中国の生活環境
「中国」「環境」と聞くと、まず思いつくのは環境汚染ではないだろうか。
汚染された空気・水・食品。空気と言えば言わずと知れた「PM2.5」。この無味無臭な有害物質は多くの人の体を蝕んできた。
三年前、筆者は中国の山東省に住んでいた。この片田舎でも環境汚染は深刻で毎日の空気を数字化して、外出の危険度を知らせるアプリを活用して数値を見る。数値が悪くても外出しない訳にはいかないが知っておく必要があった。深刻な日は、部屋の空気清浄機がフル稼働。汚染度数が一番高い赤いランプが一日中点滅し続ける。
こんな日に外へ出て過ごすとどうなるか?
故意に実験したわけではないが、外で活動し続けると体が異常に疲れる。悪い空気を吸っているんだな…と感じさせるのだ。ということもあって外出時は塗装業の職人がつけるような密閉式のマスクを着用していた。大袈裟かも知れないが中国では体を守ることは大切である。
山東省の冬の空気
山東省の冬は過酷である。
乾燥しきった空気はマイナス10何度まで冷え込み、湿気を含まないので雪は滅多に降らない。実際の気温より体感気温はもっと低い。
ダウンジャケットを2枚重ねても凍えるほどの寒さなのである。
こういう環境もあって、多くの家庭には「暖气」つまり、床暖房が備わっている。これがまた空気を汚す。
冬は昼間にもかかわらず空気が真っ白で視界が悪くなる。霧ではなく汚染物質である。どの町でも冬は空気が悪い。どのくらい悪いかというと…
以前、マンションの18階に住んでいた。眺めがとても良く、山東省の誇る「泰山」が見渡せる。部屋から撮った写真がとても興味深い。
2枚とも大体同じ時間、同じ場所からとったものだ。
1枚目は空気の良い日。2枚目は空気が悪く、空気清浄機の赤いランプが一日中付いていた日。
1枚目はとても優雅な泰山が映っておりいい眺めだ。2枚目は…そう、まるで山などなかったかのような風景が広がっていた。
真っ白で視界ゼロの状態である。
空気が良い日もある?
空気が日本の様に良い日は基本的にはないのだが視界が広い日はある。雨の後と風が強い日の次の日である。
風が吹いて汚染物質はどこへ行ったのであろうか?
風向きにもよるがそれは日本へと流れる。毎年春にゴビ砂漠の砂が季節風に乗って日本にたどり着くように、日本へと旅をするのである。
空気がいい日は他にもある。北京や大きな街で国際的な行事がある時だ。政府が国内の工場や汚染物質を出す場所に命令を出し、機械を停止させるのである。中国に訪れた要人が中国の空気は悪いと思わせない様にするためなのか理由は定かではない。ただ、空気の良い日に調べてみると国際的な行事があったりするのだ。
政府は保身に躍起なのかもしれない。
環境汚染が人体に及ぼす影響について
友人に中国に長年住んでいて日本で身体検査をした人がいた。
彼女は非喫煙者なのだが、彼女の肺の養子を見た医者から「喫煙されてますね?」と言われたそうだ。空気汚染はすぐには体に現れないが、少しづつ体を蝕むのである。
中国における三大疾患の一つは癌だであり気管支系の癌が上位を占めている。
生活習慣に加えて、大気・飲料水・土壌の汚染など環境汚染も大きな影響を与えているとみられる。しかも恐ろしいのが中国人達は汚染された空気に慣れてしまっている。田舎だったせいか、当時マスクをしている人は「汚染対策」ではなく「寒さ対策」だった。
私達からすると、外出したくない、空気を吸うのを我慢したくなるレベルでも、特に気にならないのである。
食品の汚染
食品の汚染も深刻である。成長栄養剤を使って栽培した野菜・果物が恐ろしいくらい大きいのだ。
冬瓜はアザラシくらいあるし茄子は人の腕くらいの太さほどあり、とにかく大きく育ててお金を儲けたいのである。
果物に関してはまだ熟していないものを、成長栄養剤を注入し熟させる。
一度季節外れにスーパーでスイカを買ったことがある。
切ってみると、中は確かに赤い…だが、すごく青い味、まだ熟していない瓜の味だった。つまりは無理矢理成長させたのである。
私は野菜を選ぶ時、形の悪いものをわざと選ぶ様にしていた。それでも家に帰って農薬除去の薬に漬けると液体は黄色く変色した。農薬がたくさん使われている証拠だ。
中国人はとにかく見た目重視であり美味しくなくても見栄えがいいものを選ぶ。赤くするものは着色料を使ってとにかく赤く、白くするものは漂白剤を使ってとことん白くする。加工食品の臭いも強烈である。例えばソーセージだが自分の周りでソーセージを食べている人がいるとすぐ分かるほど臭いが強い。
中国では環境汚染と食品汚染について多くの問題がある。どちらも簡単に解決できるものではないが、未来の子供達のためにもやはり改善しなければならない。
環境保護が叫ばれている昨今、中国での環境問題も少しづつ改善していって欲しいと願うばかりである。
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