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マッコウクジラの腸結石(アンバーグリス) を海辺で拾えば一攫千金!

龍涎香(りゅうぜんこう)

マッコウクジラの腸結石(アンバーグリス)

画像 : 良質のアンバーグリス

香料として使われるアンバーグリスは、中国では「龍涎香(りゅうぜんこう)」と呼ばれ、非常に希少価値の高いものである。これを浜辺で見つけた日には、億万長者になれるだろう。

アンバーグリス(Amber gris)は「灰色の琥珀」とも呼ばれる。この石はさまざまな魅力的な香りがすることから、香料として香水にも使用される。

木の香り、土壌の香り、海洋の香り、果物の香り、白檀の香り、嫌味のないアルコールの香り」など、いろいろな例え方がされている。そしてその香りは非常に長持ちする。古代では漢方薬にも使用され、痛み止めや気つけ薬として重宝された。

古代中国においては、黄金に匹敵するほど価値の高いものとされた。

では、このアンバーグリスとは一体なんなのだろうか?

アンバーグリスの製造者

画像 : マッコウクジラ wiki c Gabriel Barathieu

アンバーグリスの製造者はマッコウクジラである。

マッコウクジラは深い灰色をしており、体が筒形である。頭が大きく発達しており、体の三分の一を占める。オスは大体15から18メートルにまで成長し、40から50トンの重さになる。メスは大体9から12メートル、20から30トンの大きさになる。

下顎には18から26の歯が生えており、上顎に歯はない。彼らは背びれを持たず、背中にはつながった一つなぎの突起があるだけだ。その尾鰭は非常に大きい。
彼らは、頭部の左端の気口から塩を吹くが、その高さは2.4メートルほどで、やや左斜め寄りに吹き上げることが特徴となっている。

マッコウクジラは1000メートルの深さまで潜ることが可能で、1時間ほど潜っていられる。
呼吸しに水面に出て、潜るときには大きな尾鰭を水面から上げて、勢いよくまた潜っていく。

古代においてマッコウクジラの商業価値は非常に高かった。その肉は非常に美味なうえに、皮はとてもしっかりとしており、加工して使用された。

そしてマッコウクジラの油(脳の油も使用された)もとても良質なため、貴重とされた。

マッコウクジラが製造するアンバーグリスは、簡単にいうと「腸結石」である。

その貴重なアンバーグリスが生成される原因は、彼らの食生活にある。

ダイオウイカがアンバーグリスの原料?

マッコウクジラの腸結石(アンバーグリス)

ダイオウイカの捕食(アメリカ自然史博物館) wiki c Mike Goren

日本のNHKが撮影に成功したとして話題になったダイオウイカは、マッコウクジラの大好物である。マッコウクジラは深海で長く潜っていられることから、ダイオウイカやタコを好んで食べる。

そしてイカやタコの骨なども分解消化する機能も持ち合わせている。胃に溜まった骨などの硬い部分は少しの間、胃の中に残るが、一定の期間が経つと外へ排出されるようになっている。

しかし、その残骸が稀に腸に流れ込むことがある。腸の中に入った残骸は結石を生成する。そうなると腸は詰まってしまう。マッコウクジラの腸道は比較的狭いため、詰まりやすいという。

腸道は少しずつ結石を押し出すように動く。その際に腸の中の細菌や酵素の一種が結石と結合して、龍涎香が形成されるのだ。

この結石はマッコウクジラにとって決して良いものではない。一度できてしまうと自分で排泄することが困難なため、最悪な場合その個体は死に至るという。

もし結石が小さければ、腸の中で粉砕され、マッコウクジラの大便として大海へ放たれることとなる。

黄金と同じほど価値のあるマッコウクジラの結石が人の手に渡ることは、非常に稀であることがわかる。ましてや、捕鯨の禁止された現代においてはなおさらであろう。

見つけたあなたは億万長者

画像 : 台湾本土で見つかった最初のアンバーグリス 発見者と鑑定書

浜辺で幸運にもアンバーグリスを見つけた場合、それが本物かどうか鑑定してもらう必要がある。そして一つ一つに鑑定書がつく。

アンバーグリスは歴史の産物(例えば遺跡や化石、文献など)ではなく、自然が作り出したものなので発見者のものとなる。拾った者が確実にその権利を手に入れられるのだ。

その価格は時価になり、質によってランク分けされるので、一概にいくらとは言い切れない。
2022年のある例では、1キログラムで日本円でおよそ700万円の価値がついたという。

筆者が住む台湾では、近年本土や離島で発見例が報告されている。
筆者も近々探してみようと思う。

 

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草の実堂編集部

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草の実学習塾、滝田吉一先生の弟子。
編集、校正、ライティングでは古代中国史専門。『史記』『戦国策』『正史三国志』『漢書』『資治通鑑』など古代中国の史料をもとに史実に沿った記事を執筆。

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