北条朝時(演:西本たける)と言えば、父・北条義時(演:小栗旬)から何の期待もされず、庶兄・北条泰時(演:坂口健太郎)にコンプレックスを抱くキャラに描かれています。
NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」では、判るだけでも“よもぎ”(演:さとうほなみ。架空の人物)・御所の女房(言及のみ)・ちぐさ(言及のみ。架空の人物)に手を出す女好きのチャラ男設定ですが、実は既に妻帯して子供もいました。
(※)鎌倉殿・源実朝(演:柿澤勇人)が暗殺された建保7年(1219年。承久元年)時点。
確実に判るだけでも北条光時(みつとき。生年不詳)・北条時章(ときあきら。建保3・1215年生)。今回はこの二人がどのような人生をたどったのかをざっくり紹介。
彼らの父として、朝時はどんな振る舞いを見せたのでしょうか。
朝時の長男・北条光時
生没年不詳
母親:大友能直(おおとも よしなお)の娘か
官位:右馬助(うまのすけ)/正五位下
曾祖父・北条時政(演:坂東彌十郎)から代々受け継いだ名越館に住んだため、名越光時とも呼ばれます。
父と同じくアンチ得宗家(泰時の家系・北条本家)の急先鋒で、第5代執権となった北条時頼(ときより。泰時の孫)に対して罵声を浴びせました。
……我ハ義時カ孫也時頼ハ義時カ彦也……
※『保暦間記』下より
【意訳】我こそは義時の嫡孫なり。お前は庶流の曾孫ではないか。
これは父・朝時が義時の正室(前室)・姫の前(演:堀田真由。比奈)の子である一方、泰時は側室・阿波局(演:新垣結衣。八重)の子。その孫である時頼に執権=北条の家督を受け継ぐ正当性があるのかと非難したのでした。
寛元4年(1246年)閏4月、前将軍・藤原頼経(ふじわらの よりつね。三寅)と組んで時頼一派の粛清を謀ります。しかし先手を打たれてしまい、計画は未然に防がれたのです(宮騒動)。
敗れた光時は出家させられて所領を没収、伊豆国江間郷(現:静岡県伊豆の国市)へ流されてしまいました。その子孫たちは北条の嫡流から外され、江間を称することになります。
なお駒若丸(演:込江大牙)が元服した際、自分の名前から光の一字を与え、三浦光村(みつむら)と改名させています。光村も反執権の急先鋒として活躍しますが、光時の薫陶を受けたのでしょう。
朝時の次男・北条時章
建保3年(1215年)生~文永9年(1272年)2月11日没
母親:大友能直(おおとも よしなお)の娘
官位:尾張守/従五位下
名越流北条氏の中では穏健派で、宮騒動での失脚後も赦されて宝治元年(1247年)に鎌倉幕府の評定衆に加えられました。
得宗家との協調路線を主張していたものの、文永9年(1272年)に強硬派な弟・北条教時(のりとき)らが謀叛を起こした巻き添えで殺されてしまいます(二月騒動)。
後に濡れ衣が判明し、下手人の四方田時綱(よもだ ときつな)らは処刑。お詫び代わりに時章の子孫たちは幕府の要職に取り立てられたのでした。
ただし時章が守護を務めていた大隅国(現:鹿児島県東部)などが二月騒動の後に没収されていることから、時宗は始めから粛清するつもりだった可能性も考えられます。
三男から七男までも一挙紹介!
その他、三男以下も駆け足で紹介していきましょう。
三男・北条時長(ときなが)
生年不詳~建長4年(1252年)8月26日没
時章と同じく比較的穏健派。宮騒動後も生き延び、それなりの地位を確保しました。
四男・北条時幸(ときゆき)
生年不詳~寛元4年(1246年)6月1日没
名越流の中で最も強硬派。宮騒動の直後に病死しますが、『葉黄記』によれば自害させられたと言います。
五男・北条時兼(ときかね)
生没年不詳
『系図纂要』によれば「扎北国大聖寺討死」とのこと。もしかして建武2年(1335年)8月に大聖寺城の戦いで討死した名越時兼(なごえ ときかね。時章の玄孫)と混同しているのかも知れません。
六男・北条教時(のりとき)
嘉禎元年(1235年)生~文永9年(1272年)2月11日没
前述の通り、二月騒動で討たれました。
七男・北条時基(ときもと)
嘉禎2年(1236年)生~没年不詳
たびたび反抗し、滅ぼされていった兄たちの穴埋め(残党への懐柔対策)か、引付衆や評定衆などを歴任します。正安元年(1299年)に64歳で三番引付頭人を辞任した記録を最後に、歴史の表舞台から姿を消しています。
終わりに
以上、北条朝時の息子たち7人を紹介してきました。とかく嫡流意識から得宗家に楯突き続けた名越流北条氏。朝時の同母弟・北条重時(しげとき。大河ドラマには少年時代のみ登場)ら極楽寺流とは非常に対照的です。
NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」はもうすぐ終わりですが、彼らの子孫にも興味関心を持ってみると、日本史がより楽しめますよ!
※参考文献:
- 川添昭二『人物叢書 北条時宗』吉川弘文館、2001年10月
- 細川重男『鎌倉政権得宗専制論』吉川弘文館、2000年1月
- 細川重男『北条氏と鎌倉幕府』講談社、2011年3月
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