「日本人ファースト」を掲げて活動する参政党は、2020年の結党以降、一定の支持を集めて急速に存在感を高めてきた新興政治勢力である。
一方で、その主張や言動をめぐっては、メディアや有識者の間で評価が分かれており、「排外主義的」「陰謀論的」といった批判的な言説も少なくない。
それでも近年の世論調査では、既存政党に対する不満の受け皿として注目されつつある。
今回は、こうした参政党への支持と批判の両面を捉える一助として、神奈川県川崎市の川崎駅前で行われた街頭演説の現場を取材し、その雰囲気を報告する。
現場の様子

画像 : 参政党の街頭演説。筆者撮影
当日は、応援弁士1名と、選挙区および比例代表からの候補者2名が登壇し、それぞれ自身の経歴や参政党の基本的な政策について訴えた。
会場には筆者の目視でおよそ120〜150名の聴衆が集まり、これとは別に批判的な立場と見られる10名程度の人々の姿も確認された。
演説の最中には、一部から内容に対するヤジが飛ぶ場面もあり、それに反応した聴衆とのあいだで言い争いが起きることもあった。ただし、全体としては演説者に対して拍手や声援が送られる場面が多く見られた。
このような現場の様子は、参政党の主張に一定の共感が集まっていること、また現政権や既存政党への不満が支持の背景にあることをうかがわせるものであった。
参政党が支持される理由

画像 : 聴衆の様子。筆者撮影
参政党の支持者の声をオンライン・オフライン双方で拾うと、現政権への不満が支持の主な動機として挙げられる傾向が見られた。
特に、外国人支援や移民政策に関して「自国民が不利な扱いを受けているのではないか」との疑念を持つ人々の間で、政策の説明不足や透明性の欠如が批判されている。
また、既存の野党に対しても有効な対抗軸を見出せないという意見が多く、その結果として参政党が「新たな選択肢」として注目されている側面があるようだ。
参政党が批判される理由

画像 : 抗議の声を上げる人たちの姿も散見された。筆者撮影
一方で、参政党の主張やスローガンに対しては、支持だけでなく批判の声も少なくない。
なかでも「日本人ファースト」という標語については、外国人排斥につながるのではないかという懸念が根強く、一部からは排外主義的であるとの指摘もある。
また、過去の一部発言や党関係者の主張において、独裁的あるいは優生思想と受け取られかねない内容が含まれていたとして、社会的弱者の権利軽視につながる可能性が懸念されている。
今回の街頭演説の場でも、こうした立場から参政党に異議を唱える人々の姿が確認され、「みんなファースト」「差別主義者は政治家になるな」といったプラカードを掲げる参加者や、演説中に抗議の声を上げる場面も見られた。
急伸する参政党

画像 : 参政党の街頭演説。筆者撮影
今回の街頭演説の様子を一つの事例として見ると、参政党の主張や姿勢が一定層の有権者から関心や共感を得ていることがうかがえた。
思想や政策に対する評価は分かれているが、参政党は既存政党に代わる選択肢として、幅広い有権者から受け入れられつつあると言えよう。
かつては「自国を守る」「日本を第一に考える」といった言説が、過度なナショナリズムとして批判されやすかった時期もあったが、現在ではそれらの主張が支持を集める土壌が広がってきているようにも見える。
このような政治的潮流は、かつてアメリカで「アメリカ・ファースト」を掲げたトランプ氏が登場し、従来の移民政策やグローバリズムに反発する声を取り込んで躍進した過程と比較されることもある。
ただし、日米の政治制度や社会状況は大きく異なるため、単純な類似として論じるには慎重な姿勢も必要である。
参政党が今後どのように支持を拡大し、政治的な立ち位置を確立していくのかは、今後の日本政治における注目点となるだろう。
終わりに

画像 : 参政党の街頭演説。筆者撮影
参政党の台頭を受けて、一部の保守系政党や与党内でも、自国重視の姿勢を強調する政策や発言が見られるようになってきている。
その影響力を踏まえると、参政党は今回の参議院選挙における「台風の目」といえるだろう。
選挙戦も終盤に差し掛かる中、各政党がそれぞれの政策を提示し、有権者との対話を深めていくことが期待される。
有権者としても、さまざまな情報に触れ、自身の判断で一票を投じることが、政治のあり方を左右する重要な行動となる。
文:撮影 / 草の実堂編集部
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