海外

ジンバブエの過酷な現在 【アフリカ食糧庫からの転落、ムガベ独裁後も再びインフレ】

ジンバブエのあらまし

ジンバブエの過酷な現在

ジンバブエの国旗

ジンバブエ はアフリカ南部にある国であり、かつては南ローデシアとも言われていました。

ジンバブエの過酷な現在

ジンバブエの位置

そんな南ローデシアでしたが、第二次世界大戦が終結し、アフリカ各地で植民地解放運動が起こると、1965年に白人至上主義であったイアン・スミスローデシア共和国を樹立。

ジンバブエの過酷な現在

イアン・ダグラス・スミス Ian Douglas Smith wiki(c)Colin Weyer

脱イギリス化を推進していきましたが、本国イギリスから経済制裁を受けてしまいました。

さらにイアン・スミスは白人至上主義を国内の政策に取り入れ、黒人を政治から排斥。

何かと差別的な政策を推し進めていき、白人と黒人との間に大きな溝が生じていくことになりました。

黒人による独立運動

黒人がどんどん虐げられる中、多数派であった黒人はついに立ち上がり、ローデシア国内でゲリラ戦を展開。

白人政権を打倒するためについに立ち上がりました。

そして1979年には黒人勢力によってジンバブエ・ローデシア国が成立。

黒人に参政権が与えられ、ついに黒人による国家が建てられました。

アフリカの食料庫 アフリカの優等生として

黒人たちが自由を求めて立ち上がり起こしたローデシア紛争は、1979年に盟主国であるイギリスの仲介によって終結。

議会の議員数の5分の1を白人に譲ることで合意し、ロバート・ムガベ が首相に就任しました。

ジンバブエの過酷な現在

ロバート・ムガベ

さらに、ムガベは1980年に大統領に就任すると、国名もローデシアからかつての王国からとったジンバブエに改名し、新しい時代へとスタートを切りました。

ジンバブエは1980年代までは民主主義とは言い難い政体だったものの、ムガベ大統領がかつてジンバブエを支配していた白人との融和を模索したことにより、白人と協力して国力を増強する好循環を作り出しました。

さらにその好循環において生まれた資金を教育や医療などに充てたことが奏して、当時のアフリカ大陸において最高水準の識字率と農業生産高を叩きだし、ジンバブエは『ジンバブエの奇跡』『アフリカの食糧庫』と呼ばれ、世界から賞賛を受ける国へと成長しました。

経済崩壊そしてハイパーインフレ

こうして着実に経済成長を歩んでいったジンバブエでしたが、1999年に起こった第二次コンゴ内戦では所有していた鉱山の利権を守るために1万人を派兵。軍事に多額の政府予算を費やし、最高水準を保っていた医療や教育体制はどんどん悪化していきました。

さらに2000年にムガベは経済基盤であった白人との融和政策を取り消し。白人が所有していた土地を強制的に接収して黒人に再分配してしまいました。

しかし、農業に長けていた白人をいきなり追い出して、農業に不慣れだった黒人に農作物を作らせることは難しく、かつてアフリカの食料庫と呼ばたジンバブエの農業生産高はガタ落ちする結果となってしまいました。

ジンバブエの過酷な現在

100兆ジンバブエドル

経済も次第に悪化していきます。しかし、ムガベは正しい経済対策を行わずに大量に紙幣を発行しました。

需要と供給のバランスが崩壊すると、ついにジンバブエの経済は破綻。

ジンバブエではハイパーインフレが巻き起こり、2008年にはジンバブエドルのインフレ率が2億3100万%という天文学的数字の記録を叩き出し、ジンバブエドルは紙くずと化してしまったのです。

ジンバブエの現在

こうして経済が破綻して崩壊したジンバブエ。さらにジンバブエの取り柄の一つであった医療技術も機能しなくなり、2008年には国内でコレラが大流行。9万人もの患者が溢れ、平均寿命はアフリカの最低レベルである36歳まで落ち込んでしまいました。

ジンバブエクーデター 首都ハラレに展開する装甲車

そして2017年、この状況に耐えられなくなったジンバブエの軍部がついにクーデターを起こしました。

1980年から37年もの間ジンバブエを支配してきたムガベ大統領は退陣に追い込まれ、ジンバブエは軍によって新しく政治が行われるようになったのです。

しかし2020年7月、コロナウイルスが国内に広まった際には、多くの国民がマスク着用などの規則に従わず10万人以上が逮捕。また8月には物価上昇率が年率840%近くまで上昇し、再びハイパーインフレが起こるのではないかと懸念されています。

国民の生活は現状かなり厳しく、「ガソリンスタンドで給油するのに丸一日並んでも順番が回ってこない」「水道が出ない」「停電が直らない」「医療を受けられない」など、生活インフラは以前よりも悪化している状態です。さらに食料不足で50万人が飢餓状態にあると言われています。

長期に渡るムガベの独裁が終わったものの、現在のジンバブエは「ムガベ政権の方がまだマシだった」と言われてしまうほど、厳しい状況が続いているのです。

 

右大将

投稿者の記事一覧

得意なジャンルは特に明治以降の日本史とピューリタン革命以降の世界史です。

✅ 草の実堂の記事がデジタルボイスで聴けるようになりました!(随時更新中)

Youtube で聴く
Spotify で聴く
Amazon music で聴く
Audible で聴く

コメント

    • 名無しさん
    • 2020年 11月 08日 9:09am

    アジアのジンバブエといえば韓国(笑)
    もうすぐ本当にそうなるから期待してみててみん

    0
    6
  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事

  1. フランコ 〜スペインを30年以上独裁した軍人
  2. ニュルンベルク裁判と「人道に対する罪」の意義 ~哲学者・ヤスパー…
  3. 【16年監禁】突如現れた謎の野生児カスパー・ハウザー 「その正体…
  4. 台湾人から見た日本のオタク
  5. 中国の教育事情 「かつての一人っ子政策の弊害」
  6. 旧ソ連・北朝鮮の巨大建造物について調べてみた 【スターリン様式、…
  7. 日本人が間違いやすいネイティブ英語⑤【食べ物・果物、おやつ編】
  8. 【精神を病み実父を刺殺した天才画家】 リチャード・ダッド ~狂気…

カテゴリー

新着記事

おすすめ記事

鬼一法眼について調べてみた【日本の剣術の神】

はじめに日本の剣術の神として崇められているのが鬼一法眼(きいちほうげん)です。剣術の他に呪術も使…

♪味よしのう~り売り…豊臣秀吉たちが繰り広げた仮装パーティ「瓜畑遊び」【どうする家康】

NHK大河ドラマ「どうする家康」、皆さんも楽しんでいますか?筆者もこの先どんな展開になること…

民主主義について調べてみた 「日本は民主主義ランキングで先進国下位」

民主主義の由来民主主義(デモクラシー)の語源は、リシャ語の「デモス(人民)」である。…

謎の古代中国遺跡で発見された「イヌ型ロボット?」 三星堆遺跡の神獣

三星堆遺跡三星堆遺跡(さんせいたいいせき)とは、中国の四川省広漢市、三星堆の鴨子河付近で…

江戸時代の相撲文化とは 「最強力士 雷電 ~勝率は驚異の9割6分2厘」

相撲とは?相撲とは一体何なのだろうか? そもそも相撲と大相撲の違いは何か。実は「大相撲」…

アーカイブ

人気記事(日間)

人気記事(週間)

人気記事(月間)

人気記事(全期間)

PAGE TOP