国際情勢

【トランプと習近平のディール外交】米国の台湾非介入は日本にとって悪魔のシナリオ

トランプ米大統領が再びホワイトハウスに返り咲き、その予測不能な「ディール外交」が世界を揺さぶっている。

※ディール外交とは、国家間の交渉において互いの利益を最大化する取引(ディール)を重視する外交手法のこと。

特に注目すべきは、彼が中国の習近平国家主席と交渉のテーブルに着き、中国による対米投資の拡大と引き換えに、米国が台湾問題への介入を控えるという取引だ。

このシナリオが現実となれば、日本にとって最悪の悪夢が訪れる。

日本は安全保障も経済も壊滅的な打撃を受け、アジアにおける孤立を余儀なくされるのだ。

トランプの性格を熟知する習近平

画像 : 習近平国家首席 public domain

まず、この「ディール」の核心を見てみよう。

トランプは選挙戦中、中国製品に最大60%の関税を課すと豪語していたが、ビジネスマンとしての本質は取引にある。
彼が習近平と握手を交わし、中国からの巨額投資を引き出す代わりに、台湾への軍事的・政治的支援を後退させる可能性は十分にある。

中国は既に米国の経済的圧力に耐えかねており、不動産危機や消費低迷で苦しむ国内経済を立て直すため、対米関係の安定化を模索している。トランプが「アメリカ・ファースト」を掲げ、中国マネーを受け入れるなら、台湾という「厄介な問題」を棚上げにするのは、彼らしい現実的な選択だ。

しかし、この取引は日本にとって致命的な危機を招く。米国が台湾への関与を弱めれば、中国は台湾海峡での軍事行動を加速させるだろう。

習近平は「台湾統一」を国家的使命とし、既に軍事演習を繰り返している。米国が非介入を決めれば、中国は躊躇なく武力行使に踏み切り、台湾を掌握する可能性が高い。そうなれば、日本のシーレーンは中国の支配下に置かれ、エネルギーや物資の輸入が危機に瀕する。
日本は経済的生命線を失い、深刻な供給不足に直面するのだ。

さらに恐ろしいのは、安全保障の崩壊である。

米国の台湾非介入は、日米安保条約の信頼性を根底から揺るがす。
日本は米国を頼りに中国の軍事的脅威に対抗してきたが、トランプが「ディール」を優先すれば、日本は見捨てられたも同然だ。
中国は尖閣諸島への圧力を強め、沖縄や九州への軍事的挑発をエスカレートさせるだろう。
日本単独では対抗できず、領土と主権を脅かされるリスクが急上昇する。米国が「日本も守る義務はない」と言い出しかねない状況は、まさに悪魔のシナリオである。

経済面でも打撃は避けられない。

中国が対米投資を増やせば、日米間の経済関係が相対的に弱まり、日本の対米輸出や投資が冷え込む。中国は米市場での影響力を拡大し、日本企業は競争力を失う。特に自動車や電子機器産業は、中国の安価な製品に押され、市場シェアを奪われるだろう。

トランプが中国との取引に夢中になる一方、日本は置き去りにされ、経済的孤立が現実となるのだ。

トランプ流の「対中ディール」は日本を崩壊させる

画像 : トランプ大統領 public domain

このシナリオが日本にとって最悪な理由は、対応策が極めて限られる点にある。

米国が台湾を見限れば、日本は独自の軍事力強化を迫られるが、時間も資金も不足している。核武装や軍拡を急げば国内世論は混乱し、中国との緊張はさらに高まる。かといって中国にすり寄れば、経済的従属が深まり、主権を失う危険がある。
日本は八方塞がりとなり、どの道を選んでも地獄が待っている。

トランプと習近平の握手は、日本にとって悪魔の契約だ。米国が台湾を切り捨て、中国がアジアを支配する未来は、遠い空想ではない。
今、目を覚まさなければ、日本は取り返しのつかない奈落に突き落とされる。トランプの予測不能な一手が、日本の運命を握っているのだ。

文 / エックスレバン 校正 / 草の実堂編集部

アバター画像

エックスレバン

投稿者の記事一覧

国際社会の現在や歴史について研究し、現地に赴くなどして政治や経済、文化などを調査する。

✅ 草の実堂の記事がデジタルボイスで聴けるようになりました!(随時更新中)

Youtube で聴く
Spotify で聴く
Amazon music で聴く
Audible で聴く

コメント

    • なるほど
    • 2025年 3月 14日 11:28pm

    アメリカは日本を見捨てない。日本を見捨てれば東アジアは中国のものになり、欧州も離れ、南アメリカも離れているのでアメリカは一人ぼっちになる。だれもアメリカを信用しなくなる。トランプ大統領はアメリカで最低の大統領として歴史に残ることになる。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事

  1. 台湾の十分(シーフェン)について調べてみた 「願いと希望が詰まっ…
  2. 中国の『債務帝国主義』とは「低中所得国を巨額融資で支配する?」
  3. 世界各地で見つかった謎の落書き『キルロイ参上』の正体とは?
  4. 客家人の神豚祭りとは 「無理やり餌を食べさせ、一番重い豚を育てれ…
  5. 【犠牲者436人超】史上最恐の人喰いトラ vs 伝説のハンター「…
  6. 近年の中国における改正「反スパイ法」 ~今後の日本への影響は?
  7. ウクライナ戦争によって「第3次世界大戦」の火種が再び欧州に忍び寄…
  8. 『北海道は侵略される寸前だった?』中止されたソ連の北海道侵攻計画…

カテゴリー

新着記事

おすすめ記事

誕生日石&花【3月11日~20日】

他の日はこちらから 誕生日石&花【365日】誕生日石のご購入なら品数が豊富なパワーストーン専…

「商業高校生必見」 全商検定3冠を効率的に目指す方法 〜おすすめ検定3つ

突然ですが、商業高校に通う高校生のみなさん、先生方にこんなこと言われた経験ありませんか?…

【中国調査船が奄美沖のEEZ内で活動】先月下旬から6回目 ~その狙いとは?

海上保安庁の発表によれば、中国の海洋調査船が先月下旬から、鹿児島県奄美大島沖の日本の排他的経…

「集団で行う恐怖」群衆心理の危険性

赤信号、みんなで渡れば怖くない…この言葉を聞いたことはないだろうか。もちろん、一人で…

前漢の皇帝が酔って侍女と過ごした「一夜の過ち」が、漢王朝を200年延命させる

一夜の過ちが歴史を変えた前漢の皇帝が、酒に酔った勢いで侍女と過ごした一夜。この出来事が、…

アーカイブ

人気記事(日間)

人気記事(週間)

人気記事(月間)

人気記事(全期間)

PAGE TOP