神奈川県西部にある小田原市。
その東に「曽我の梅林」があり、「小田原梅まつり」が開催されているので行ってきた。
正式には「別所梅林」というが、曽我地区全体広がり、梅の種類も色々とある。残念なことに、当日は雲が広がり薄く日差しが顔を見せる程度だったが、一足早い春の訪れを楽しめた。
八分咲きでも見頃
都内からは車で1時間30分だが、会場内にある駐車場は入り組んでいて、平日でも混雑するので、少し離れた場所に車を置いて徒歩で会場に向かう。会場もその周辺も、梅の木がところどころに見られ、八分咲きの梅の並木を歩きながら、メイン会場へ到着した。
途中、用水路の脇を歩いていると風に運ばれてきた梅の香りに包まれて、とても気持ちがいい。
梅の畑は私有地だが、開催期間中は自由に入ることができて、レジャーシートを敷いてくつろぐ姿があちこちで見られる。持ち込みも自由だが、売店で食事や飲み物も売っているので、手ぶらで来て昼間から梅を肴に一杯やっている人も見かけた。こちらは車なので残念ながらお預けだが、さぞ美味い酒だろう。
【※平日は屋台もたたまれているが、週末には観光客でごった返す】
曾我兄弟の仇討ち
この曽我地区には、赤穂浪士の討ち入りなどと並ぶ「日本三大仇討ち」のひとつ、「曾我(そが)兄弟の仇討ち」で知られる曾我祐成(そがすけなり)と曾我時致(そがときむね)の墓があるという。鎌倉時代、所領争いに巻き込まれ、父を失った兄弟が、大人になって源頼朝の家臣である工藤祐経(くどうすけつね)を富士の裾野で討ち果たしたというものだ。
二人の墓は、仇討ちを決行した静岡を始め、各地に残っているが、この曽我の地が有力だという。父を失った兄弟は母の再婚とともに、この地を治める曾我祐信(そがすけのぶ)と再婚しており、兄弟の菩提を弔うように頼朝から命じられた。
歴史的にも有名な地区であるが、今では関東屈指の梅の名所となっているわけだ。
小田原牧場アイス工房
せっかく来たのだからと昼食も食事処で食べようかとも思ったが、ラーメンやうどん、焼き鳥や味噌おでんなど、ここでなくとも食べる機会のあるメニューばかりだったので、梅を愛でながらの食事は諦めた。食事では気を引くものはなかったが、売店では梅干しやみかんなど、小田原土産が並んでいたのでこちらのほうもよく見ると面白い。
そこからは、同行した知人たちの提案で、ある場所に向かう。
これも地元で有名な「小田原牧場アイス工房」というジェラートの店だった。会場の中心から徒歩で10分もかからない。ミルクの他、小田原特産の梅、抹茶、チョコレートやみかんなど豊富な種類があり、肌寒いというのに店頭でジェラートに舌鼓を打つ人たちでいっぱいである。
私は頑なに遠慮をして、知人のジェラートの写真だけを撮らせてもらったが、店の駐車場には県内はもとより、都内、埼玉、千葉などの県外ナンバーの車が並んでいて、梅まつりとジェラートの人気に改めて驚いた。ちなみに味は濃厚で食べる価値あり、とのこと。
小田原アイス工房HP → http://www.pcm777.com/ice/
曽我梅林と小田原の歴史
曽我梅林が有名になったのは、江戸時代、小田原藩主の大久保氏が梅の栽培を推奨したことから始まった。
特産物のない小田原に梅の木を植え、梅干を作る。こうして、蒲鉾とともに領民の暮らしを支えるようになった。ちなみに、戦国時代に相模国を領地としていた北条氏も、梅を兵糧用に植えさせたというが、本格的になったのは江戸時代以降のことだ。
東海道五十三次の小田原宿があることから、梅干は旅人によく売れたといい、天下の険である箱根山を越えるための栄養補給や、食べ物の防腐にも役立った。
また、隣接する千代(ちよ)地区には、東海道が整備される前の平安から鎌倉時代にかけて「千代寺院」という大きな寺院があり、近年の調査でこの地域がかつては行政などの中心だったことが判明している。小田原から箱根の先に向かう旅人は、この地区からJR御殿場線沿いに箱根を迂回するようにして富士の裾野まで歩いたらしい。
小さな幸運
アイス工房を後にして、会場の中心に戻りしばし休憩。会場はこの別所梅林の他、中河原、原の3会場があり、どの梅も農家が管理し、まつりの運営も行っているらしい。ポスターによれば、2018年は2月3日~3月4日まで開催されており、2月には「流鏑馬(やぶさめ)」や「獅子舞」も披露されていた。
用水路の両脇にも種類の違う梅が植えられ、全体で約35,000本もの白梅が早春の香りで出迎えてくれる。紅梅が植えられたのは、割と最近のため梅の多くが白梅だが、そのおかげで紅梅の鮮やかさが一際目立っていた。
【※黄梅(おうばい)】
帰り際、ふと見ると珍しい梅も花を咲かせている。黄色い梅、「黄梅(おうばい)」。
私も初めて見たので帰ってから調べてみたが、ピークは3月らしく、確かに白梅よりも蕾が多かった。そして、花言葉は「期待」「恩恵」ということで、最後に良いもの
を見たことに満足している。
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