中国史

【群馬伊香保に突如できた謎の巨大宗教施設】佛光山 法水寺とは一体何なのか?

私は群馬県民であるが、地元の観光スポットとして有名な水沢観音を超えて車でさらに10分ほど進んたところに、謎の超巨大宗教施設がいつのまにかできていて驚いた。ぱっと見なんだか怪しい雰囲気も感じる。2014年頃に工事が始まり、2018年頃に完成したという。

佛光山 法水寺 (ぶっこうざん ほうすいじ)という台湾系仏教のお寺らしく、他の旅行系サイトで既に多く紹介されているのだが、観光紹介的な薄めの記事ばかりなので、ここでは突然現れた謎の超巨大宗教施設、佛光山法水寺とは一体何なのか?を、現地レポ含めて詳しく掘り下げていこうと思う。

渋川の山に突然できた巨大寺

まずは現地レポから。

水沢うどんを食ってちょっとドライブしようかと道路を走っていると、突如左側にこんな光景が現れた。

佛光山 法水寺

な・・・なんか・・・怪しい・・・・(;´Д`)

渋川市の伊香保の山に、いつのまにこんな謎の巨大施設ができたんだろう?と思った。

怪しい新興宗教か?

佛光山 法水寺

よく見ると看板があり、どうやらお寺のようだ。臨済宗佛光山法水寺と他の看板に書いてあり、台湾系仏教のお寺ということがわかった。だから日本とは一風変わった雰囲気なのだなと。

臨済宗は中国禅宗五家の一つで、唐の臨済義玄(りんざいぎげん)を開祖としている。

無料で入れるようなので興味本位で入ってみた。

佛光山 法水寺

いきなり巨大な像が・・・w あまりに異国風すぎる。どうやらこれは弥勒菩薩らしい。

台湾の仏教はなんていうか色鮮やかですね。

階段を登っていくと、ところどころに上記写真のような小石像がある。境内に25尊あるらしい。

佛光山 法水寺

でーんと観音様。日本のお寺とは何もかも違いすぎる。

佛光山 法水寺

登りきると、またたくさんの像が並んでいる。あととにかく 階段が、横に広い!!

佛光山 法水寺

後ろを振り返ってみると、赤城山の裾野が広大に見える絶景!!

渋川市の山って、地形的に赤城山や前橋市、高崎市などが見渡せるような土地なのだ。そういった意味では寺院としてはとても良い場所を選んだのではないかと思う。

天空の寺院と言っても過言ではない。とにかく景色が素晴らしい。

佛光山 法水寺

そしてバカでかい入り口。思っていたよりもかなり豪壮な作りでびっくりした。一体いくらかかってるんだこれ? 群馬の山とはいえ何億じゃきかないだろう・・

インスタ映えなデザイン

佛光山 法水寺

こんな感じで、インスタ映えを狙えるような設計になっている。裏からも表からもインスタ映えしそうな写真が撮れる。

他のお客さんもバチバチ写真を撮っていました。

佛光山 法水寺

慈悲宝殿の千手観音の作者はなんと台湾の元女優!

寺院の中へは左側から入れるのだが、入って2Fに上がっていくと、慈悲宝殿という場所に千手観音像が置いてある。

佛光山 法水寺

これがまた大きな部屋で、ここで集会や儀式的なものもできる作りになっている。

佛光山 法水寺

近くにいた台湾の尼さんが色々と親切に解説してくれて、この千手観音像は敦煌の遺跡の絵画を元に、像として復元したという。

下記写真が敦煌(とんこう)遺跡の絵画。敦煌は昔、映画にもなりましたよね。

佛光山 法水寺

この敦煌遺跡の絵を元に、なんと楊惠珊という女の人が千手観音像を作ったそうです。

しかもこの方はなんと元女優で、いくつもの最優秀女優賞を取るほど台湾では有名な女優さんとのこと。多才すぎる!

上の写真で指している張毅さんは、旦那さんだそうです。

この千手観音を寄進した方々の名前が並んでいます。

なんでも、作者の楊惠珊さんは自らこの場所に訪れて、この千手観音像の最終仕上げをしたとのこと。

本殿がさらにでかい!

中央の本殿、大雄宝殿がこれがまたすごいスケール。

玉仏像が中央に設置してあり、写真だと伝わりにくいかもしれないが、とにかく部屋が高くて広い。

千人以上は余裕で入るのではないだろうか?

こちらの写真だと部屋の大きさが少しは伝わるかと思う。

さらに横の壁は天井まで、薬師如来や阿弥陀如来がびっしり刻印されている。

入り口には、三国志の関羽像と韋駄天像が設置されている。日本のお寺とはやはり全然違いますね。

とにかく全体的に色合いが華やかです。

無料の禅体験も

前述したとおり、臨済宗なので禅がある。予約して無料で禅の体験ができる。

あまりに異国風なので怪しい感じもあったが、中に入ってみると尼さんたちはみな親切で、勧誘も一切なくお金を取られることも一切なかった

日本のお寺同様、オープンな公共施設といった感じであった。

台湾食も楽しめる

出口付近に、台湾食が楽しめる喫茶店みたいなものもある。料金もそんなに高くない。

ただしメインの食事ではなく、軽食といった感じである。写真にあるバーワンというのを食べてみたが美味しかった。

喫茶店もかなり眺めが良く、気持ち良く景色を楽しみながら食べれる。

少し長くなったが現地レポの感想としては、全体の雰囲気も良く景色もキレイで、尼さんも親切で、無料でここまで楽しめるのだから、観光スポットとしてはかなりオススメできる。というのが正直な感想だ。

何人かの尼さんとも長く話したが日本の文化や宗教にもとても詳しく「日本人は外国人と比べると無宗教な人が多いが、逆に言えば八百万の神的になんでも受け入れ、基本は神道ベース」ということも良く知っていた。

また「諸行無常」についても話していたので、やっぱりちゃんと仏教の人たちだなと思った。

佛光山とはどんな宗教なのか?星雲大師とは?

ここまでレポが長くなったが、いよいよ本題。この宗教、「佛光山」と創設者の「星雲大師」について触れていこうと思う。

星雲大師こと、李国深氏は1927年に江蘇省揚州に生まれ、12歳の時に白塔山大覚寺で志開上人を師として出家。後に臨済宗第48代の首座となり、1949年に台湾に渡り、念仏会、弘法団を組織。1967年に佛光山を創建。

その後、海外に200以上の寺院、道場を設立、1985年佛光山の住持を退き、中華漢蔵文化協会理事長に就任。1991年、中華佛光協会を設立。翌年アメリカ、ロサンゼルスにて国際佛光会を発足。会長に就任。1998年、佛光テレビ局を設立。2000年、新聞「人間福報」を創刊。

僧侶養成のため五大州で16の仏教寺院を設立。教育による社会貢献としてアメリカの西来大学、台湾の南華大学、佛光大学、オーストラリアの南天大学、フィリピンンの光明芸術大学をはじめ、大学や高校、小中学校、幼稚園などを設立している。

少し説明を足したが、上記のようにパンフレットに記載されている。

日本ではほとんど知られていないが、「佛光山」は思ったよりもずっと大きな宗教団体で、台湾ではトップクラス。

星雲大師」も中国と台湾に通じたかなりの大物のようである。

これだけ豪壮な施設を日本にも作ってしまうのだから、ものすごい資金力である。とても寄付だけでまかなえるとは思えない。

佛光山は日本にも既に、東京、山梨、大坂などに複数の寺院や道場があるそうだが、この2018年に完成した群馬県渋川市伊香保の佛光山法水寺は、日本の本山として設立されたようである。都内の寺院だと建物が大きくないのでどうしても人数が限られてしまう。

そこで千人単位で集まれるように東京に近い拠点を探していて、群馬県渋川市伊香保が選ばれたとのこと。これは中の人に直接聞いた話である。逆に言えば良い土地を中々売ってもらえず、伊香保の山の誰も買わないような土地をようやくあてがわれたとも言える。

地元民的にも確かに決して良い場所とは言えない。山を登った水沢観音のさらに上であるからだ。しかし結果的には見晴らしが良く、観光スポット的には良い場所となったと言える。寺院だからこそ成り立つと言えるだろう。

星雲大師は蒋介石と一緒に台湾にやってきた

蒋介石 wiki(c)中華民國總統府

1949年に中国から台湾に渡ったとパンフレットに書いてあるが、1949年といえば蒋介石毛沢東の中国共産党軍に敗れ、台湾に逃れてきた年である。つまり星雲大師は蒋介石の中国国民党軍と共に台湾に渡った外省人なのである。

台湾といえば親日なイメージであるが、親日の多くは以前から台湾に住んでいる本省人であり、外省人は反日的思想が強い。

残念ながら星雲大師も外省人的思想であり、中国共産党や台湾の国民党のトップとも親密であり、宗教だけでなく政治的な影響力も極めて高く、台湾では「政治和尚」と呼ばれているという。

以前の台湾の首相、馬英九はあまり頭を下げないタイプだったらしいが、星雲大師には頭を下げるレベルである。

あの習近平とその奥さんも星雲大師の本の愛読者ということである。

星雲大師は反日思想?

星雲大師の反日的行動や発言としては、「父が南京で殺された」と発言し、南京大虐殺の絵をアメリカの画家に描かせて南京虐殺記念館に収めたり、「台湾人は広義においては中国人」「台湾に台湾人はいない。いるのは中国人だ」といった発言をしている。

※参考サイト http://taiyou.bandoutadanobu.com/?eid=1235011

他に2011年9月に、中国共産党の要人が当時台湾首相だった馬英九に会いに行った時、星雲大師は

「尖閣諸島は中国人のものであり、中国と台湾は団結し尖閣諸島事件に向き合って、全世界の華人は郷土を愛し国土を守ること。人々にはその責任がある」

と語ったという。

台湾の本省人からすると、星雲大師は国民党軍からの監視役でスパイであり、あまり信用されていないとこちらで語られている。

上記の情報の多くは、元通訳捜査官の坂東忠信さんからの情報であり正確であると思うが、少し昔の情報であることと、実際に佛光山が日本に来たことで何か問題があったかと言えば、日本で全然知られていない現時点ではほぼ影響はないとも言えるし、実際に現地に行っても観光としては良かった。

上層部的にはこうした政治的背景があるが、現地の尼さんはしっかり仏教をやっているし、我々庶民が観光として楽しむには問題はないと思える(伊香保の風情的な問題はあるかもしれないが温泉街からは結構離れている)

今回は佛光山法水寺の情報の一つとして、頭の片隅に入れておいていただければ幸いである。

面白く美しい場所でもあるので、伊香保温泉に行くついでに一度足を運んでみるのも良いと思う。水沢観音と水沢うどんも近いので是非。

 

 

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草の実堂編集部

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コメント

  1. アバター
    • 2020年 10月 13日 5:12am

    凄い!行ってみたい!

    3
    6
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