。

発祥

それぞれのおとぎ話は実際の人物がモデルになっていたり、歴史上の出来事をもとに語り継がれてきたケースもある。

桃太郎伝説はどこから始まったのか

歌川国芳『日本百将伝』より吉備津彦の想像図

ある資料によると、桃太郎は大和朝廷による瀬戸内地区の連合豪傑である吉備(岡山地区の当時の呼び名)の勢力に対する征服統合の過程とし、記紀に象徴的に記載される吉備津彦命の神話が民間伝承として変質して伝えられたものだとされる。

吉備津彦命は日本書紀や古事記にも記述のある吉備の英雄で、吉備国平定を果たした人物とされる。

岡山県岡山市には吉備津彦神社があり、吉備津彦命を祀っている。

桃太郎ゆかりの場所

岡山県には、多くの桃太郎ゆかりの場所がある。

一つは岡山県総社市にある「鬼ノ城」である。鬼ノ山に築かれた古代山城で大和朝廷時代に建てられた。

築城主など詳しいことはわかっていないが、この城に温羅(うら)と言う鬼が住んでいたとされる。「渡来人で空が飛べた、大男で怪力無双だった、大酒飲みだった」等の逸話が残っている。

桃太郎はどこから始まったのか

鬼ノ城

瀬戸内海には鬼ヶ島が実在する。

正式には女木島という名前で、高松港の沖合4kmの瀬戸内海に浮かぶ島であり鬼ヶ島のモデルであるとされる。

伝説によるとこの島には当時海賊がいて、そのまま鬼のモデルになったとされている。

女木島は、桃太郎伝説発祥の地として観光スポットとなっている。

桃太郎ゆかりの商品

そういうわけで、桃太郎は岡山県の観光大使のような存在である。桃太郎にまつわる商品も多く出回っている。

黍団子は吉備団子と名前を変え、岡山の有名菓子店はこぞって商品を販売している。要は黍で作られた団子であるが、最近では色々な味の色々な食感の吉備団子が販売されている。

また、岡山特産の白桃は「純白の白い肌、芳醇な香りと繊細で上質な甘味」が特徴で美味である。

岡山県のマスコットキャラクター「ももっち」は、2005年のおかやま国体の時に誕生し、現在まで各地のイベントで活躍している。

岡山県公式キャラクターももっち

桃太郎は、単純明快な内容とどんな人にも好感を抱かせる勧善懲悪ストーリーである。

もっと多くの外国人にも知ってもらいたいものである。

 

草の実堂編集部

投稿者の記事一覧

草の実学習塾、滝田吉一先生の弟子。
編集、校正、ライティングでは古代中国史専門。『史記』『戦国策』『正史三国志』『漢書』『資治通鑑』など古代中国の史料をもとに史実に沿った記事を執筆。

✅ 草の実堂の記事がデジタルボイスで聴けるようになりました!(随時更新中)

Youtube で聴く
Spotify で聴く
Amazon music で聴く
Audible で聴く

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事

  1. 男を破滅させる美女たち…神話と伝承に見る「恐るべきハニートラップ…
  2. モアイだけじゃない!イースター島の「鳥人間伝説」とは
  3. なぜ『古事記』は作られたのか?作成背景とその目的を探る ~古事記…
  4. 忍者はどのような存在だったのか? 「忍術と流派 ~現代の忍者 川…
  5. 闇淤加美神(くらおかみのかみ)について調べてみた【貴船神社】
  6. 「デカい!怖い!」恐るべき『巨大な女妖怪』たちの伝承
  7. 明智光秀の有能さと戦歴について調べてみた
  8. なぜ「鬼」と呼ばれるのか?子育てと安産の女神『鬼子母神』の由来

カテゴリー

新着記事

おすすめ記事

【金閣寺は国宝ではない?!】国宝の意外なトリビア5選

2017年は国宝という制度が始まって120年という節目の年である。その数、実に1,100点以上。…

女を部屋に誘う【漫画~キヒロの青春】⑬

男の罪悪感【漫画~キヒロの青春】⑭ へ…

武衛は必見?第15回放送で非業の死を遂げた上総介広常。その子孫たちを一挙紹介【鎌倉殿の13人】

NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で佐藤浩市さんが熱演した坂東の巨頭・上総介広常(かずさのすけ ひろ…

『天皇が誘拐したほどの美女?』後醍醐天皇が最後まで愛し続けた西園寺禧子とは

南北朝時代といえば二人の天皇が存在するという、長い日本の歴史の中でも異例の時代だった。その南…

「大量虐殺に繋がった史上最悪の偽書」 シオン賢者の議定書

史上最悪の偽書「シオン賢者の議定書」とは、ユダヤ人・民族を貶める目的で流布された史上最悪…

アーカイブ

人気記事(日間)

人気記事(週間)

人気記事(月間)

人気記事(全期間)

PAGE TOP