音楽&芸術

球体関節人形について調べてみた

球体関節人形」というものをご存知だろうか。
その名の通り、関節が球体になっており、自由にポーズをつけることができる人形だ。
球体関節人形の歴史や、種類、仕組みなどについて調べてみた。

球体関節人形 の歴史

球体関節人形

※制作中の創作人形。自分で撮影

人形を特に「球体関節人形」と呼ぶ場合には、決まった特徴がある。関節が球状になっており、手足にゴムを通して各パーツを繋げているものを指す。
その原型となったのが、ドイツ出身の芸術家であるハンス・ベルメールの作った人形である。等身大の人形の関節は大きく肥大した球体でできており、その斬新な作品は当時のパリのシュールレアリストに受け入れられ歓迎された。
1965年に、澁澤龍彦が雑誌でベルメールの人形を紹介したことで、日本でも作品が知られるようになった。
ベルメールの作品に影響を受けた日本の芸術家たちが、ベルメールの人形をもとにして、市松人形の技法を取り入れながら、現在の“球体関節人形”の基礎を作り上げた。初期の頃は、使用する粘土などの材料をそれぞれが試行錯誤していたため、古い人形作品の中には脆く壊れやすいものも存在する。現在は基本的な制作方法がほぼ確立されている。

球体関節人形の作り

※創作人形の関節。自分で撮影

①仕組み

前述した通り、各パーツはゴムによって繋げられている。
右手首と左手首を一本のゴムで繋ぎ、ヘッド(頭)と両足首を一本のゴムで繋ぐのが基本である。

②ボディの素材

人形作家が制作する一点物の作品の場合は、おおまかに素材はビスク(素焼きの磁器)と、粘土に分けられる。
ビスクとはフランス語の「ビスキュイ(二度焼き)」を語源としており、アンティークビスクドールの素材と同じである。
粘土の場合は、石の粉が入った石粉粘土や、木の粉が入った木粉粘土などが使われる。
粘土で作る場合は、最後の塗装に胡粉を使うことが多いが、これは市松人形に使われるものと同じである。

③髪の毛

髪の毛には、人毛や化学繊維が使われる。
ヘッドに毛を接着剤で直接貼る方法と、ウィッグを被せる方法がある。

※ドールアイ。Wikiより

④ドールアイ

ドールアイ(眼球)の素材も様々であり、主なものはガラスだが、アクリル、レジン、ビスク、樹脂粘土なども使われる。
最近は、天然の鉱石や、ドライフラワーなどを使った変わり種も存在する。

球体関節人形の呼称

球体関節人形と一口に言っても、素材などによって呼称が変わる。

※粘土製の創作人形。自分で撮影

①創作人形

作家が創作した、一点物を指す。素材は特に問わない。
リアルな造形のものが多い。
芸術作品のため高価である。

②キャストドール

レジンキャストという樹脂で作られた人形で、大量生産のため比較的安価である。
アニメチックな顔立ちのものが多い。
顔のメイク(塗装)を自分でカスタムしたり、ドールアイやウィッグの変更、着せ替えを自由に楽しむことができる。
紫外線に弱く、劣化しやすいという弱点がある。

球体関節人形の購入方法

作家の作品であれば、創作人形の専門店がいくつか存在する。
また、展示会で展示されているものは、会場で買える場合もある。
最近はインターネットオークションに出品している作家もいる。

キャストドールは、日本ではボークスという会社だけが製造している。
「スーパードルフィー」という商品名で、ネットショップや店頭で販売されている。
海外にも多数のキャストドールメーカーが存在し、これらは代理店経由で購入することができる。日本直営店があるメーカーもある。
なお、海外製のキャストドールは「スーパードルフィー」とは呼ばないので、注意が必要である。

おわりに

球体関節人形の制作技術は、外国の芸術家の影響を受けて、日本国内で独自に発展していった。
作家の創作人形に影響を受けて、樹脂製の人形が発売され、手ごろな値段で手に入るようになり、球体関節人形ブームが巻き起こった。
現在も、日本国内はもちろんのこと、外国でも根強い人気がある。
興味があれば、ドールショップに一度立ち寄ってみてはいかがだろうか。

関連記事:アンティークビスクドールについて調べてみた

歌夜

歌夜

投稿者の記事一覧

人形と本で埋め尽くされた部屋に住んでいる。古いものと、変なものが好き。

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事

  1. 完全ワイヤレスイヤホン はなぜ人気なのか?
  2. 葛飾北斎の魅力「あと5年で本物になれた」画狂老人
  3. アンティークビスクドールについて調べてみた
  4. 唐の音楽文化について調べてみた【音楽好きだった玄宗】
  5. なぜ東京で阿波踊りを踊るのか?【阿波おどりの種類と日程】
  6. 【地獄の構造】 ダンテの神曲について調べてみた
  7. 【無音の音楽】「4分33秒」の作曲家・ジョン・ケージについて調べ…
  8. 『泣く女』のモデル、ドラ・マール【天才ピカソの愛人で犠牲者?】

カテゴリー

新着記事

おすすめ記事

のうそん誌半世紀の歴史に幕=終刊時でも読者800人

2017年ブラジル力行会館のイベントで挨拶する永田久主宰(学校法人力行会総務部長の田中直樹氏提供) …

【鎌倉殿の13人】得体が知れない?大野泰広が演じる足立遠元の生涯をたどる

……こうした客人たちの差配は、頼朝に命じられた足立遠元が担当していた。その場に同席していた実衣は、得…

【暗殺に次ぐ暗殺で権力を得た腹黒親子】 北条時政と義時 ~前編

北条義時とは日本初の武家政権・鎌倉幕府は、源氏の棟梁で初代将軍・源頼朝によって開かれ、頼…

穴山梅雪は、なぜ武田勝頼を裏切って家康についたのか? 後編 「勝頼の死と梅雪の死」

前編では、穴山梅雪の前半生と裏切りに至るまでの武田軍での経緯を解説した。後編では、梅雪の裏切…

ハシビロコウ 「まるで銃撃戦のような爆音を出す 絶滅危惧種の巨大鳥」

ハシビロコウは、アフリカの湿地に生息する、人間ほどの大きさの鳥類だ。最大で150cmにも達す…

アーカイブ

PAGE TOP