西洋史

トランプの歴史を調べてみた 「なぜあの絵柄なのか?」

子供の頃、トランプを使ってよく遊んでいたものである。

このトランプの絵柄には意味や名前があり、実在の人物がモデルになっていることはご存じだろうか?

今回は誰もが一度は目にしたことのある、トランプの絵柄について調べてみた。

トランプの歴史を調べてみた

フランス式のトランプ wikiより引用

トランプの歴史

起源は諸説あり、古くは古代エジプトに由来するとする説などが存在していたが、現在は中国説が最も有力であり、また、東方(アジア)で発生したものが欧州に移入されたとする点では、諸説は一致している。

これら東方に発生したものが、西アジア方面から復員した十字軍サラセン人などの手によって欧州に伝えられた可能性が高いとされている。

『アラブのトランプ』

トランプの歴史を調べてみた

アラブ式トランプ wikiより引用

トプカプ博物館所蔵の15世紀ごろのマムルーク朝のカードは、イスラム教の教えの偶像崇拝に抵触しないように、絵札には人物は書かれておらず、かわりに文字で説明がされている。

このためスート名と絵札の名前が判明している。

完全な形で残っているわけではないが

・ダラーヒム(=貨幣)
・トゥーマーン(=カップ)
・スユーフ(=刀剣)
・ジャウカーン(=ポロ競技用のスティック)

の4つのスートがあり、各スートには1から10までの数札と

・マリク(=王)
・ナーイブ(=総督)
・ナーイブ・サーニー(=第二総督)

の3種類の絵札があったと考えられている。

カップのスート名「トゥーマーン」はトルコ語で「万」を意味する語であり、中国の紙牌のスートである「萬子」との関連性が考えられる。
イギリスの中国学者・ウィリアム・ヘンリー・ウィルキンソンは、漢字の「万」を上下逆さまにした形がカップになったと推測している。

起源がよくわかっていない事が多いが、少なくとも14世紀にはヨーロッパにもたらされていたようである。

欧州に最初にトランプが出現したのは14世紀前半のイタリアとされているが、スペイン説も有力である。

カードの構成は当時のアラブのカードのデザインを襲用している。
ただし、スートのうち「ポロ用スティック」は、欧州においてはポロ競技に馴染みがなかったことから、イタリアでは儀式用の杖、スペインでは棍棒に変化した。
初期のころはアラブのトランプの影響が強く残っていた。

15世紀も後半になると、フランスではスートが

・ダイヤ(♢)
・スペード(♤)
・ハート(♡)
・クラブ(♧)

に変わり、絵札の騎士が女王と差し替えられた。

このフランススタイルがイギリスに渡り、キング、クイーン、ジャックの絵札になり現在のスタイルになった。

トランプの歴史を調べてみた

英国式トランプ wikiより引用

トランプのスート

「スペード」(剣) 貴族や軍人を表す
「ハート」(聖杯) 聖職者や僧侶を表す
「ダイヤ」(貨幣) 商人を表す
「クラブ」(棍棒) 農民や労働者を表す

キング・クイーン・ジャックにはモデルがいる

トランプの歴史を調べてみた

ダビデ王のスペードのキング wikiより引用

・キング

『スペード』ダビデ王『旧約聖書』の「列王記」に登場するソロモン王の父・古代イスラエル国王
『ハート』カール大帝(シャルルマーニュ)中世のフランク国王
『ダイヤ』カエサル(ジュリアス・シーザー)古代ローマの政治家、軍人。
『クラブ』アレキサンダー大王(アレキサンドロス3世)ギリシア時代のマケドニア国王。

・クイーン

『スペード』パラス(パラス アテネ)ギリシア神話のトリトンの娘。もしくは友人こちらはギリシア神話の戦いの女神
『ハート』ユディト(ジューディス)『旧約聖書』外典の一つ「ユディト記」に登場するユダヤの女戦士。
『ダイヤ』ラケル 旧約聖書のヤコブの妻。
『クラブ』アルジーヌ(アージン)ラテン語の女王を意味する単語・レーギーナのアナグラム(Regina→Argine)

・ジャック

『スペード』オジェ・ル・ダノワ(ホルガー・ダンスク) カール大帝の騎士。英語読みでは「オジーア・ザ・ダン」。
『ハート』ラ・イル ジャンヌ・ダルクの戦友。英語読みなら「ラハイア」。
『ダイヤ』エクトール(ヘクトル)ギリシア神話に登場するトロイの王子。 トロイア戦争の英雄
『クラブ』ランスロット『中世騎士物語』に登場するアーサー王に仕えた円卓の騎士の一人。

スペードのエースだけが派手なのはなぜ

トランプの歴史を調べてみた

スペードのエース wikiより引用

スペードのエースのみ凝ったデザインが多いのはなぜか?

昔からトランプは賭け事に使われていた歴史があり、国や教会が禁止にしていたことが多かった。国は禁止したり規制したりするうえでトランプに税金をかけることにした。

デザインの起源は17世紀のイングランドで、かつてトランプは1セットごとに課税されており、出荷する際に一番前に来るのがスペードのエースであった。

ここに偽造防止の目的で複雑な模様の納税証明印が押された。これがデザインとしてカードの側に転移したものである。

ジョーカー

トランプの歴史を調べてみた

タロットの愚者 wikiより引用

トランプの「ジョーカー」は、元々タロットカードの「愚者」が由来になっているのではないかといわれている。

他国のトランプにはこのジョーカーを使用しないルールで遊ぶのが一般的であり、ジョーカーを使って遊ぶのは日本独自のルールであるようだ。

トランプのまとめ

・現在私たちがよく使うトランプの起源は中国説が有力である。
・ヨーロッパには14世紀には伝わっている
・現在に形になったのはイギリス、フランスのモデルである。
・フランス型はキング、クイーン、ジャックに実在の人物や、伝説上の人物がモデルとなっている。
・スートはそれぞれイタリアの社会階級の意味がある。
・スペードのエースのデザインが凝っているのは、国の課税対象であったことによる偽造防止の刻印が影響している
・ジョーカーはタロットの「愚者が」モデルとなっている。

 

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

Twitter で
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
アバター

草の実堂編集部

投稿者の記事一覧

草の実学習塾、滝田吉一先生の弟子

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事

  1. アレキサンダー大王の伝説について調べてみた【アレクサンドロス3世…
  2. シベリア出兵の陰で日本に救われたポーランド孤児たち 【ポーランド…
  3. 【冷戦はいつから始まった?】 意外にも良好な関係だったアメリカと…
  4. ローズ・ベルタン 【平民からファッションで大出世したマリー・アン…
  5. ハプスブルク家の歴史と特徴的すぎる遺伝子 【ワシ鼻、受け口】
  6. ローマ帝国を滅亡に導いたキリスト教
  7. 奴隷の虐待に憤って挙兵、ローマ帝国を震撼せしめた大盗賊ブッラ・フ…
  8. 東南アジアで暴れた日本人傭兵たち ~17世紀に起きた「アンボイナ…


カテゴリー

新着記事

おすすめ記事

「正史三国志」と「三国志演義」で活躍に違いがある人物

三国志では「正史」とフィクションが混ざった「演義」とがあり、一般的に映画や漫画になっている三国志…

【金閣寺は国宝ではない?!】国宝の意外なトリビア5選

2017年は国宝という制度が始まって120年という節目の年である。その数、実に1,100点以上。…

政府閉鎖の影響(政府職員に関して)について調べてみた

前回の記事に置いてアメリカで行われている政府閉鎖がどのようなものかに関して調べてみました。→こちら…

シークレットサービス 【大統領を守る特別捜査官】服装、年収は?

アメリカ合衆国の歴代大統領の隣には、いつも彼らの姿があった。ビジネススーツに黒いサン…

諸葛恪の天才エピソード その2 「時代を先取りしすぎた天才」

三国志終盤の天才完結に向けて比例するように、三国志の終盤はマイナーな人物が多く登場し、有…

アーカイブ

PAGE TOP