ミリタリー

第一次世界大戦後のヨーロッパ諸国について調べてみた

ヨーロッパ諸国の人たちに聞いてみると第二次世界大戦よりも第一次世界大戦の方が悲惨だったと言う人が多い。

実際問題、第一次世界大戦は一歩間違えたら国が崩壊する綱渡りな状態になってしなった戦争だった。
そこで、第一次世界大戦が終わった後ヨーロッパ諸国ではどのような形になっていったのかを探ってみよう。

そもそも第一次世界大戦とは?

第一次世界大戦後のヨーロッパ諸国について調べてみた

※第一次世界大戦の塹壕戦の様子 wikiより引用

第一次世界大戦とは1914年に起こったドイツをはじめとする三国同盟とフランス・ロシア・イギリスをはじめとする三国協商が戦った戦争のことである。

この戦争はいわゆる総力戦と呼ばれている戦争で、総兵数はフランス860万、イギリス880万、ドイツ1325万、ロシア1200万であり、さらに戦費は凄まじくドイツでは国民総年収2年分が丸ごと戦費として使われていた。

この戦争は協商国の勝利に終わるが、その傷跡は酷く、フランスではあまりにも戦死者が多かったため、人口グラフの一部が丸ごと吹き飛んだとも言われている。

ドイツの戦後の状況

※札束で遊ぶ子供たち

敗戦国となったドイツの末路は悲惨なものであった。

第一次世界大戦の末期に帝政は崩壊。共和国となり協商国に講和したが、その講和条約であるヴェルサイユ条約はドイツにとってかなり酷なものであった。
ドイツは全ての植民地を喪失した上で領土の15パーセントを割譲した。さらに1330億マルクというドイツの総国家予算2年分という天文学的数字の賠償金を課せられた。

ドイツはその後賠償金によって財政は破綻。さらに賠償金を払っていないことを理由に、当時ヨーロッパ最大とも言われている工業地帯であったルール地方をフランスにとられてしまい、ドイツはハイパーインフレという地獄のような状況となってしまう。ハイパーインフレが起こった当時のドイツはジャガイモ一キロにつき900億マルクとなり、暖炉で薪を燃やすより紙幣を燃やした方が安上がりとなるとんでもない状態となってしまった。

しかしそんなドイツにある救世主が現れた。その男の名はヒャルマル・シャハト

シャハトはハイパーインフレを解消するために臨時の紙幣であるレンテンマルクという紙幣を発行してなんとか解消することに成功。

※1923年発行の1レンテンマルク紙幣

さらに1933年にはヒトラー率いる国家社会主義ドイツ労働者党が政権を握り、アウトバーン計画などの公共事業などを成功させてドイツを立ち直させる。

このレンテンマルクの奇跡とアウトバーン計画などによってドイツは奇跡の復興を成し遂げた。

フランス・イギリスの戦後の状況

※軍人墓地の様子 wikiから引用

フランスイギリスは一応戦勝国だったのだが、その実態は戦勝国とはとてもいえない状況だった。

フランスは第一次世界大戦で勝利したことによって、普仏戦争で奪い取られていたアルザス=ローレヌ地方をドイツから取り返すことができたが、フランスでは560万の兵士が負傷、さらに150万の兵士と30万の民間人が戦死していた。これはフランスの総人口の8分の1の規模である。

その結果フランスでは政治が不安定になってしまい、第一次世界大戦が終わってから第二次世界大戦が起こるまで、30人以上の首相が交代している異例の事態になってしまった。
イギリスではフランスほどではないが、同じように戦死者を大量に出してしまい同じく政治が不安定になってしまった。

ロシアの戦後の状況

※ロシア2月革命を起こしたボリシェビキの様子 wikiより引用

ロシアでは戦時中である1917年に二月革命が起こり、ロシア皇帝ニコライ2世は退位せざるおえない状況になってしまった。

こうしてロシア帝国は終焉を迎えることになるのだが、ここからロシアでは臨時政府という新たな政治組織が生まれ労働者階級の人と対立。ロシア内戦が起きる事態まで発展した。その後労働者階級が勝利。スイスに亡命したレーニンがロシアに変わり、1922年にソビエト社会主義共和国連邦(ソ連)が成立する。

しかしロシア国内における地獄はスターリンという悪魔の下で現れることになっていく。

最後に

※アドルフ・ヒトラー この男が再び戦争に引きずり込んだ wikiより引用

第一次世界大戦はヨーロッパのほとんどの国で傷跡を残す結果となった。

しかし、国民はこの戦争を『全ての戦争を終わらせるための戦争』と言ってもう二度と同じ規模の戦争は起こらないだろうと慢心していた。しかしドイツではヒトラーが台頭していきそしてついに1939年、戦後21年目にしてドイツはポーランドに侵攻。第二次世界大戦が始まる結果となった。

その原因にはドイツに課せられた賠償金、ソ連の成立、さらには戦後の世界体制が大きく関わっている。
もしも興味を持ったなら第一次世界大戦後の世界情勢を調べてみたら、第二次世界大戦のこともより深く味わえるようになっていくだろう。

関連記事:
第一次世界大戦とは何かについて調べてみた
第一次世界大戦前における各国の立場【WW1シリーズ】
第一次世界大戦に従事した意外な5人の人物たち【WW1シリーズ】
第一次世界大戦・地上の主力は大砲だった【WW1シリーズ】
第一次世界大戦開戦・西部戦線の形成へ【WW1シリーズ】

アバター

右大将

投稿者の記事一覧

得意なジャンルは特に明治以降の日本史とピューリタン革命以降の世界史です。

✅ 草の実堂の記事がデジタルボイスで聴けるようになりました!(随時更新中)

Youtube で聴く
Spotify で聴く
Amazon music で聴く
Audible で聴く

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事

  1. ヨーロッパの残酷な処刑や拷問方法 【ギロチン、ファラリスの雄牛、…
  2. 【英国史】カトリックの姫君が、プロテスタントの王に嫁いでしまった…
  3. 軍事技術から転用されたものについて調べてみた
  4. ナポレオンの元婚約者の美女・デジレ 「ナポレオンに捨てられた後に…
  5. ルイ16世について調べてみた
  6. マリー・アントワネットが愛した、人類史にも影響を与えた「意外な花…
  7. イタリア中世の自治都市コムーネ・ヴェネチア共和国とは?
  8. アメリカの特殊部隊について調べてみた

カテゴリー

新着記事

おすすめ記事

秀吉の誤算!なぜ豊臣家は滅びたのか? 後編 「朝鮮出兵と秀次の死」

前編では、天下統一に向けて邁進する秀吉の良き右腕であり参謀でもあった、弟・秀長と千利休の死をとりあげ…

なぜ東京で阿波踊りを踊るのか?【阿波おどりの種類と日程】

阿波踊り は約400年の歴史がある国内最大規模のお祭りです。毎年8月中旬に開催される…

『日本産牛肉』24年ぶりに中国輸出再開へ 〜中国側の狙いとは?

日本産牛肉の中国向け輸出が、2025年に24年ぶりに再開される見通しである。この動きは、20…

【神社に祀られる神様を知る】海上安全・商売繁盛なら「住吉さま(すみよしさま)」へお参りを

祭神の住吉さまは海上守護・航海守護と祓の神「住吉さま」をお祀りする神社は、全国で約2,0…

二千年の時を越えて生き返った兵馬俑 「一体の兵士が突然動き出した信じられない事件」

兵馬俑秦の始皇帝を守るように、共に埋められた兵馬俑(へいばよう)は、今でも多くの歴史ファ…

アーカイブ

PAGE TOP