不思議

「思い込み 」について調べてみた【ミスディレクション】

ミスディレクションという言葉をご存知だろうか?

誤った指導、誤解に導く説明などの訳があるが、転じてマジシャンなどが観客の注意を引いてトリックが見えないようにする技術のことでもある。

つまりは観客を思い込ませるテクニックだ。

思い込みとはなにか?思い込みでなにができるのか?今回は思い込みについて調べてみた。

ハリー・フーディーニ

ハリー・フーディーニ(Harry Houdini)はオーストリア=ハンガリー国出身のユダヤ人で、アメリカで活躍した奇術師である。20世紀前半に圧倒的な人気を誇ったマジシャンだった。

思い込み
※ハリー・フーディーニ(1899年の宣伝写真)

手足を拘束した状態での「脱出術」を得意として、時には刑務所の独房から抜け出す技を宣伝につかうなど、それまでのマジックの常識を変えた人物である。さらには鎖で縛られた上に箱詰めにされて重りをつけたまま川に捨てられるという状況からの脱出を見せた。
自身と助手を瞬時に入れ替わらせるマジックなども発明し、よりスピーディーな演出を完成させる。
死後90年以上経った今でもアメリカの代表的な奇術師として名を残す人物なのだ。

そのフーディーニが注目したのがミスディレクションである。

仕掛けのない手品はない。彼のショーにも当然仕掛けがあり、その仕掛けから観客の注意を反らすために、箱に入る際には中に仕掛けがないことを観客に確認させている。これにより観客は仕掛けがないと思い込み、見事脱出したフーディーニに驚き、喜んだのだ。

フーディーニとミスディレクションについては、映画「ソードフィッシュ」でもジョン・トラボルタが語るシーンが印象的に使われている。

日常的な 思い込み

日常的に自分たちが思い込みを経験するのはネガティブな場合が多い。

ミスやトラブルにより「なぜ自分が」「やっぱり自分は」といった自責の思い込みである。そのこと自体は誰にでもあることで悪いことではない。
しかし、それが慢性的になるとうつ病などの精神疾患を招く恐れがあるから危険なのだ。勿論、現在進行形で精神疾患を患っている人はさらに悪化してしまうだろう。

何より悪い方向に思い込んでしまうことも症状のひとつだから大変である。

そうした思い込みが、さらなる思い込みを生み出すこともある。
『午前中にミスをしたため悩んでいたら午後もミスをしてしまった。やっぱり自分はダメな人間なんだ』というように「思い込みの深み」にはまってしまうのだ。

筆者の経験上、思い込みの深みにはまったときは、極端に視野が狭くなってしまう。他のことに気を配る余裕がなくなり、それがさらなるミスを招いてしまった。
読者の方にも経験があるかもしれないが、後で思い返して「なぜあんな単純なことにあんなに悩んだんだろう」という経験が何度もある。
つまり、ネガティブな思い込みをしてしまうのは人間として当然のことなのだ。

思い込みの違い

さて、ここまで思い込みの例を二つ挙げてみた。最初は驚きや笑いを生み出すプラスの思い込み。もうひとつは自分で自分を縛ってしまうマイナスの思い込みである。

このように同じ思い込みなのに、なぜ違いがあるのだろうか?

何が言いたいのかというと「同じ思い込みならマイナスもプラスに変えられるのではないか?」ということだ。

フーディーニのケースでは彼によって観客は「思い込まされた」ように思えるが、実際に思い込んでしまったのは観客自身である。同じようにマイナスの思い込みも誰に言われたわけでもなく、自分で思い込んでしまったものだ。

つまり、思い込みとは人間に対してそれだけ強い影響力がある。

そして、その力は人間である以上、誰にでも作用する。ということは、自分自身に対して思い込みを掛けることによって多少なりともマイナスをプラスに転換できるはずである。勿論、そんな簡単な話ではないことは分かっている。分かっているが、理論上は可能だということだ。

思い込みという現象そのものには、プラスもマイナスもないのである。

思い込みに気付かせる医療

いま、志村 祥瑚(しむらしょうご)という人物がひそかに注目されている。
慶應義塾大学で精神医学を学びながら、マジシャン、パフォーマーとして活動している人物だ。
思い込みや錯覚の面白さをマジックを通して解説し、思い込みのメカニズムをわかりやすく伝える公演などを行っている。同時に「思い込みを変える」という新しい心理療法・メンタルトレーニングの開発も行う。

彼の面白いところは、マジックの仕掛けを観客に見せるところだ。
例えば、観客のなかから一人を選びステージに上がってもらう。そこでその人に対してマジックを行うのだが、他の観客からは仕掛けが丸見えになっているのだ。そして、ステージに上がった人はそのことを知らずにマジックに驚かされてしまう。しかも、その仕掛けは単純なものばかりである。

そのようにして「先入観の怖さ」や「単純に思い込んでしまう」ということを実践して教えてくれる。
科学的な側面からも、思い込みに対するアプローチが行われているという例である。逆に言えば、思い込みには科学的な根拠もあり、理解や制御ができないものではないというわけだ。

彼の言葉で印象的なものをひとつ紹介しておこう。

『世界はシンプルであり、人生もまたシンプルである。もし複雑に映っているのなら、世界が複雑なのではなく、あなたが世界を複雑なものにしている』

思い込みを変える

色々と書いてきたが、では具体的にどうすればいいのかという肝心な答えは見付かっていない。ネットで調べたり、本で調べてもありきたりなことが書いてあるばかりだ。
まあ、そもそもそんな簡単に見付かるようなら多くの人が悩むことではないのだが。

そこで、調べた中で役に立ちそうな知識と筆者の経験を元に、自分をプラスに思い込ませる方法を考えてみた。

まず「なぜ自分が」「やっぱり自分は」といったマイナスの思い込みを消すことはできない。しかし、その気持ちは自分だけではないことを覚えていて欲しい。それは誰もが経験するものであり、自分には見えない相手の心の中で抱える感情なのだ。「自分だけ」という思い込みは抑えたほうがいい。

その上で具体的な話をするが、一番簡単なのは自分で自分にポジティブな思い込みをさせることだ。

服のコーディネートを変えてみる。髪型を変えてみる。出来れば、思い切りイメージチェンジしてみたほうがいい。自分自身がより「こうなりたい」と考えることを実行してみる。

新しい服を着たり、髪型を変えて街を歩いたときにネガティブな思いを抱く人間はいない。むしろ、ちょっとした喜びを感じるだろう。
あなた自身の中身は変わっていないのに、外見や服を変えるだけで嬉しくなるのも「プラスの思い込み」だ。そのことに気付いてもらったり、褒めてもらえればさらに思い込みは強く作用する。
外見を変えることで、周囲からの評価が良くなったと思うようになる。そんなふうに自分に小さな自信を持つことだ。

「入りたかったけどお洒落すぎて自分には似合わない」と思っていたお店に入ってみる。新しい世界を知ることや、自分には似合わないという考えが間違っていたこともちょっとした自信につながるだろう。

自信は余裕につながり、余裕はマイナスの思い込みを緩和する。

シンプルに「格好良く見られたい」「綺麗に見られたい」という願望を実現させるための努力をすればいいのだ。それが今の時点で出せる小さな答えである。

最後に

長くなってしまったが、この記事のなかで少しでも読者の方に役立つ話があったのなら嬉しいことである。
ミスディレクションは自分で制御できる」ということだけでも覚えておいてほしい。気分が落ち込んでいるその瞬間には使えなくても、きっと役立つときが来ると信じている。

筆者もそう自分で思い込んでいるのだ。

 

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gunny(ガニー)です。こちらでは主に歴史、軍事などについて調べています。その他、アニメ・ホビー・サブカルなど趣味だけなら幅広く活動中です。フリーでライティングを行っていますのでよろしくお願いします。
Twitter→@gunny_2017

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