日本史

【くずし字に挑戦】読める…読めるぞ!地元神社に佇む石碑の文字がここまで読めた!

地元神社の境内にたたずむ一基の石碑。

もう永く放置されていますが、その碑面には弘法大師(こうぼうだいし。空海)様が刻まれています。

この周りには「くずし字」で何か書いてありますが、なかなか読むことが出来ません。

今回は、このくずし字を読んでみたので、その解読記録を紹介したいと思います。

全体の文章を眺めてみよう

まずは読める部分だけ拾ってみましょう。

読めない文字も■で表記します。

境内の石碑。何て書いてあるのだろう?筆者撮影

高野山奥之院

■■や
■■乃山の
■■(※もしくは■)可■(※■■の可能性も)丹
大師は
今■
■わしまし■す

どうやら、短歌(五七五七七)のようですね。

冒頭の高野山奥之院とは、弘法大師がおわす(※いまだ存命とされています)高野山を指しているのでしょう。

想定される読みから文字を推測……上の句

大師様は実にありがたい存在……もしかして、最初の五は「有難や」かも知れません。

そうやって見当をつけてみると……確かにそんな形をしているようです。

まずは仮に当てはめてみて、今後よりしっくりくる読みが出たら、入れ換えましょう。

次の七……今度は「『高野』乃山の(こうやのやまの)」かも知れません。

ここまで「有難や 高野乃山の」と、ちゃんと意味が通じます。

続く五……こちらはどうでしょうか。

始めの文字は山冠(がついた一文字)かも知れませんし、小+もう一文字かも知れません。

続く文字(2or3文字目)は「可」で「か」と読みます(これは知っていました)。

最後の文字は「丹」で読みは「に」、これも知ってたので確定させましょう。

ここまでの推測を元にすると

1.■■か■に

2.■か■■に

3.■か■に

恐らくこのどれかと推測されます。

今回は頭一文字を、山冠の漢字「岩」と仮定しましょう。

岩か■に

これを「岩か■+に」とした場合、岩陰(いわかげ)とするのが自然に思えます。

「有難や 高野乃山の 岩陰に」

確かにしっくりくるでしょう。しかし下から二文字目は、「け(濁点は省略される)」と読むのでしょうか。

可と丹の間を凝視すると、「人?+ゆ?」のような文字(部首?)が刻まれています。

もしこれを一文字で「け(げ)」と読むなら、元になった漢字は何でしょうか。

※くずし字は現代の平仮名でなく、漢字を元に書いているケースも少なくありません。

うーん……分からない時は一回飛ばして、また何か閃いたら戻って来ましょう。

※後で読み返したら、やっぱり「け」でした。元の漢字は「希」です。そう言えば希有(けう)とか読みますもんね。

何も最初から順番に解かねばならないという決まりはありません。

後の文章から、前の文章が浮かび上がることも間々あるものです。

これでひとまず、上の句は完成しました。

ラスト一文字が分からない……下の句

それでは続いて、下の句に移りましょう。

大師は今■

■わしまし■す

こちらは文字の形がハッキリしていて、かつ現代の文字と概ね同じだから、ほとんど読めますね。

今の次は、乎(や)?于(う)?手?悩んだ時は一回飛ばし、後で見直しましょう。

下七文字の一文字目は「於(を)」ですね。そして下から二文字目は「満(ま)」でした。

つまり、下七文字は「おわしまします」つまり「居(お)わし座(ま)します」と読めるでしょう。

居わす:いらっしゃる+座す:鎮座されている、で上七文字の大師様をいかに尊んでいるかが分かります。

上七文字と合わせると

「大師は今■ 居わし座します」

果たしてラスト一文字は何でしょうか。文字の形を見ると……?

于?予?手?

どれも下の句に当てはめるにはしっくり来ません。

その後、色んなくずし字と比べてみても、しっくり来る文字が見当たらず難航。

また逆に、推測される読み(例えば「も」など)から探してみても、こちらもしっくり来ません。

もしかして、これは置き字なのではないでしょうか。

置き字とは漢文に用いる手法で、読まないけど意味を持たせる時に挿入します。

例えば于なら場所や状況を示すので、「今」にかけているのかも知れません。

つまり、下の句は「大師は今于 居わし座します」と考えられます。

この今于の読みが「いまに」なのか「いまも」なのかはわかりませんが、今という場所や状況に大師様がおわします意味は通じました。

俺たちのくずし字解読はこれからだ!

画像:絹本著色弘法大師像 public domain

有難や 高野乃山の 岩かけ(陰)に
大師は今于(~も?~に?) 於わしまし満す

【意訳】実に有難いことだ。今でも弘法大師様は、高野山の岩陰にいらっしゃり、私たちのためにお祈り下さっている。

……正確性には疑問点が残るものの、ひとまずはこれが筆者の力量ということで、ここまでとさせていただきます。

なお、この石碑は大正5年(1916年)6月に、有志が建立したものです。

100年以上の永い歳月を経たことから、途中で折れてしまいましたが、それでもなお弘法大師への信仰を令和の現代に伝えています。

まだまだ未熟なくずし字解読ですが、これからも精進を重ね、少しでも先人たちの思いを汲み取っていきましょう!

※参考文献:

・山本明『古文書を楽しく読む!よくわかる「くずし字」見分け方のポイント 新版』三松堂、2019年11月
文 / 角田晶生(つのだ あきお) 校正 / 草の実堂編集部

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角田晶生(つのだ あきお)

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