思想、哲学、心理学

ギリシア神話はあらゆるものの源泉だった

ギリシア神話はあらゆるものの源泉だった
ギリシア神話」というと、神々が支配する世界である。しかしそこには「人間的要素」が大いに満ちあふれている。

神も人間であり、恋愛もすれば結婚もし、喜怒哀楽を決して隠したりしない。とても人間的であり、人との違いは「不死」であるが、人間的要素に満ちている。

そんな部分が現代の私達に「ロマン」を抱かせ「愛」を見つける事もできるのであろう。人を惹きつけてやまない理由の一つだ。

「ギリシア神話」の根源は、とてつもなく広い。現代にも、残っている「ギリシア神話」の欠片を拾いあげてみた。

古代ギリシアの3大悲劇詩人とは?

前5世紀頃、神話を題材とした「物語」が作られる。

芸術活動の中心地でもあった”アテナイ”では、劇場で年に一度の悲劇が上映され、そのほとんどの「テーマ」はおおむね神話上の英雄から選ばれた。

悲劇詩人達は想像力を駆使して「神話・伝説」を脚本し結末を変えたり、創意工夫を凝らしたのである。

アイスキュロス

【主な作品】
「アガメムノン」
「供養する女たち」
「慈しみの女神たち」
オレステイアの3部作と呼ばれ、ミュケナイ王とその子供達による仇討ちの物語。

ソポクレス

【主な作品】
「オイディプス王」
「アンティゴネ」
彼は政治家としても活躍。「オイディプス王」はギリシア悲劇の最高傑作と言われる。

エウリビデス

【主な作品】
「バッカイ」
「メデイア」
「ヒッポリュトス」
悲劇作家の革新者。男性優位の世界で生きる女性達の苦悩・悲劇なども表現している。

ルネッサンスで花開く「ギリシア神話」

ギリシア神話が再び注目されたのは「ルネッサンス運動」からで、その後世界中に広まっていく。

16世紀前半にオウィディウスの「変身物語」の英訳本が出版されたのを機に、日本では20世紀初頭に「ギリシア神話」の翻訳本が出版される。

以後、様々な翻訳本が出版され「ギリシア神話」が広く知られる様になるのである。

夏の夜の夢

シェイクスピア(1564年~1616年)
アテナイの英雄テセウスとヒュッポリテの結婚式を祝う場面で幕が上がる喜劇作品。

失楽園

ジョン・ミルトン(1608年~1674年)
イギリス文学を代表する長編叙事詩だが、随所にギリシア神話のエピソードや登場人物を使った例えなどが登場する。

美女と野獣

ジェイムス・ジョイス(1882年~1941年)
ディズニー映画でおなじみ。原型は「エロスとプシュケ」

獅子

三島由紀夫(1925年~1970年)
エウリピデスの悲劇「メデイア」を下書きに舞台を終戦直後の日本に置き換えた

肉体美を追求したギリシア芸術


古代ギリシアの芸術作品の特徴は、神々を人間と同じ姿形で表現した事である。

その当時エジプトやメポソタミアなどの地域では、神々は人間とは違う「異形の存在」で怪物と人間をミックスした形で表現するのが一般的だった。

そんな中、ギリシア神話の神々は「喜怒哀楽」の激しい人間的な特徴を持っていたため、芸術における表現方法も、おのずと人間と同じ「姿形」となっていったのである。

神は人間とは違う「絶対的な存在」。その「肉体」は人間を超えた「完璧な姿」でなくてはならない。

古代ギリシアの彫刻家たちが「裸体の造形美」を探求し、理想の人体表現が完成していったのである。

ギリシア神話・言葉のあれこれ

神々 ラテン語名 英語名
ゼウス ユピテル ジュピター
ヘラ ユノ ジュノー
ポセイドン ネプトゥヌス ネプチューン
ハデス プルト プルートー
アプロディテ ウェヌス ヴィーナス
アレス マルス マーズ
へパイトス ウルカヌス ヴァルカン
アポロン アポロ アポロ
アルテミス ディアナ ダイアナ

【ギリシア神話が由来の言葉】

ヴィクトリー(勝利) 勝利の女神ニケの「ラテン語」ウィクトリアから。
エコー(音響・こだま) 美少年ナルキッソスに恋したニンフのエコから。
オリンピック 大神ゼウスの神域だったオリュンピアで、ゼウスの為に行われた競技会から。
ジューン(6月) 結婚の女神ヘラのローマ名「ユノ」junoから。ジューン・ブライドは「結婚の女神ヘラ」に由来していると言われている。
タイタニック号 オリュンポス神族と戦った、巨大な身体を持つ「ティタン神族」の英語読みから。
マーチ(3月) 軍神アレスの英語読みから。

【ギリシア神話が由来の商品名・ロゴ】

名称 由来
ネクター 森永製菓・不二家の飲料 神々が飲む「不死」の飲み物=ネクタルから。
オデッセイ ホンダの自動車 トロイア戦争後のホメロスの叙事詩「オデリュセイア」から。
イオス(キャノンの一眼レフカメラ) 曙の女神エオスにちなみ、新世代カメラの「夜明け」という意味を持つ
ガイア トヨタの自動車 大地を意味し、大神ゼウスの祖母にあたるガイアから。

普段何気なく使っている単語・地名・商品名に至るまで「ギリシア神話」は身近に、溢れている。他にも色々あるが、代表的なものだけでもこれだけあるのである。

生活に密着しているギリシア神話

神々が支配する世界ではあるが「ギリシア神話」は人間的要素に満ちている。

神であっても恋に悩み、運命に翻弄され「喜怒哀楽」を欠かさない・・そんなところが私達を魅了するのである。

空を見上げれば「星座」にギリシア神話があり、生活の中にもギリシア神話。これだけ人間の生活に密着している神々は、ギリシア神話ならではだと思う。

関連記事 :
ギリシアの大神ゼウスは好色で浮気三昧だった
ヘラクレスはなぜあれほど強かったのか?【ギリシアの英雄】
女神アテナについて調べてみた【ギリシア神話】
太陽神アポロンについて調べてみた【ギリシア神話】

アバター

総一郎

投稿者の記事一覧

細かいデータと、歴史全般が得意。

✅ 草の実堂の記事がデジタルボイスで聴けるようになりました!(随時更新中)

Audible で聴く
Youtube で聴く
Spotify で聴く
Amazon music で聴く

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事

  1. これぞ大自然のお仕置き?理不尽すぎるアイヌの物語「トーロロ ハン…
  2. 日本酒と日本神話について調べてみた【ヤマタノオロチを酔わせた八塩…
  3. 戦争が生み出した異形の存在?~兵士たちが目撃した怪異伝承
  4. 出会ったら確実に死ぬ、致死率100%の妖怪伝承
  5. 【古代から語り継がれる火の鳥伝説】フェニックス、波山、ヒザマの伝…
  6. 【北極圏の怪物たち】イヌイット伝承に登場する異形の存在
  7. 【神として崇められたニホンオオカミ】大口真神とは ~絶滅した山の…
  8. ギリシア全知全能の神「ゼウス」は好色で浮気しまくりだった

カテゴリー

新着記事

おすすめ記事

「ボケ老人のフリして政敵を粛清」 司馬懿による血塗られたクーデター 高平陵の変

魏王朝の政変もはや魏においては不可欠の存在となった司馬懿(しばい)は魏帝・曹叡(そうえい)が逝去…

【Kindle Comic Creator】漫画の電子書籍化をスムーズにさせる為に読んでおくべき注意点(エラーと解決策)

とりあえずここではKindle Comic Creatorの基本的な使い方ではなく行き詰まりやすい点…

日本の奇妙な迷信とその由来 「北枕、夜に爪を切る、彼岸花を摘む」

迷信とは迷信とは、人々に知られていることのうちで合理的な根拠を欠いているものを指す。一般…

闇淤加美神(くらおかみのかみ)について調べてみた【貴船神社】

闇淤加美神(くらおかみのかみ)とは、日本神話の中に登場する神々の1人である。私たちの…

鉄甲船を率いて毛利水軍を破った武将・九鬼嘉隆

海賊大名の異名九鬼嘉隆(くきよしたか)は、戦国時代から安土桃山時代に織田信長・豊臣秀吉に…

アーカイブ

PAGE TOP