鎌倉殿の13人

すごいすごい!鎌倉殿も御家人たちも大はしゃぎした鷹匠・桜井斎頼のエピソード【鎌倉殿の13人】

幼くして第3代の鎌倉殿となった源実朝(みなもと さねとも)。政治的な事情とはいえ、その双肩に坂東武者たちの命運を担わせるのは非常に酷なものでした。

NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」では柿澤勇人さん(満35歳)が演じているためあまりそう感じないものの、北条時政(演:坂東彌十郎)が出家した元久2年(1205年)時点で実朝は14歳(建久3・1192年生まれ)。

現代ならまだ中学生、皆さんも当時はまだ遊びたい盛りだったことでしょう。

そんな実朝少年は過酷な現実の合間でも好奇心旺盛、御所へ出入りする様々な人々に興味津々でした。

今回は実朝少年の心をときめかせた桜井斎頼(さくらい ときより)を紹介。果たして彼は、何を魅せてくれるのでしょうか。

信濃国の鷹匠・桜井五郎かく語りき

櫻井五郎〔信濃國住人〕殊鷹飼也。而今日。於將軍家御前。飼鷹口傳故實等申之。頗及自讃。加之。以鵙如鷹兮。可令取鳥云々。可覽其證之由。直雖被仰。於當座難治。可爲後日之由辞申之。

※『吾妻鏡』元久3年(1206年)3月12日条

時は元久3年(1206年)3月12日、実朝の元へ信濃国(現:長野県)の住人・桜井五郎斎頼が召し出されました。

斎頼は鷹匠(たかじょう。鷹狩りに使う高の飼育員)として名高く、鷹の扱いや雑学などをレクチャーするために来たのです。

「当家の秘伝を応用すれば、百舌鳥(もず)に狩りをさせることもできますぞ」

百舌鳥。スズメと同じかちょっと大きいくらいの小鳥。

百舌鳥と言えば、スズメよりちょっと大きいかどうか、というくらいのサイズ。なのに、それが鷹狩りのような獲物(鳥やウサギなど)を獲るなんてにわかに信じられません。

「本当?だったら見せて欲しいんだけど……」

興味津々の実朝ですが、ここで焦らすのも秘伝の内なのでしょうか。

「畏まりました。ただ少し下準備が必要なので、改めてご披露申し上げましょう」

含みを持たせておいて、斎頼は御前を辞退したのでした。

噂をすれば、桜井五郎

相州依召參御前給。數尅及御雜談。將軍家仰云。有櫻井五郎者。以鵙可令取鳥之由申之。慥欲見其實。是似嬰兒之戯。無詮事歟云々。相州被申云。齋頼專此術云々。於末代者希有事也。縡若爲虚誕者。爲彼不便。猶以内々可被尋仰者。此御詞未訖。櫻井五郎參入……

※『吾妻鏡』元久3年(1206年)3月13日条

その翌3月13日、実朝は北条義時(演:小栗旬)を呼び出しました。さて何の御用でしょうか……雑談すること数時間。実朝はようやく本題を切り出します。

「昨日、桜井五郎がかくかくしかじかと言うのだけれど、本当だろうか。もし本当なら是非見たいのだけど、こんなことに興味を持つなんて、子供っぽいのだろうか」

実朝の相談を受ける義時の答えは?(イメージ)歌川国貞筆

なかなか本題を言ってくれないと思ったら、そんなことでしたか……義時は優しく答えました。

「聞くところによれば、かの桜井五郎は名うての鷹匠。父祖伝来の秘術とあれば、後学のためにもぜひ見ておくべきでしょう。ただ、万が一法螺の可能性もないとは言えないので、彼に恥をかかせぬよう内々で確認しておきます」

もっともらしい理由をつけて実朝の好奇心に同意する義時。たぶん、自分も見たかったのでしょう。すると、

「ふっふっふ……」

「「何者!?」」

義時の言葉が終わらぬ内に、物陰から現れた不敵な笑み。そう、彼こそ信濃国の鷹匠・桜井五郎斎頼なのでした。

みんなワクワク、大江広元・三善康信もやってきた!

……着紺直垂。付餌袋於右腰。居鵙一羽於左手。相州自簾中見之。頗入興。此上者早可有御覽云々。仍被上御簾。及此時。大官令。問注所入道。已上群參。櫻井候庭上。黄雀在草中。合鵙〔三寄〕取三翼。上下感嘆甚。櫻井申云。小鳥者尋常事也。雖雉更不可有相違云々。即被召御前簀子。賜御劔。相州傳之給云々。
※『吾妻鏡』元久3年(1206年)3月13日条

「百舌鳥の準備は出来ております。ご所望とあらば、さっそくご披露いたしましょうぞ……ふふふ……」

桜井五郎は紺色の直垂、右の腰には餌袋、そして左腕には一羽の百舌鳥がとまっています。

「これは期待できそうですな……桜井殿、すぐにお見せせよ」

「ははあ」

よく見えるように、実朝の前にかかっていた御簾が上げられました。

「「何ですか、何ですか?」」

近くで仕事をしていた大江広元(演:栗原英雄)や三善康信(演:小林隆)たちが興味津々でやってきます。仕事?そんなものは後回しです。

「然らば」

腕前を披露する桜井五郎(イメージ)

ギャラリーも増えたところで、桜井五郎は百舌鳥を放ちました。

「「「おお……っ!」」」

果たして百舌鳥は三度飛び立ち、三度ともスズメを狩り獲ったと言います。もうみんな大興奮。だって、あんなに小さな百舌鳥が鷹にも負けない勇敢さを示したのですから。

「すごいすごい!」

「小鳥などは造作もございませぬ。雉(キジ)ですら仕留めてしまうのですから」

「相州(義時)、桜井に太刀を授けよ!」

「ははあ」

こうして桜井五郎は鷹狩りならぬ百舌鳥狩りを披露した手柄により、実朝の太刀を拝領したということです。

めでたしめでたし。

終わりに

以上、鎌倉殿のワクワクエピソードを紹介してきました。実朝少年はもちろんのこと、義時も広元も康信まで興味津々なのが面白いです。

桜井五郎の妙技に大興奮、思わず立ち上がってしまう実朝(イメージ)守川周重「星月夜見聞実記 鎌倉営中の場」

そんな様子を見ている女性陣が「これだから男って(いくつになっても子供なんだから)……」と苦笑いしている様子が目に浮かびますね。

NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」ではきっと割愛されてしまうこの場面。少年のように眼を輝かせている義時&広元&康信、ちょっと見てみたいなと思いました。

※参考文献:

  • 五味文彦ら編『現代語訳 吾妻鏡 7頼家と実朝』吉川弘文館、2009年11月
  • 羽生飛鳥『『吾妻鏡』にみる ここがヘンだよ!鎌倉武士』PHP研究所、2022年9月
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角田晶生(つのだ あきお)

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