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【国際】アルメニアとアゼルバイジャンが軍事衝突!両国が争い続ける理由とは

2020年9月27日、アルメニア軍がアゼルバイジャンのヘリコプター2機を撃墜したことをキッカケに両国間での軍事衝突が勃発。

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激しい戦闘によって死者は100名以上にのぼり、このままエスカレートすればロシアやトルコ、イランといった周辺国に飛び火し、果てはアメリカの介入をも招きかねず、日本にまで助けを求める事態となっています。

※参考:
アゼルバイジャンとアルメニアの軍事衝突はなぜ一大事か|ニューズウイーク日本版
紛争再燃のアゼルバイジャン 日本に関与求める|テレ朝news

両国の軍事衝突は今に始まったことではなく、ナゴルノ・カラバフ戦争(1988年2月~1994年5月)の確執がいまだにくすぶり続けているのですが、それ以前からも永く争ってきました。

そこで今回は、アルメニアとアゼルバイジャンが対立を続ける原因について、ざっくり紹介したいと思います。

理由は宗教問題?

アゼルバイジャン(緑の部分、左下の飛び地も含む)とアルメニアの位置関係。Wikipedia(画像:Night w氏)より。

その前に、まずは多くの方が「アゼルバイジャンとアルメニアって、どこにあるの?」という状態だと思うので、両国の基本データを軽くまとめておきます。

アゼルバイジャン
正式名称:アゼルバイジャン共和国(Azərbaycan Respublikası)
建国:1991年8月30日(旧ソ連より独立)
首都:バクー
人口:約980万人
公用語:アゼルバイジャン語
通貨:マナト(補助通貨:100ケピック=1マナト)
宗教:イスラム教徒(シーア派、スンニ派)

アルメニア
正式名称:アルメニア共和国(Հայաստանի Հանրապետություն)
建国:1991年9月21日(旧ソ連より独立)
首都:エレバン
人口:約290万人
公用語:アルメニア語
通貨:ドラム(補助通貨:100ルマ=1ドラム)
宗教:キリスト教徒(アルメニア正教会)

両国の位置をざっくり世界地図でいうと、北にロシア、東にカスピ海、南にイラン、西にトルコがある(他の小さな国たちは割愛)コーカサス地方に属し、それだと解りにくい(覚えるのが面倒な)人は「中東の北、東ヨーロッパの南」程度に覚えるといいでしょう。

ついでに両国の位置関係は、東にアゼルバイジャン、西にアルメニアとなりますが、厳密に補足するとアルメニアの南西部にあるナヒチェヴァン自治共和国という飛び地もアゼルバイジャンの一部です。

アゼルバイジャンにしてみれば、それだけでもアルメニアとギクシャクするのに十分ですが、一方のアゼルバイジャンも、国内にナゴルノ・カラバフ自治州(※)というアルメニア人居住区のような場所を抱えており、お互いに気まずい感じのようです。

アルツァフ共和国の国旗。ちなみに、ナヒチェヴァン自治共和国はアゼルバイジャンに準じている。

(※)自治州とはアゼルバイジャン側の呼び方で、アルメニアからは事実上独立したことを示すアルツァフ共和国(ナゴルノ・カラバフ共和国)と見なされ、日本の外務省は「アルメニアによる占領地域」として扱っています。

アルツァフ共和国(ナゴルノ・カラバフ共和国)
正式名称:アルツァフ共和国(Արցախի Հանրապետություն※)
建国:1991年9月2日(旧ソ連より独立)
首都:ステパナケルト
人口:約15万人
公用語:アルメニア語
通貨:ドラム(アルメニアと同じ)
宗教:キリスト教徒(アルメニア正教会)
(※)一応アゼルバイジャン人向け?にナゴルノ・カラバフ共和国(Լեռնային Ղարաբաղի Հանրապետություն)という名称も併記しています。ナゴルノとは「高地」を意味するロシア語、カラバフとは「黒い(=豊かな土地)」を意味するテュルク語に由来するそうです。
また、アルツァフとは「解放された」すなわちアゼルバイジャンやかつての盟主・ソ連からの解放を意味します。アルメニアに従うなら別にどっちからでも構いません。

……ここまで来ると、世界史を学ばれた方なら「あーハイハイ。例によって宗教的な理由で争ってンのね」と察せられることでしょう。

アルメニアに奪われたナゴルノ・カラバフ自治州(NKR)。赤線の国名はイスラム国家、無線はキリスト教(正教)国家。

アルメニアはアルメニア正教会の影響下にある「アルツァフ」共和国を異教徒(イスラム教徒)どもから解放したい一方で、アゼルバイジャンとしては異教徒(キリスト教徒)どもの手から「ナゴルノ・カラバフ」自治州を守りたい……そうした動機で争っているため、

「アルメニアはナヒチェヴァンをアゼルバイジャンからもらう代わり、アルツァフ(ナゴルノ・カラバフ)から手を引けばいい」

などと単純には解決できない訳です(ちなみに、ナヒチェヴァンでは住民の多くがイスラム教徒で、文化や政治制度など、そのほとんどがアゼルバイジャンに準じています)。

以前、エレバン放送(アネクドート)ネタで「アルメニアとアゼルバイジャンの仲の悪さ」について言及したことがありましたが、こういう事情があってのジョークだと解ると、問題の根深さを実感します。

Q22.アルメニアには何人のバカがいますか?
A22.今すぐ入国されれば、あなたが栄えある1番目になれます。

【コメント】こんな質問をしている時点でお里が知れます。さてはアゼルバイジャン人ですね?

Q25.このふざけたQ&A(特に回答)はいったい何なんですか?
A25.回答者がアルメニア人ではないためと考えられます。たぶんアゼルバイジャン人だからでしょう。

【コメント】あるいはこの回答によって、とっくにアルメニア国籍を剥奪されている筈です。

Q26.内陸国のアルメニアに海軍省があるのはどうしてですか?
A26.アゼルバイジャンに対する皮肉です。彼らは文化省を設立していますから。

腹筋崩壊!意味がわかるとゾッとする「共産主義あるある」ネタで有名なエレバン放送のQ&Aコーナーから特選ジョーク47連発!

今後ますます混迷を深める両国関係を改善していくべく、日本(菅政権の外交手腕)や国際社会の仲裁に期待したいところです。

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角田晶生(つのだ あきお)

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