中華民国(台湾) 国立故宮博物院
国立故宮博物院とは、台北市にある博物館であり台湾の国立博物館のうち最大のものである。
2011年5月の時点で収蔵品は68万点にのぼる(その内、清朝が残した文物は全体の90%を占める)
収蔵品は戦火を逃れるため、幾度となく引っ越しを繰り返して今に至っている。
第二次世界大戦後、所蔵品は重慶を経て南京・北平に戻されたが、中華民国政府の形勢が不利になったため、1948年の秋より中華民国政府は国立北平故宮博物館から第一級の所蔵品を精選し、第一弾として772箱の文物が、1949年1月には第二弾として3502箱の文物が、同月に第3陣として1251箱の文物が台湾に運び出された。
したがって国立北平故宮博物館の所蔵品は、中華人民共和国北京市と台湾台北市の二ヶ所に分かれて展示されている。
現在では台湾の国立故宮博物院は、国を挙げて展示スペースの拡充と倉庫の建設及び研究や出版・国際交流活動等ハードとソフト両面に力を注ぎ、その収蔵品の価値の高さも相俟ってルーブル・エルミタージュと並び、世界四大博物館の一つに挙げられる。
この博物館は、1960年代から1970年代に中華人民共和国で起きた文化大革命における文化財の組織破壊から、貴重な歴史的遺産を保護するという重要な役割を担った。
つまり中華人民共和国の貴重な宝物は、おおよそがここ台湾の故宮博物館に収蔵されているのである。
翡翠白菜 (すいぎょくはくさい)
翠玉白菜(すいぎょくはくさい)は、故宮博物院の三代至宝の一つである。
翠玉を虫がとまった白菜の形に彫刻した高さ19cmの美術品で、手のひらより少し大きいくらいの大きさである。
一見その小ささに驚くが、それと同時にその美しさに目を奪われる。
原石は半分が白、半分が緑のヒスイ輝石で、原産地は雲南からミャンマーだと推測される。
原石には空洞など欠陥箇所もあるが、この彫刻ではそれが白菜の茎や葉の形にうまく活かされている。上部の緑色で白菜の色を再現しているが、これは人口着色ではなく、石に元からついていた色を生かしたものである。
このように原石の色をそのまま使用した工芸品は清朝中期以降に流行した。そのなかでも翠玉白菜は新鮮な葉の息吹まで感じさせる瑞々しい造形や、白と緑の対比や緑の濃淡差によって小品とは思えないほどの深い奥行き感を持ち、類似した作品の中でも最も完成された作品の一つと言える。
翠玉白菜にはバッタとキリギリスが彫刻されている。この虫は鳴くことが得意とされており、清時代の宮廷で宴会の雰囲気を盛り上げるために用いられていた。
白い白菜は純潔の象徴とする説が有力である。そう考えると光緒帝の妃・瑾妃の寝宮から発見されたという史実と整合性が取りやすい。
この翠玉白菜は、1948年に台湾の国立故宮博物院に移されてから外に出ることはなかったが、2014年6月に東京国立博物館で初めて海外出品された。
肉形石(にくがたいし)
肉形石(にくがたいし)は、まるで豚の角煮のようなこれまた天然石をつかった彫刻である。
長さ5.3cm、幅6.6cm、高さ5.7cmの彫刻で、素材は粘土鉱物などを含んだ不透明な六面体の玉髄である。含有物が層状に積み重なったことで生じる縞模様がある。
皮となる面には豚肉の毛穴や粗い肌触りを表現するとともに、染料を留まりやすくするための小さな穴がびっしり開けられている。この皮の面は、醤油が染み込んでテリが出ている様子を表現するために、赤褐色の染料で染められている。
この肉形石はあまりに豚肉にそっくりなために、故宮の文物を点検する人が「豚肉の化石」と目録に記したというエピソードが残っている。
清明上河図(せいめいじょうがず)
清明上河図(せいめいじょうがず)は、中国北宋の都・開封の都城内外の栄えた様子を描いた絵巻である。オリジナルは北京の故宮博物館にある。
北宋末期の画家・張択端の作品とされており、その絵画的な精細描写の価値とともに、当時の市街図や風俗図として極めて資料価値の高いものである。
この清明上河図は日本のいくつかの美術館にも収蔵されている。
国立故宮博物院には、その他にも歴代の中国王朝の皇帝たちが集めてきた中国の美術品を始めとして、8000年前からのコレクションが保管されている。
台湾に行った際には、是非一度足を運んでみてほしい。
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